第6話「藁の家」
稲刈りが終わり冬支度が始まる頃になると、今年作った藁を田んぼで越冬させるため、藁の束を順に積み上げ小さいテント状(モンゴルのパオみたいな形状)のモノが田んぼに立ち並び、僕たちから見ればまるで小さな藁の家である。
いつものメンバー(僕とマサと数名の取り巻き)が田んぼに集まりソフトボールをしていた。
「何だあれ?行ってみっぺ。」
田んぼの中に忽然と現れた面白そうな小さな藁の家を僕たちが見逃すはずも無かった。
小さな藁の家に行くまでの間も、稲の刈り株を踏み潰して歩くという小さな楽しみも忘れない。
楽しいことには貪欲なのだ。
「何だこれ?!わらのうぢ(家)じゃね?」
「うぢ(家)だ。うぢ(家)だ。」
「ながに入ってみっぺ!(中に入ってみよう!)」
大概そんな事を言い出すのはマサだ。
少年たちによる住宅建設(というより破壊工作)が始まった。
といっても、僕とマサは現場監督で実労働は後輩たちである。
面白そうなところだけ手を出そうという魂胆だ。
早速入り口の工事に取り掛かった。
「このわら重でぇー(重たい)」
「何やってんだ!早ぐ取れ!」
厳しい現場監督の指示に、早くも強制労働者たちは音をあげた。
当然だろう。大きめに結わえられた藁は雪の重さで潰れないように中心部からぎゅうぎゅうに積まれているのだから、子供の力で藁を抜くのは相当な重労働である。
結局、鞭だけで飴も与えられない強制労働者たちは、労働意欲を欠いてしまい思いの外、手こずる家造り(破壊工作)に急激に興味をなくし、入り口すら完成しないまま放置し、再びソフトボールを始めてしまった。
その夜、田んぼの持ち主が少年たちの家に苦情を言って回った。
親は平謝りであったが、僕はというと
「おめーもやっただべや!?一緒に居だべや!(お前もやったんだな?一緒に居たんだろ!)」
「知らね!居だげど、俺やってねーがら!マサだぢじゃねーの?!(知らない!居たけど僕はやっていない!マサ達じゃないの?)」
というギリギリセーフないい訳と、嘘はついていないのでそれほどのダメージは受けずに済んでしまった。




