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とし少年の絵日記  作者: 椎名焦茶
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第15話「アメリカザリガニと釘」

 学校のすぐ下には用水つつみがある。用水つつみとは田んぼへ入れる水を溜める溜め池だ。

 田んぼが始まる前までは満水だが田んぼに水が入る時期になると、一気に水量が減り泥の干潟が現れる。 そのつつみにはアメリカザリガニが繁殖しており、干潟にはザリガニの巣が現れる。ザリガニの巣は泥にボコッと穴が開いている。学校帰りにはザリガニ捕りにいそしんだ。もちろん捕って食おうなどという気はまったくなく、そこにザリガニがいるから捕る!それだけのことだ。目的など無い。

 つつみには上流から色々な物が流れ込み、空き缶などもあったため安全とは言えないが、巣に手を突っ込み強力なハサミで挟まれないように捕るスリルに夢中になった。

 僕らはなんにでもすぐに夢中になった。靴を脱ぎ捨て、ジャージをまくり上げ泥の干潟を縦横無尽に歩き回り、穴という穴に片っ端から手を突っ込んだ。すべての穴にザリガニがいるわけではなく、当然ハズレの穴もある。

「いねぇ!」

僕はすぐさま次の穴に移動した。足を干潟についた時だった。

「痛っ??!!!!!」

言葉にならない激痛が左足に走った。少し泥に埋まった左足を見ると足の甲から何か突き出ている!

「何だこれ?!」

 これが激痛の原因だとは理解したが、何が起きたのかを理解するまでにはちょっと時間がかかった。

 釘の先が出た木の切れ端を踏んだようだ。どうやらその釘が足を貫通しているらしい。しかも釘はご丁寧に赤茶けてサビている。気が動転したまま、慌てて釘を抜いた。なぜか先ほどまでの痛みはない。

というか痛みを感じない。

 痛いというよりしびれに近い気がした。あまりのショックからか逆に冷静になり、血が止まらない足に靴下と靴を履きピョコンピョコンと跳ね、左足をかばいながら帰宅した。

 帰宅後病院に直行したが結局傷口は化膿した。 完治には一ヶ月かかり、その一ヶ月で僕はザリガニ捕りを引退した。

 僕は【身の回りに気を配る】という大人のスキルをちょっとだけ身につけたのだが、その代償として僕の左足にはまだ痕が残っている。

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