不思議な少年との出会い -キリア目線-
二話目投稿です!
今回は、あらすじの【不思議な少年】が登場します!
それでは、どうぞごゆっくり!
静かな森の中、木々が揺れる音だけが聞こえてくる。そんな中、私は1人紅茶を飲みながら物思いにふけっていた。
(あれからもう十年もたったのか‥)
人は、平和だと時の流れが早く感じるらしい。
生まれ変わって、霧樹瑠逢改め、キリア・アルフレアです。
今の私の姿は、瑠逢の紫色の髪と、エラリアドの王家だけに現れるというエメラルドのような緑色の瞳を受け継いだ姿で、治ることのない大きなアホ毛が特徴です。
そしてここは、エラリアド王国の北にある森です。私の体の前の持ち主が捨てられていた森です。
私に人間の家族と言える人はいないけれど、ペットで、白銀の毛に紅い瞳の犬(?)のフェルアと、白い耳と、黒い尻尾をした、紫色の瞳が特徴的な猫のキリルと、最後に、淡い水色の羽毛に、私と同じ色の緑色の瞳を持つ鳥、フリスアがいます。
え、ルアナはどうしたのかって?ルアナは、この世界の神なので忙しくて絶賛別居中です。
なので、ルアナには悪いけど、ルアナよりもペット3匹の方が家族っていう感じがします。
今は初めて力を使った時にできた世界樹をツリーハウスに改造して、そこに住んでいます。
七階建てで、ペットの部屋や、客室(ほとんど使ったことないけど)、更には大浴場や娯楽施設まで完備している。広大な庭もついていて、周りは年中咲く桜で囲まれており、家の正面には川も流れています。
ツリーハウスの木には、ミアとルアナを象徴する華、天華と刻華、月華と幻華が咲いていて、これは、最初にミアとルアナが遊びに来たときに咲かせていった華だ。
ミアの華は日中に、ルアナの華は夜に咲いている。この辺りも司るものが関係しているのだろうか…
食事は、森で狩りをしたり、庭の畑で取れた野菜を使って、簡単なものを作っています。
たまに森から出て、小さな街で買い物をしたり、冒険者ギルドに素材を売って受付のお姉さんにおまけを貰ったりして、幸せを実感できるような生活をしています。
ある日、森の奥にしかない木の実を取っていると、近くの茂みからガサガサと音がする。何だろうと思い、様子を伺っていると、深い青色の髪と翡翠色の瞳をした少年が、茂みからひょこっと顔を出した。
「…あなた、誰?」
「…………」
少年は何も答えずに、ただこちらを見て呆然としている。聞こえていないのだろうか。
「あなた、誰?」
すると、少年は驚いたかのように声を上ずらせながら私の質問に答える。
「!お、俺は、ユキ。君は?」
「私はキリア。この森に住んでるの。君はどうしてこの森に来たの?」
「………」
ユキはサッと目をそらして何も言わない。言いたくないことなのだろうか。
「まぁいいや。とりあえず、家に来る?」
「い、いや、そんな。悪いよ…」
「でも、ここまで来て疲れているでしょう?それに、そんなボロボロになった服で街まで帰れるの?この辺りは昼でもAランク級の魔物も多いし‥」
私が『Aランク級の魔物』というワードを発した瞬間、ユキの顔がサーッと青ざめていく。
「家に行かせていただきます…」
「うん。わかった」
ささっと木の実を取った後、ユキを連れて家のある場所まで歩く。歩いている途中にユキが色々と話してくれた。
「ねえ、キリア」
「なぁに?」
「キリアは何でこの森に住んでるんだ?」
「うーん…私は生まれた時からここに住んでいたからなぁー」
まあ、実際は王女様の体が捨てられていたんだけど…
「そっかぁー、森に住んでて大変じゃないのか?」
「そんなに大変じゃないよ?意外と便利だし。ユキはどこに住んでいるの?」
「俺は…王都に住んでるんだ。」
王都に住んでいる人が何故この森に‥
「そう。王都からここまで遠かったでしょう?」
「ああ、まあ、3日くらいかな…」
「王都って意外と遠いんだね…私は森からほとんど出ないから王都に一回行ってみたいなー」
エラリアドの王都は国の中心にあり、最北端の公爵領を除いてこの街が一番遠く、近くにこの森があることから冒険者以外の人は滅多に来ない。
「いや、王都には行かない方がいいかもな。あそこは治安の差が激しいし、それに…」
「それに?」
「…いや、何でもない。」
「ふーん…あ、ついたよ」
着いたところは、先程と同じく木々の広がるただの森。
「ここなのか?俺にはさっきと同じような景色にしか見えないんだが…」
「ちょっと待ってて。…おいでフリスア。」
私が名前を呼ぶと、空から一羽の青い鳥がやってる。フリスアが私の肩に乗ると、甘えるように頬擦りをしてくる。かわいい。
そして、私とフリスアのやり取りを見てユキが口をあんぐりと開けて固まっていた。
「ふふっ……あれ、ユキどうしたの?」
「ピィッ」〈どうしたの?〉
「…キ、キリア。その鳥…」
ユキがプルプルと震えながらフリスアを指差す。
「ん?フリスアがどうかしたの?」
「神獣様じゃないか…!どうしてここに!?」
「…神、獣?」
神獣ってあの神に仕えている眷属のこと?え、その鳥ってまさか…
「……フリスア、神獣だったの…?」
「ピィッ」〈そうだけど?キリア気付いてなかったの?〉
おおぅ。まさか気付いていなかったの私だけ?ということはまさかフェルアとキリルも……
「ピィッ」〈そう。あの2人も神獣。ちなみに僕たち三人ともキリアの眷属だよ。…もしかして、これも知らなかった?〉
「し、知らないよ…」
知ってる訳ないでしょ!?誰が森で拾った動物を神獣だって思うわけ!?
「な、なんで神獣様がここに…というか、なんでキリアに懐いているの…?」
そんなの私が聞きたいよ!
「ピィッ」〈そんな事より、そこの子も結界に入れるんでしょ?早く休ませてあげなきゃ〉
「そ、そうだった…『結界解除』」
サァーっと私の横を冷たい風が流れていく。すると、私の目の前に巨大な魔法陣が現れ、そこに手をかざすと目の前の森が砂が崩れるようにして消えてゆく。
「!?何これ‥この森にこんなものがあったのか…」
消えた森の奥から現れたのは、巨大な桜に囲まれた私の家、もとい世界樹だった。
「ようこそ私の家へ」
私は、ユキの前に立って彼を歓迎する。
「ユキ」
読んでくださりありがとうございました!
三話目もこれから投稿していくので、読んで頂けると嬉しいです!