第17話「アツとホーコ」
どのクラスでもそうだったかも知れないが、僕のクラスも女の子の勢力が強かった。
アツはそんな女の子の中でリーダー的存在の子だった。アツは運動も勉強も上レベルで、小学生ながら書道は段位で国語の教科書のような字を書いた。
一方ホーコは頭脳明晰、容姿端麗とは言えず、勉強が得意だった訳ではない僕から見ても『ちょっとこの子大丈夫・・・?』と思ってしまうような女の子だった。アツとホーコは同じ集落であり、近所に住んでいたので仲が良かった。そんなホーコはなぜか【アメヤのホーコ】と屋号で呼ばれることが多かった。ホーコの家は別に【飴屋】を営んではいない。まあ江戸時代まで遡れば(さかのぼれば)そういう事実があったのかも知れないが。とにかく現在、一切商売はしていない。時には下級生やデリカシーのない僕らに
「アメヤ!アメヤ!アメヤのホーコ!」と馬鹿にしたように屋号で呼ばれることがあった。こう呼ばれるのをホーコは我慢していたようだが、見かねたアツが、朝の会の全生徒の並んでいる中
「ホーコちゃんをアメヤって呼ぶのを止めてください!」と言ったのだ。僕は全生徒の前で発言するなどと言う大胆な行動のアツを見て圧倒された。
リーダー的アツが発言したことで、アメヤ!と呼ぶ者はいなくなった。
僕も女の子全員を敵に回しては学校生活が円滑に行かなくなると感じ、アメヤと呼ぶのは止めた。
僕は
「周りの人に気を配る」という大人のスキルをまたチョッとだけ手に入れたのだった。




