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転生して、【自然神】(一応人間)になってまったり暮らしてただけなのに‥  作者: 瑞浪弥樹
第一章〜神になって出会う人〜
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少女は少年を連れて飛ぶ ーキリア目線ー

五話目投稿です!

投稿期間が大幅に開いてしまいすみませんでした。


今回はちょっと長めで、少しグロいところ?があります。大丈夫だとは思いますが、苦手な方は避けて読んでください。

「今行かなくていつ行くの?」

「そ、そうだけど…」


 それに、飛ぶついでにユキを町まで送って買い物したかったから、丁度良い。


「い、いいの?」

「ピィッ」〈僕はいいよ。キリアをいつも乗せてるから1人増えたところで変わりはないし〉

「ほら、フリスアもこう言ってるんだし、行こう?」

「う、うん!」


 そうと決まればすぐに行動しなきゃ。


「よし。じゃあよろしく」

「ピィ…」〈分かってるよ。もう…〉


 私が窓を開けると、フリスアがそこから出て行く。


「じゃあ行くよ!ユキ!」

「え、う、うん!」


 サッとユキの手を取り、足元に転移の魔法陣を展開させる。視界が強い光に蝕まれ、何も見えなくなる。あるのはユキの手を握っている感覚だけだ。


「な、何が起きてるの!?」

「大丈夫だよ。それよりもほら、もう直ぐだから目を開けてみて?」

「ん…え!??」


 目を開けるとそこは、なにも足場のない空中。そこで2人で手を繋ぎながら落下している。


「ちょ、キ、キリア!?どうなってるのこれ!?」

「あはは!!いま、私達落ちてるよ!」

「そんなこと分かってる!ちょ、ほんとに死ぬ!」


 いやいや、そんな危険なことに連れてくわけないでしょ?


「大丈夫。大丈夫。もうすぐ来るからっ!」

「だからなにが!?」


 ユキが叫ぶと同時に、落ちていた感覚が消えて、代わりにふわふわとした肌触りの、羽毛が出迎えてくれる。


「ピィー…」〈ホント、キリアはこれ好きだよね…全く、受け止める僕の気持ちになってみなよ…はぁ…〉

「ありがとうフリスア。あ、ユキ…って、大丈夫!?」


 手を繋いだままのユキの方に振り向くと、ユキが虚空を見つめてボーッとしていた。いくら私を乗せ慣れているフリスアでも、ボーッとしていると落としてしまう。


「……俺、死んだのかなあ……」

「いや、死んでないから!とりあえずこっちに来て!」


 ユキの手を引き、自分の方に寄せ、周りに結界を張る。途端に体を打ち付けていた風は緩やかになり、髪が揺れるほどになる。


「………っは!あれ、俺なんでこんな所に…って、ええ?!なんで空飛んでるの?!」


 どうやらびっくりし過ぎて少し記憶が飛んでいるらしい。本当に大丈夫?


