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転生して、【自然神】(一応人間)になってまったり暮らしてただけなのに‥  作者: 瑞浪弥樹
第二章〜乙女ゲームの世界?〜
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学園内案内 -キリア目線-

今回は、学園内の案内をします!広い学園内の一点、中央にそびえるは学園の象徴とも言える程の……?

「さて、今日は授業初日ということでまずは学園の案内からね!」

「おー!」


 おはようございます。今私がいるのはあのおんぼろ校舎の改築後の校舎。皆で起きた後、初めての授業ということで学園内の案内してくれるらしいです。


「という訳でー、まずは本校舎に向かうから皆準備してねー」

「「「「「「「はーい」」」」」」」


 ルミリナ先生の声でみんながそれぞれ教室を後にする。私もそれについて行き、校舎から学園の舗装された道を淡々と歩いていると木々だらけだった視界が一気に晴れる。ここからは舗装された道だ。

 皆で雑談をしながら歩いていると、他クラスの子なのか先輩なのか、はたまた別の教師なのか。皆が気にならない程度ではあるが嫌悪の視線がちらちらと感じられた。


「にしてもやっぱ学園って広いなぁー」

「ロイナス、迷子になるなよ」

「お前に言われたかねーわ!」


 私の横では幼馴染関係のロイナスとユキが憎まれ口をたたきあっている。まぁユキはちょっとした迷子癖あるし仕方ないと思うけど、これ位広い学園だったら誰彼構わず一度は迷子になるのではないだろうか。

 私は魔法使って位置把握とかできるしそもそも余り迷わないからいいけど、ユキは何度か来ている王城でも迷子になっているからね。


「はいはい、ここからは静かにね。ここが本校舎。私たち以外の他クラス、他学年が共有して使っている学科棟よ。基本的に皆はここを使わないけれど、合同行事や収集が掛けられたときはここを使うわね」

「でけーな…俺らのと段違いの大きさじゃねーか」

「ロイナス、大きさとか関係ないだろ」

「いやー、デカいもん見るとワクワクしない?」

「しない」


 相変らずロイナスに対すると口調の尖るユキと、それを難なく受け流すロイナス。慣れてるなぁ。

 隣の様子を微笑ましく観察しながらも、本校舎の方に目を向ける。校舎は他と同じく、基本色が白。私が改造した校舎の何百倍もある大きさで、敷地面積では王城の半分程度を占めるかもしれない。


「特に入る必要もないけど、入った時に何があるかだけ確認するから付いて来てね」

「あーい」


 リィナ先生の掛け声に反応して、私たちは本校舎の中に入る。一度だけリィナさんに連行されたときに見てしまったけど、ホントに内装が王城のそれと匹敵するくらいの豪華さだ。照明が基本的に高価な魔石が使われてるし、調度品もどれも申し分ないものが揃っている。ぶつかるのが怖いくらいだ。


「まず一階だけど、この辺りは基本的に生徒は使わない決まりになっているわ。あるものとしたら職員室や来賓室、後は学園長室だけね。要がない限りは一つの通路しか通ることは許されないわ」

「へぇ…一階って、中庭もなんですか?」

「中庭はこの道をまっすぐ行ったところにあるわよ。聖樹の周り以外は誰でも使用できるけど、朝は封鎖されているから入れないところだけ注意してね」


 中庭…聖樹があるところか。まだ聖樹らしき気配なんてないんだけど…反応が弱い?いや、違う。なんなんだろう。

 リィナ先生が他教室の説明をしている間、私はこの学園中に魔力を散布させておく。何かあった時の為にいち早く反応できるようにね。


「ここが中庭よ」

「わぁっ…!!綺麗!」


 他に意識を巡らせていたら、中庭についていたらしい。アリスが小さく歓声を上げるとともに視界いっぱいに「綺麗」と誰もが言う景色が広がった。筒形にぽっかりと開いた空間には色とりどりの花や草木、大理石の噴水などが設置されている。そして、真ん中に鎮座するのは淡く不思議な光を発生させる苔を纏った大樹。

