第1話「マサとサクランボ狩り」
僕にはマサという悪友がいる。大人になった今でもマサは優良とは言いがたい。
マサ少年はいつも後輩を引きつれ、イタズラをしていた。(イメージがある)
もみ殻を貯めるコンクリート製のサイロをご存知であろうか?田舎にはあるものなのか地域的なものなのか判りませんが・・・
マサ少年はその上に登り下にいる取り巻きの後輩たちに向け放尿してしまうようなワルガキである。
後輩たちからすれば理不尽を地で行くおっかないイヤな先輩であったであろう。
幸か不幸か僕はマサと同級生であり悪友でもあった。
悪友ではあったが何度も彼のウソには翻弄された。
ある日の午後のこと。
いつものように少年たちが集まってソフトボールだか影踏み鬼だかで遊ぼうとしていた時だった。
「俺んぢ(家)のサグランボ食いに行がね?」マサが言い出した。僕たちは反対する理由も無く、むしろ突然の
「サクランボ狩り」話しに大賛成し、こぞって参加した。
そのサクランボの木は住んでいた集落からちょっとはずれた小高い丘の上にあり樹齢30年という感じの大木で根本の部分が湾曲し、丁度よじ登るには足場となって登りやすかった。
しかし老木ということもありサクランボの数は少なく
子供が届く範囲には大した数は無かった。
それでも僕たちは紅く色付いた甘酸っぱい果実の魔力に魅了され、届く範囲のサクランボを採りまくった。
その時、突然じゃがれた、ばあちゃんの声で
「こらーっ!おめだち!(お前たち!)何やってんだ!」
という怒号が響いた!僕たちは慌てながら
「マサくんが採っていいって言ったがら!」
「なんしたのー!?(何言ってるんだ!?)マサってだんじゃ!(誰だ!)」
「・・・」
どうやらそのサクランボの木はマサとは縁もゆかりも無いらしい事は直感的に理解した。
僕たちは激怒しているばあちゃんを前に謝るしかなかったのだが、
既にマサの姿は在りませんでした。
足元にはサクランボのヘタと種が無残に転がっていました・・・
その後抗議のためにマサの自宅へと行ったのだが、マサは涼しい顔をしてサイダーをごくごくと飲んでいた。
「マサくんうぢ(家)のサグランボじゃねがっだべ!(マサ君家所有のサクランボじゃなかったでしょ!)どっかのばあちゃんにおごらっちゃべ!(どこかのばあちゃんに怒られた!)」
「だって俺んぢ(俺の家)のサグランボだと思っだんだも!(家のサクランボだと思った)」
の一言で済ませやがった。
ばあちゃんの接近をいち早く察知し逃走した所をみると確信犯であろう。
マサにハメラレタ酸っぱい午後でした。