「ピィ」〈ユキ。あんまりはしゃぐと今度こそ落ちるよ〉

「うわっ!っととと……ってキリア!なんでこんな乗り方するのさ!?危ないでしょ!」

「危ないって言っても、フリスアならちゃんと受け止めてくれるし、もし外れたらその時は私が守ってあげるから大丈夫!」


 私も一応飛べるし、そもそもフリスアがキャッチをミスするなんて有り得ない事だからね。


「いや、そう言う意味じゃ……はあ、うん。もう大丈夫」

「そう?顔が青いけど…」


 到底大丈夫そうには見えない。


「大丈夫だから。でも次からはやめてね…?」

「えー……」

「えーじゃないの!全く…心臓に悪いことはしないで!」

「え、ユキどこか悪いところでもあるの?」

「ないけど!あーもう!話が噛み合わない!」


 うーん…結構気に入ってたんだけど、ユキがそこまで言うなら仕方がない。


「わかった。今度からは普通に乗る」

「うん。そうして…」


 どこかユキの顔がやつれている。何かあったのかな…


「それにしても、キリアって毎回こうやって町に行ってるの?」

「ううん。いつもは歩いて。急ぎの時とかは転移魔法使って行ってる。フリスアに乗る時は大体ストレス発散とか、行ったことない所に行く時だけ」

「へぇ〜………っえ?転移、魔法…?」

「うん。転移魔法」


 ユキがまた固まってしまう。転移魔法は私はもちろん、フリスアやキリル達も使える。だからそう珍しいものでもないと思うのだけれど…


「ちなみに、さっき俺達が上空に現れたのは?」

「転移魔法だよ」

「もしかしてフリスアたちも…」

「うん。使えるよ。」


 私が使えると言った途端、ユキが固まるわけでもなく、ただ目をキラキラとさせて話に食いついてくる。


「キリア!その魔法についてもっと詳しく!」

「え、う、うん。転移魔法っていうのは今いる場所からある地点まで一瞬で移動する魔法だよ」


 いや、ギラギラと。と言った方が正しいかもしれない。


「その魔法って、俺でも使える?」

「ど、どうかなぁ…多分コツを掴めば誰でも使えると思うけど……」

「ほ、本当か!?」


 ユキがガッツポーズをして喜んでいる。使えるかどうかは分からないけれどユキなら多分使えるはず…多分。


「そ、それで、その魔法ってどうやって使うんだ!?」

「ユ、ユキ。落ち着いて?ね?」


 私が落ち着かせようとするも、ユキは止まらない。


「これが落ち着いていられるもんか!転移魔法は古代に消失したとされる幻の魔法なんだぞ!」

「そ、そうなんだ…」


 ユキの凄い勢いに少し気圧されてしまう。そんなに凄いことなのかまだ実感がない。


「それで、魔法の使い方はどうするんだ!?」

「えっと……」


 何と言えばいいのかわからない。私はほとんど無意識のうちに覚えていたので、コツしか知らない。


「ピィ」〈キリア、ユキ。転移魔法についての話はそこまでにして、もう着くよ〉

「あ、うん。じゃあこの話はまた今度ね?」

「うん」


 フリスアがゆっくりと高度を下げて行き、着いたのは町の外れにある小さな空き地。そこに降りるとフリスアが小さい姿に戻り、私の肩にとまる。


「ここでいい?」

「うん。その…キリアの用事が終わるまで一緒にいていい?」

「いいけど、何で?」


 ユキはもうここまで来たら家族のもとに帰れるのに……


「いや、その…ここのことをよく知ってそうだから、一緒にいた方が周りやすいかなって」

「そっか。うん、いいよ。あ、でもこれからいく所ギルドだからあんまり面白くないよ?」

「いや、面白そうだから行ってみたい!」


 そうかな…あそこは基本優しい人が多いけど、他所から来た冒険者は気が荒いからちょっと心配なんだけどなぁ。


「ピィ」〈ま、いざとなったらキリアが何とかするから大丈夫でしょ〉

「えぇー……やだよ。あそこのギルマス怒ると怖いんだもん」


 この町のギルドマスターは怒らせると怖いことで有名で、いつもはのほほんとしているおじいちゃんで、虫をも殺さぬ雰囲気を纏っているが、本質は全くの正反対。怒らせると、その場にいる全員を殺しそうな程の冷気を放ち、ひどい時は丸1日正座で説教をさせられるらしい。