 恐らく、聖樹と呼ばれるものだろう。学園の最上階を突き抜ける大樹は天空に向けていっぱいに枝を広げて木陰を作っている。


「真ん中にあるのがこの国唯一の聖樹。代々学園のミラルカの一つである『精霊』が管理していて、世界最強を誇る学園の護りの要よ」

「あんなでっけー樹みたことねーよ…!」

「先生先生!あの光ってる苔って何?」

「あれは聖樹の力の証よ。ちゃんとこの学園を守ってくれているって証」

「凄いね聖樹!」


 皆が見たこともないような大きさの聖樹に興奮している中、私とユキだけはただ沈黙を重ねていた。何故かって?それ以上の我が家を見てしまっているからだよ。うん、そしてもう一つ。これ一番重要。


【あれ、聖樹じゃなくて精霊樹じゃね?】


 気が付いてしまった。道理で聖樹の反応がないわけだ。聖樹の反応をいくら探したところでここにあるのは精霊樹なのだから。


「ユキ…」

「うん、なんとなくわかったよ」

「これは本当のことを言うべきか…」


 ユキも私の反応からしてなんとなく察したらしく、呆然と自慢げに話す教師二人を見つめていた。

 話を精霊樹に戻すと、細かく言えばアレも聖樹に近い存在ではある。精霊樹として産まれたその日からここに鎮座してきたのだろう。そして、年月が経ち精霊樹は力を蓄え聖樹のような存在になった……と。

 まだ生まれて間もない聖樹とこの学園の精霊樹だったら、圧倒的に精霊樹の方が力を持っている。それこそ、精霊王の元にあるものには敵わないが。


 そして、この学園を守るというのもあながち間違いではない。精霊樹は力を十分に蓄えられるようになると、その力を使って自身の防衛に回るのだ。勿論、その周辺にいる精霊も力を貸す。

 そこに学園ができて自分の身の安全が確かめられたとしたらどうだろう。精霊樹は自身だけを強固に守る必要はなく、その外枠である学園全体を守れば敵は入ってこないわけだ。

 まぁぶっちゃけてしまえば精霊樹が外枠に力を回して自分を守っているだけであり、決して学園に力を貸しているわけでもない。win&winの関係ってやつだね。

 精霊樹は自分を守るために学園を利用し、学園は自分たちを守るために精霊樹の力に預かっている。


『なぜこんなにキリアちゃんが理解しているのかというと、自然神としての力が働いている存在が精霊樹、聖樹などの物だからだよ!byルアナ』


「聖樹は神聖なものだから誰にも触れることは許されないけど、例外として聖樹に認められた存在だけが触れることができるわ」

「認められた存在?」

「ええ、学年が変わるごとにあるのだけど、選定の儀式と言って毎年学年の中から一人だけ聖樹が選ぶのよ。その時選ばれた人だけが聖樹に触れられることができるわ。もちろん、貴方たちの中から選ばれる可能性もなくはないわね」


 選ばれるって…精霊樹に対して適性のある人ってこと?精霊に近い存在が選ばれるってことでオーケー?だとしたら今年は例外かもしれないなぁ。私は触れるどころか生み出せるし、後の神獣三人組も精霊の上位互換も甚だしいから一人じゃ収まらない気がするぞ……特にキリル。あとの二人と違ってキリルだけは直接的に精霊たちと触れ合っているし、何よりキリルは精霊魔法を司っている張本人でもある。


「ここは後でまた選定の時間に来るから、早く次の場所に行くわよ」

「「「「「はーい」」」」」


 リィナ先生の後ろに皆でついて行きながら、他クラスの様子を見に行ったり、特別授業で使う教室なんかも見学した。そして、学園のあらかた案内してもらった後にはお昼を過ぎていた。皆の為に作ったお弁当は大好評。これから何故か私が料理当番になることになった。まぁ、皆美味しく食べてくれるからいいけど。


