1着目 〜冒険の準備〜
アテナ「いやぁ、満足☆満足」
ひと通り撮影した後、
満足げな女神様を横目に一息つく。
アテナ「撮影ありがとうございました!」
カズキ「いえいえ、こちらこそ!フゥーハッハッハッ!」
傍から見たらただの撮影会だなw
アテナ「おほん。では、改めて異世界の説明をしますね。」
改まった女神様によると…
よくある剣と魔法のファンタジーな世界で、
10年程前に魔物が魔人へ進化し、
魔王として世界に猛威を奮っているらしい。
当然、その世界の住民たちは立ち上がり
奮闘しているのだがどうにも進行が止まらない。
そこで異世界より人を遣いバランスを戻したいとの事。
アテナ「…と言ったところかしら。詳しくは情報端末に記載してるわ。」
すると、先程まで使っていた小道具の携帯を指す。
カズキ「なるほど…ってえぇ!ガラケーに!?というかこれハリボテですよ!」
アテナ「えぇ。さっきまではね。」
女神様が微笑むと、
小道具であった携帯が光り電源が付いた。
カズキ「な、懐かしい…」
アテナ「その端末は様々な形態へ変化することが出来るの。」
すると携帯は
手帳や水晶、カードへ変化した後
また元の携帯に戻った。
アテナ「ちなみに連絡先に私の連絡先を入れておいたわ♡」
カズキ「ッ!?」
微笑みながらこちらを見る女神様。
アテナ「情報を見ても分からない時は連絡してね!」
前のめり気味でそう言う。
多分…メル友とか欲しかったのだろう…
アテナ「さて、お待ちかねのステータスだけど…」
カズキ「待ってましたぁ!」
やはり自分のステータスは
気になるしテンションも上がる。
アテナ「ふふ。貴方のステータスはこれよ!」
女神様は告げると、
また携帯が光る。
すると携帯画面にステータスが表示された。
鈴木被衣 種族:人間
職業:換装士
HP:50 MP:-
STR(筋力):40
CON(体力):40
POW(精神力):50〜90
DEX(敏捷性):50
INT(知性):60
RACK(幸運):70
…え
カズキ「め、女神様…このステータスって上限はいくつです…?」
アテナ「基本的には100が上限値よ。」
…マジか。
というか俺、
こんなに貧弱だったっけ…
正直、脳筋みたいな敵をバッサバッサと
なぎ倒せるステータスを期待してたのに…
わっほー!わっはー!したかった…
カズキ「魔法も…使えないんですか…?」
携帯を耳にあてようとしながら聞くと
アテナ「その装備だと出来ないの。ステータスの下を見て。」
促す女神様に言われ見ると、
装備:狂科学者シリーズ
…ん?
これって…
アテナ「それと所持品を見てみなさい。」
1度ステータスを閉じて、
所持品と書かれた欄を見てみると、
考古学者Iと冒険者Kの2つのシリーズがあった。
アテナ「試しにどちらか装備してみたら?」
カズキ「では異世界なので…」
カーソルを合せ選択すると、
一瞬で自身の姿が変わった。
黄色の縁があしらわれた
緑のケープが目立つキャラクターに変身した。
すると先程まであったとある気持ちが消えたのだ。
先程まで何者かの陰謀に
巻き込まれてるのでは無いのかという考えが
常々あったのだがそれがなくなったのだ。
いやまぁ既に巻き込まれてはいるのだろうけど。
そして、新たに湧き出る感情があった。
女神様の身体付き…良いなあ…
自然と胸に目が行く。
アテナ「どうかしら?」
女神様の一言で我に返る。
カズキ「ヘェアッ!な、何がです!?」
完全に不審者のそれである…
アテナ「装備の他に変わった感じがあるんじゃない?」
相変わらず微笑む女神様。
良かった、
どうやらバレてはいないようだ。
そして、
ようやく気が付く。
カズキ「あれ、俺こんな性格だったっけ?」
アテナ「そう。それは貴方のスキルがそうさせているわ」
慌ててスキルの欄を確認すると、
1番上に”演者”と”早着替え”というスキルがあった。
あとは盗賊系スキルが目立つが、
魔法と思しきスキルも多々あった。
アテナ「その”演者”の効果で陰謀論や北欧神話が頭に常にあったり、さっきみたいにスケベになったりね…」
女神様が頬を染めて言う。
…しっかりバレていたみたいだ。
アテナ「でもそのスキルと職業は相性抜群よ。」
カズキ「そうだった!魔法も使えない上に、職業まで決まってるなんて…あんまりですよ…」
アテナ「ふふ。落ち込むのはまだ早いわ。ステータスをもう一度見てご覧なさい。」
言われるがまま、
もう一度ステータスを確認する
鈴木被衣 種族:人間
職業:換装士
HP:40 MP:40
STR(筋力):40
CON(体力):40
POW(精神力):40
DEX(敏捷性):40
INT(知性):60〜80
RACK(幸運):90
装備:冒険者Kシリーズ
カズキ「MPが…ある!」
いや、他にもステータスが変わってる。
幸運値が異常に高い…まさか!