 聞けば、ギルマスは全盛期ではドラゴンスレイヤーと呼ばれる集団の1人で、何度かドラゴンを狩っていたそう。

 私はもちろん怒らせたことはないが、一度その場に居合わせたことがあり、その時の空気ときたら生きた心地がしなかった。


「まぁ、何もないのが一番なんだけどね。でもこういう時に限って、何かあるんだよね……」

「そ、そうなの?」

「うん。あ、ほら、あそこがギルドだよ」


 私が指差した先は、他と比べて一際豪華な建物、冒険者ギルドだった。


「あそこが冒険者ギルド?」

「そう。さ、入ろうか」


 そう言ってギルドのドアノブに手をかけて扉を少し開けると、中から頭に響くような怒号が聞こえてくる。あぁ……やっぱり……


「……っまえ!ふざけてんのかゴラァア!」

「別に私はふざけてなどいません。ただ皆様と一緒のおもてなしをさせていただいているだけです」


 どうやら冒険者と受付のお姉さんが揉めているようだった。


「ね、ねえキリア。あれって大丈夫なの…?」

「大丈夫じゃないね。……フリスア。ユキのことよろしく」

「ピィ」〈はいはい〉


 フリスアがユキの肩に乗り移ったことを確認して、事情を聞くために近くにいたお姉さんに声をかける。


「ねえ、お姉さん」

「あら、こんなところにどうしたの?今はちょっと騒がしいから用事があるならあとでもう一度来た方がいいわよ」

「何かあったんですか?」


 何の知らない風を装って聞き出そうとすると、お姉さんはすぐに答えてくれた。


「今あそこで受付の人に突っかかってるアルヴェンっていう奴がね、依頼に『報酬と危険が割に合わなさ過ぎる!』ってケチをつけててね…別に報酬額も悪くはないと思うし、危険があるわけでもないと思うのだけれど」

「そうだったんですか…」

「だから早く帰りなさい。ここに長くいれば巻き込まれるわ」


 お姉さんが心配してくれるが、私は帰る気などもちろんない。


「あれ、じゃあギルドマスターは?」

「今外出中なんですって」

「あぁ…」


 なら、今解決しても問題ないかな。


「ありがとうございます、お姉さん。ちょっと黙らせてきます」

「えぇ。いってらっし…って、ちょっとぉ?!」


 お姉さんが後ろで叫ぶのを無視して、騒ぐ冒険者のもとに行く。


「すいません、おじさん。後ろが詰まっているので話が長くなるなら少し譲って頂けませんか?」

「アァ!?なんだガキが!今大事な話してんだ!サッサとどっか行け!」


 冒険者の声を無視してカウンターにあった依頼書を覗き込む。


『レッドボア討伐依頼 討伐内容:魔の森にいるレッドボアを三匹討伐 討伐報酬:銀貨3枚 』


 お姉さんの言うとうり、中々悪くない。銀貨3枚は前世でいうところの3000円に匹敵するくらいだ。レッドボアも駆け出しの冒険者には辛いだろうけど、Cランクもあればすぐにでも終わらせられるはずだ。


「へぇ〜。結構いい依頼じゃないですか。どこが不満なんですか?」

「!?ってめ、このガキがぁああ!」

「!キリアッ!危ない!」


 低い沸点に達したのか、冒険者が殴りかかってくる。いや、早くない?


