第14話「堅雪とランドセル」
雪が降ると田んぼ道の通学路が通れなくなるのは前話で触たが、冬期間でも何度かは田んぼの中を通ることが出来た。
それは堅雪になった日である。昼間天気が良く、夜間の気温が猛烈に下がった次の日の朝には堅雪となっていて、僕らが乗っても潰れず、足が埋まることはなかった。つまり田んぼや用水路(冬は水が流れていない。)を気にすることなく学校まで直線で行くことが出来る。学校まで見える白い部分全てが道なのだ。そんな日の朝は鼻毛が凍りついた。吐いた息の水分が鼻毛に付着し、息を吸った時の冷気で水分が凍る。(ピキピキ)と鼻毛同士がくっ付き妙な感じだ。歩くと昨日降った新雪までも
「ザクッザクッ」と表面が堅い。集合場所から学校まで雪の上を歩いて行ける!と、うきうきしてばかりはいられない。なぜならこの登校班というパーティーを、安全かつ確実に学校まで導くのが高学年の僕らに課された任務なのだ。歩き出してしまえば、例え雪が軟らかくて歩きにくくても、戻って出直す時間的余裕はない。高学年として本当に行けるかどうか判断しなければならないのだ。
「まっすぐ歩きたい。」その欲望に決断は一瞬だった。
「行くべ!」
普段なら一列に並んで整然と歩くのだが、今日は横に広がり自由に歩いている。これは楽しい!普段歩くことの出来ない田んぼの上をまっすぐ歩いて学校へ向かっているのだ。途中道路と田んぼの斜面が丁度良い坂になって滑り台のようだ。
「良いごど考えだ!(良いこと考えた!)」
僕は今まで背負っていたランドセルに座り滑った。なんとランドセルはソリにもなるのだ。新しい発見だ。 それから学校までランドセルを背負わずに、雑巾掛けの要領で押して行った。そして学校の手前でランドセルを背負おうとして愕然とした。堅雪に擦られたランドセルの表面は、色が剥げてその大部分が白くなっていた。
「あれぇっ!何だこれ!?」
そのとき初めてランドセルは着色してあるのだということに気付いた。そして僕は学校の油性マジックで着色したが、まったく光沢の無い、つや消しランドセルとなってしまったが、人気ヒーローのシールを貼って地味さを補った。