「さぁ、ここからは選定の時間よ。皆また中庭に行きましょうか」

「「おー!!」」


 ご飯を食べ終わった後また中庭に移動すること数分。ついた中庭の精霊樹の前には大量の人だかりと長蛇の列が出来ていた。選定の儀式だから皆も見に来るのか。

 列の一番最初に並んでいる人が恐る恐ると言った様子で精霊樹に触れようとするとバチッ!と結界によってはじき返される。あの人は不合格か。


「聖樹に認められた人はああやってはじき返されることなく触れて、聖樹に認められなかった人は聖樹から拒否されるのよ」


 拒否って言ってやるなリィナ先生。そうだけども。私たちも長蛇の列の最後尾に並ぶと、どこからか小さなリスや小鳥がやってきて私の肩に乗ってきた。


「わぁ、キリアちゃんの肩に乗ってるリス可愛い!」

「何かどんどん寄ってきたね」


 ユキがそう言っている間にも、私の肩にどこからかやってきた小動物たちが乗っていく。本当にどこから…あ、精霊樹に住み着いてた子たちかな。


「キリアの何かを察知して寄ってきたんじゃない?」

「うーん、可愛いけど目立っちゃうなぁこれ」


 くるっと動くたびに肌に触れる尻尾や羽、もふもふたちがくすぐったい。とってももふもふ天国である。アリスが私の方に手を伸ばすので、肩に乗っていた鳥を一羽乗せてあげると、優しく撫で始めた。鳥も気持ちよさそうにクルクルと鳴きながらアリスに頭を擦り付けていた。


「ユキも触って…いや、いらないか」

「う、うん」


 見れば、後ろに並んでいたユキにも見事に小動物たちが乗っかっている。ここだけ小さい動物園ができたみたいだ。


「かわいいねぇ」

「もふもふ…」


 待ち時間をもふもふたちで堪能していると、前の方からわぁっと歓声が巻き起こった。何事かと人の影から覗いてみれば、やっぱりあの三人。フェルア、フリスア、キリルの三人が見事に精霊樹に触れられていた。いや、それだけじゃない。三人の周りに、精霊たちが降らしたのか陽光のシャワーが降り注いでいる。

 前例がなかったのか、観衆は大騒ぎだ。


「あー、あの三人か」

「そうそう。なんか分かっちゃうよね」

「うん。結末が見えているっていうかなんて言うか。あとキリアもそうでしょ」

「分かっちゃう?これはあの三人のせいでフラグが盛大に建築されてしまった予感」


 そして自分がそのフラグを回収できてしまうというどこからかわいてくる自信。いやこんな自信いらないんだけど。


「まぁ、ゆっくり待ちますか」

「そうだねぇ」


 もうこんな展開に慣れきってしまったのかユキものほほんとした口調で返す。いやぁ、こうして価値観がぶち壊れていくのだろう。慣れって怖いね。


「いやぁ、それにしてもあれって本当に聖樹じゃないの?」


 ユキが周りに聞こえないように声を潜めて耳の近くでそういった。万が一にでも聞かれたら困るからだろう。そのあたりの配慮はしっかりしているみたいだ。


「うん、精霊樹が結構力溜めた結果だから。あんなに年月立ってるのは久しぶりに見たけどね。きっとどこかに主の精霊がいるんじゃない?」

「へぇ、見たことないから分からないけど、精霊ってどんな感じだろう」


 基本的には人間と同じ姿してることが多いかな。いや、どっちかって言ったら人間が精霊の姿に近いってだけなんだけど。ルーチェ(光の精霊王)も小さい幼女の姿してるし、今回はどうなんだろうか。

 長い事ここに身を置いているから少なからずその場に姿は見せてると思うんだけど…


「色々。人の形してるのは高位精霊だし、そんなに力もってない子たちは動物の姿とか光とか。ユキの…」

「?」

「いや、何でもない」


 危うく言いかけた言葉をすんでの所で飲み込む。いけないいけない、私は何も見なかったさ、いいね。

 くるっと後ろを向いていた体を前に直して何も見なかったふりをする。そろそろ順番が来るという名目の元に。


「次、レイト・エル・ルミカレナ」

「…………」


 一番先頭に立っていたロイナスとアリス、フェニーが終わってレイトの名前が呼ばれる。私の前はセレスだし、次の次か。それにしてもまじかで見て本当に大きい。私ここに精霊樹があったこと知らなかったからいつからここにあるのかまでは分からないけど少なくともここに人間の国ができる前、いわば吸血鬼たちがここに住んでいた時代ほどに生えたものだろう。少なくともそれほどの年月は経っていてもおかしくない。


「…………次」


 レイトが変わらぬ表情で精霊樹の前から立ち去る。結果はダメだったみたいだ。相駆らわず表情は読めないけど、背後に背負っているオーラが心なしか暗い。


「………次、キリア・アルフレア」


 私の名前が出た瞬間、一部の気が付いた人たちにどよめきが走る。まぁ、兄弟だから苗字一緒にしてるし、さっき三人が盛大に驚かれたからこうなるのも無理はない。私には期待しないでおくれ、人の視線を浴びるのは苦手なんだ。