「ねえ、お姉さん。この依頼受けてもいいですか?」

「……………え、え?」


 誰もが当たると思った冒険者の攻撃は、私の後ろ手により、何もなかったかのように止められる。


「っは!?お前、何をした!?」

「はい。お姉さん。これで依頼は受け取れた?」

「……は、はい。」


 冒険者の声を無視して、依頼を受けていると、止めていた冒険者の手が抜け出そうともがく。


「っぬけっ、ねぇ…こうなったら……」

「ひぃっ……!」


 後ろでスラリと剣を抜く音がする。


「はっ!これで切ればいいだけだ!」

「…………」

「キリアァッ!!」


 後ろでユキが私の名前を叫ぶ。おそらく、もう切れてしまう位の近さなんだろう。


「はぁ………もう、うるさいよ」

「え、あ、あ、アァァァアッツツ!!」


 ポキッと、軽い音を立てて冒険者の手があらぬ方向に向く。


「だから、うるさいって言ってるでしょ?さっさと黙って」

「……あ、あ、あ…」


 持っていた手を放って、落ちていた冒険者の剣を拾う。


「………や、やめてくれ……悪かった……俺が悪かったから………」

「やだよ。子供相手に殴りかかろうとして、この剣で私の手を切り落とそうとしたんだろう?」

「……あ、あ、あ、………」


 皆が絶句していた。冒険者を止めようとしていたお姉さんや、私の名前を呼んでいたユキまでも。言葉が出ず、その場にただ、立ち尽くしていただけだった。


「貴方はもう子供じゃないんだ。立派な大人なんだからやり返されても…文句なんて言えないよね?」

「ひぃっ……た、助けてくれぇ…」

「誰も助けてなんてくれないよ?周りに散々迷惑かけたんだから。それなのに助けを求めるなんて。とんだ虫のいい話だね…!」


 私が冒険者の手に剣を振り下ろそうとした時、ギルド内に威厳のある声が響く。


「何の騒ぎだ!」

「ん?あ、ギルマスおかえりー」


 開かれた扉の中央にいたのはこのギルドをまとめる唯一の人間。ギルドマスターだった。静まりかえったギルド内に私の気の抜けた声だけが響く。

 事情を察したらしいギルマスが深く溜息を吐くと、周りの冒険者に声をかける。


「何があった」

「は、はい。王都からの冒険者、アルヴェンという者が、レッドボア討伐の依頼にケチをつけていて、ギルドが騒がしくなっていたところにこの少女が来て…」


 さっきのお姉さんがギルマスに事情を説明してくれている間に、私は魔法で、気絶してしまった冒険者の折れたてを治して一応拘束する。


「少女がこの依頼を受けたいと、突っかかってきたアルヴェンを無視して依頼を受け取ったとき、アルヴェンが少女に殴りかかろうとしましたが、彼女がそれを片手で止めて、アルヴェンがその手から逃れようと彼女の手を切り落とそうとしたら、彼女がアルヴェンの手を折りました」

「…………それで?」

「やり返されても文句なんて言えないだろうと、アルヴェンの持っていた剣を使ってアルヴェンの手を切り落とそうとしたところ、ギルドマスターがいらっしゃいました」


 お姉さんが出来事を全て話し終えると、ギルマスが私の方にコツコツと足音を立てながら歩み寄ってくる。


「キリア」

「なーに?ギルマス」

「何も壊したり、アルヴェンの体を傷つけるようなことはしなかったか?」


 物は壊していないけど、冒険者の手は折ったからな…正直に話しておかないとギルマス怒るから、ちゃんと話そう。


「壊してはないけど、冒険者の手なら折ったよ?あ、でも冒険者の心とかプライドは壊れちゃってるかも…」

「………そうか。なら良い。止めてくれてありがとうな」

「いいのいいの。そのかわり、後で素材買い取るのと、ジュース奢ってくれるの忘れないでよ?」

「ああ、少し部屋で待っていてくれ」

「はーい。…ユキ、いこ?」


 許しを貰い、後の約束をとりつけて、少し遠くで棒立ちしていたユキに声をかける。


「っ!……う、うん…」


 ユキが、さっきの出来事に怯えるように肩をびくりと震わせ、恐る恐る返事を返してくれる。こうされると分かっていても、少し胸が痛む。


「ピィ……」〈………キリア。これ以上、ユキは巻き込んじゃダメだ。今すぐ帰らせて……!〉

「………」


 フリスアがこう言うのも分かる。流石に10歳にあの光景は見ればトラウマ物だし、何とかごまかすのも無理がある。となれば早いところに親の元に返した方がいいだろう。


「……帰りたく、ない」

「………え?」


 ………帰りたくない?後ろから聞こえてきた声に思わず声が漏れる。


「……ユキ?」


 何か変な感じがする。ユキに手を伸ばすと、その手をユキがバシッと払い除けてギルドの出口に走って行ってしまう。


「っ!待ってユキ!」

「ピィッ!」〈キリアはギルマスに用事があるんでしょ!僕が行くから大丈夫!〉


 ユキを追いかけようとするとフリスアが肩から飛び立ち、代わりにユキを追いかけてくれる。


「あっ!……」


 気づけばもう2人の姿は見えない。さっき振り払われた手を押さえて1人ほの暗い廊下にたたずむ。


「…何なんだったんだろう」


 いくら考えても、答えは出てこない。諦めて踵を返し、ギルマスの部屋に向かう。


(………?手が痛い。いつもはこんなことじゃ痛くなんてならないのに)

読んでくださりありがとうございました!

人の手はそう簡単に折れないと思うんだけど…そう思っても正常です。キリアちゃんが規格外なだけです。


六話目もまた遅れてしまうかもしれませんがよろしくお願いします。

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