アテナ「気付いたようね。」
カズキ「えぇ。この職業はコスプレの上位版ですね!?」
アテナ「まぁ概ねそう捉えてもらって構わないわ。」
カズキ「”早着替え”は読んで字のごとくなのでしょうが、この”演者”ってスキルは結局どんなスキルなのですか?」
アテナ「そのスキルは演じる者を知っていればいるほど、その者の力を得ることの出来るスキルよ」
アテナ「でも、例えその者を完璧に知ったとしても自分自身に経験が無ければ使いこなすことは出来ない…まさに身も心も知った上で効力を発揮するスキルよ!」
カズキ「ッ!なるほど。」
思わずニヤリと笑ってしまう。
元々なりきるのが好きな自分に
もってこいのスキルじゃないか。
アテナ「では最後に装備を解除してみなさい。レイヤーさんの素顔を見るのは申し訳ないけども…」
この女神様はホント知り尽くしてるな…
カズキ「俺は気にしないタイプなんで大丈夫ですよ。」
装備にカーソル合せ選択、
解除の文字が出たので決定すると
コスプレする前の格好に戻った。
良かった、あまり変な格好してなくて…
アテナ「素顔もカッコイイですね!」
カズキ「お世辞でも嬉しいですwそれでステータス確認ですか?」
アテナ「お世辞じゃないのに…そうよ確認してみて。」
気がついたら自分のスマートフォンに
変化した端末を手馴れた操作で
ステータスアプリを起動する。
鈴木被衣 種族:人間
職業:換装士
HP:60 MP:100
STR(筋力):60
CON(体力):50
POW(精神力):50〜70
DEX(敏捷性):60
INT(知性):50
RACK(幸運):50
装備:私服
やっぱり力が戻ってる。
ある程度の運動はしていたので
先程の貧弱さに違和感を感じていたが、
気のせいではなかったようだ。
それにしても…
カズキ「…なんで元の自分なのにここだけMPがカンストしてるんです?」
アテナ「魔法が使いたいと言っていたでしょう?特典よ♡」
カズキ「あ、ありがとうございます!」
小さくガッツポーズをとる。
アテナ「さて、長話も過ぎたわね。」
女神様が右手で指をパチンと鳴らすと、
自分の真下に魔法陣の様なものが浮き上がった。
アテナ「それではスズキカズキ様、ご武運を。」
カズキ「はい!女神様もお達者で!」
意識がだんだんと薄れていく中
女神様の声が聞こえた気がした。
アテナ「次は私の事はアテナと呼んでくださいね?カズさん。」
やっぱり、可愛い女神様だ。
冒険の準備〜完〜
用語
・ガラケー
今は(ほぼ)亡きガラパゴスケータイの略称。
だいたい2つ折りで、ストレートとかスライド式とかあった。
ステータスについて
本世界観では、
クトゥルフ神話TRPG等に使用する
ステータス値を参考にしています。
HPと体力値って何が違うねん!
とかあるともいますのでざっくりとした説明をしておきます。
・STR:Sterength
どれくらい重い物を持ち上げられるのか、
それとも引っ張れるのか、
はたまた掴まっていられるのか。
・CON:Constitution
健康状態や活力、生命力や体力があるという事は
健康的であり毒や病気、溺れたり
首を絞められたりという事に強く抵抗できる。
・POW:Power
“意思の強さ”そして“精神力の強さ”を表す。
魔術的な攻撃に対抗できるかも。
・DEX:Dexterity
機敏な動作がとれたり、
反射的に飛んできたものを避けられる、繊細な仕事ができる等
・INT:Intelligence
物事をキチンと分析できるのか、
いかによく物事を学べるかなどを表す。
幸運はそのままの意味。