「…………」


 そっと精霊樹に近寄り、結界のある場所まで手を伸ばす。すると、急に頭上から子供の声が降ってきた。


「遅れてごめんなさいぃいいいい!!!」

「!?ちょ、危なっ!」


 頭上に影が差し、上を見上げれば私と同じくらいの大きさの子が真っ逆さまに降ってきた。手をじたばたとさせながら、何故か精霊樹の頂点から。

 私は咄嗟にその場を退いて魔法で落下地点に風のクッションを作る。何重にも風を重ね、女の子が怪我をしないように小刻みに変わる落下地点を考慮して何とか間に合わせる。ぽふっと軽い音を立てて女の子を受け止めることに成功すると、額から冷や汗が流れた。


「ッ…ギリギリ!」

「キリア!大丈夫?」

「な、何とか」


 額の汗を拭いながらそう言う私にユキが心配そうに声をかけてくれた。周りの人は息をのみ、その場に起きた出来事を刻々と見守っている。


「君…大丈夫?」

「あ、ごめんなさい!」


 女の子に向けて手を伸ばすと、ビックリしたような顔を向けられ、唐突に謝られた。え、なぜだ。私何かこの子を怖がらせるような事でもしたかなぁ…?


「…!!」


 取り敢えず怪我がないかその体に目をやった瞬間、ある一点に目が留まる。彼女の背中に位置する部分。そこには、輝く蝶の羽の形をした美しい妖精の羽が付いていたからだ。

 …まさか、この子がこの精霊樹の主!?いやいやいや、でもそんな…チラッと辺りを見回してみても、他に精霊は見当たらない。光の姿をした下位精霊も、その魔力の残滓すらも。


「!!キリアさm…もごもご」


 精霊の方も私に気が付いたのか、ビックリして様付で私の名前を呼びそうになって思わず精霊の口を塞ぐ。やめて!今平民としてこの学園に入ってるの!目立つ分には妥協できるけど正体がバレるのだけは何としてでも避けなければ!


「私、()()()って言うんです。貴方は?」


 それに、まだ名乗ってもいないのに名前を知っているだなんておかしいよねぇ。君は、今、ここで、私の名前を、初めて、聞いたんだよ?と顔だけで圧をかけておく。


「っは、申し遅れました!わたし、このせい(rもごもご)樹の主である翠の精霊です!」


 この子…地雷を自分から踏みに行くスタイルなの!?いや人間側が勘違いしてるってだけなんだけどさ…何とか精霊樹とは言わせずに口をいいところだけ塞ぐ。というか、本当に主だったんだ。


「この度は…ええと、あれ、(神獣の皆様方に)呼ばれて出てきたんですけど…」

「…」


 おい、キリルでしょこれ。呼んだって、おい。


「と、取り敢えず君はここの精霊さん?」

「そうなのです!」

「へ、へぇー」


 取り敢えず皆に話を合わせるように軽い情報の引き出しを行っておく。もうほんと冷や汗だらだらよ。皆の視線が一点に集まってるんだから。


「あ、そうだ、私この樹に触ってみないといけないんだった」

「この樹ですか?どうぞ触ってください!」


 わざとらしくそう言うと、精霊ちゃんが笑顔で了承してくれた。いや、両省と言うよりも懇願と言うか何というか……

 うん、触るついでにちょっとだけ力分けてあげるから。そんなもの欲しそうな目線をこっちに寄越さないで。


 視線の気まずさに耐えかねてやけくそとばかりに樹に手を当ててそっと力を流し込む。その時、ぽうっと樹全体が淡く光ったのは言うまでもない。元々の目的を達成させると、観衆たちからさっきとは比にならないほどの大歓声が巻き起こった。

 キリル。絶対自分達よりも私を目立たせるために精霊ちゃん呼んだでしょ。


「おめでとう。キリア・アルフレア。貴殿はこの聖樹に住まう精霊様に気に入られたのだな」

「…」


 何処からかパンパンと手を叩きながら格好のいいふくよかな老人が出てくる。誰だろう。見たことないけど学園のお偉い立場の人?


