友達のフリを続けてきた少女。
キスの日だから、と貴女の唇に触れた。
「もし、いやなら避けてね」なんて、優しい貴女に出来もしないことを言って、抱きしめて、キスをした。
それは友達のわくを超えた好意だった。掴んだあなたの細い手首が、紅く燃え上がった頬の色が、僅かに震える小さな肩が、戸惑いに揺れるしっとりと潤んだ大きな瞳が、そのすべてが、愛おしく狂おしかった。
何よりも、貴女がキスに慣れていないことに嬉しくなった。そんな優越感が何の意味も持たないことを知りながらも、初めてを奪えたという事実に喜ばずにはいられなかった。本当はずっとこうしていたかった
一人の少女を見つめるとき、心底、自身の性が疎ましく思う。柔らかな指先の透る白肌。振れる声と鮮やかな表情を見るたびに、心を焼くような劣情が私を焦がす
彼女の心を誰もが欲していた。かくいう私も彼女を好きになるのにそう時間はかからなかった。別に私は同性愛者という訳ではない。現に今までの人生で彼女以外のいかなる女性にもこんな劣情をいだいたことはなかったし、彼女たちが持つ性的衝動と私のこれは少し違うように思えた。しかし、彼女のそばにいる時に感じるそれは静かな高揚感は、どんな恋愛小説よりも切なくて、この胸のときめきを恋と呼ぶほかになかった。
だからそんな下心を隠してあなたも大変だね。と近づけば彼女はすぐに受け入れてくれた。そして一緒に過ごしていくうちに彼女が自分を好きにならない友達が欲しかったのだと気づいた。だから、私は嫌われたくない一心で、必死に唯の仲のいい友人を演じた。