「私はこの学園の理事長を務めているものだよ。今まで精霊様が我々に姿を見せることはなかった。貴殿は学園の誇りだ」


 演説のようなその口調に一瞬静寂が訪れたのち、更に空にまで響くほど大喝采が再び巻き起こった。

 ……あれが理事長…リアクリド家当主にして、セレスの父親…か。

 見た目は完全に優しい老紳士だが、どうにもその笑顔の奥があるような気がしてならない。一応気を付けておこう。この人も貴族だ。


「……お褒めに預かり光栄です」


 その場はいったん空気に乗る返答をし、私は皆の視線を受けながらその場を抜ける。再び集まっていたロイナスたちの元へ行くとそこでも一瞬で人だかりができる。


「キリア!すげーな!」

「あ、うん。ありがとう」


 押しくらまんじゅう気味な人ごみに息を詰まらせながら皆に囲まれる。そこからはあんまり覚えていない。人にたかられ過ぎたせいか、あまり記憶がないのだ。だけど寮に戻った後聞いた話では、残された精霊ちゃんが直々に選定の儀式を行ったのだとか。受けた人は、精霊に逢えた嬉しさと精霊直々にダメ判定された悲しさで回復とダメージを繰り返している人もいたのだとか。まぁ、ドンマイ。






「キリア様ーーーー!!!!」

「ぐふっ」


 突如として襲ってきた首元の痛みと元気な声に思わず変な声が出た。首元に回された手の主を見上げるようにしてみれば、そこには嬉しそうな精霊ちゃん、もといエラルドがいた。

 あの儀式からおよそ三日。学園生活の紅潮も収まってきたころの今、あの精霊ちゃんに物凄くなつかれている。

 あの日、そのまま記憶がなく眠りそのまま朝を迎えた所、あの精霊が私の元に来て名前を付けることをせがんできたのだ。名前を付けることは精霊と契約を結ぶこと。その命尽きるまで永遠に続く精霊にとって人生の始まりを私が決めることに少し抵抗もあったが、キリルからのgoサインもあったので名前を付けた。

 意味はこのエラリアド王国の名前を取ってエラルドだ。決して髪の毛が翠色でエメラルドみたいだと思ったからじゃない。

 あと、エラルドの髪の毛は契約前は白色だったのだけど、契約後は私の影響か、私の眼の色と同じ色に染まった。


「ど、どうしたのエラルド」

「あの女の人が呼んでました!」

「…あぁ、ルミリナさんの事ね?」

「そうその人!」


 表情から何とか人物を読み取ると、エラルドが元気よく頷く。エラルドはぜんっぜん人の顔を覚えることができなく、いつも抽象的に伝えてくる。私とフェルア達の事は覚えてるらしいんだけどね。エラルド曰く、「人間の顔なんてほとんど同じで見分けがつかないのです。魔力の波長で少しだけ覚えましたけど、名前までは……」だそうだ。


「伝言ありがとう。私これから本校舎の方行ってくるからお留守番よろしく」

「はーい!」


 ソファを立ち、私はエラルドを残して寮の自室を出る。今日は授業、もとい学園の説明が終わったから後は部屋でゆっくりできると思ってたんだけど…まぁ、呼び出しなら仕方がない。


 渋々と部屋を出て本校舎に向かう途中で何人かの生徒にあったが、あれからの視線はいまだに絶えず、好奇のような興味の絶えない視線が注がれている。自意識過剰なだけかもしれないけど樹の間からも見られているような気がしてならないのだ。逆探知を防ぐためにも学園内では探知魔法を控えているから正確な位置までは分からない。


「…………」

「…………」


 ひそひそ話が遠くの方から聞こえてくる。否が応でも聞こえてきてしまう上に、視線も重なれば私の事について何か言っているのではないかと不安になってしまうのも仕方がない事だと思う。


「早くいこ」


 独り道の真ん中でそう呟いて私はルミリナさんが待っているであろう職員室隣の対応室に早足で向かった。

読んでくださりありがとうございます!


エラルド「キリア様!」

キリア「なんか申し訳ないし…むず痒いなぁ。そして私はまた妹を増やしたのだろうか?」

ユキ「これで何人目?」

キリア「…?何人だろ」


マナハちゃんに次ぐ妹的存在。


次話は、ルミリナさんからの呼び出しでキリアちゃん、着せ替え人形になる!

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