少女が神になるまで -瑠逢目線-
初作品です!
初めてなので何かと変なところがあるかもしれないですが、その時は、感想など頂けると嬉しいです!
それでは、ごゆっくりどうぞ!
「バイバイ」
そう言いながら、あの子は私を突き落とす。
「―っ!」
ふわりと体が浮かび、落ちていく。今までの人生、良い事なんてひとつも無かった。だから、終わらせてくれたあの子に感謝を込めてひとつだけ。
「ありがとう」
(あぁ…痛いな。どうせこんな人生なら、次はもっとマシな人生を送りたいや)
〈……さい…なさい。……起きなさい〉
(何か、聞こえる?…これは、何?)
「起きなさい!」
「っ!」
目開けると、そこは見たこともないくらい大きな金色の華の上で、目の前には顔立ちの整った美しい女性が居た。
「もう、折角連れてきたのに起きるの遅いわね」
「え?」
「まぁ良いわ。初めましてと言うべきかしら?私はミアティス。この世界の管理人であり、貴女達で言うところの女神よ。貴女は?」
め、女神だって?まさか、そんな御伽話みたいなことあるはず…
「わ、私は、霧樹瑠逢と言います。あの…ここって死後の世界ですか?」
「あら、あっさり自分が死んだって認めるのね」
「じゃあ…」
「そうよ。ここは死後の世界。と言っても、生まれ変わるはずだった貴女の魂を私が拾ってきたのだけれどね。」
私はあの時確かに死んだはず…それならここは、本当に死後の世界で、あの女性は女神なのか…
ふと気付くと、女神様が私の顔を睨むように覗き込んでくる。
「あ、あのー。どうしましたか?」
「…連れてきた私が言うのもなんだけど、貴女本当に人間なの?」
「え?」
「だって、貴女は人を超える力を持ちながら、今まで一度も暴走させなかったでしょう?」
力?私に力などない。いつも体育は平均しか取れなかったし、頭だって平均より少し上をキープできるくらいだ。
「まぁ、私が選んだ特別な魂だもの。当然よね」
特別な魂…何のことだろうか。
「でも、これじゃああっちの世界で人として転生した時に生物兵器になりかねないわね…」
「…あっちの世界?」
「そうよ。私には双子の妹がいて、その妹が創った世界に転生してもらおうと思ってたんだけど…」
女神様にも双子とかいるんだ…
「何か問題が?」
「ええ。貴女の場合、魔力っていう力が〈量〉、〈質〉、それを受け取る〈器〉の大きさが今まで耐えれていたのが不思議な位の大きさなのよー」
「え、え?私に?」
私にそんな力があるとは思わなかった…というか、そんな力、本の中にしか無いと思っていたのに。
「そう。貴女に。もし人間の体で転生したら体が耐えられなくて死んじゃうことだってあったし、貴女が無作為に力を振るっていれば、国の一つや二つ簡単に消し飛んでいたかもしれないもの」
ゾワッと肌が粟立つ感覚がする。額から冷や汗がツーっと流れ落ちてくる。何故震えているのかは分からない。それでも、何かが【壊してはいけない】と訴えかけて来る。
「…わ、私にそんな力が…」
「困ったわね…とりあえず、あの子も呼びましょうか」
「あの子って?」
「妹」
ミアティス様が宙に手をかざすと、視界を強い光が襲う。ギュッと目を瞑り、少しして恐る恐る目を開けるとそこには、淡い紫色のロングヘアのミアティス様に瓜二つの顔立ちの女性がいた。
「こんにちは、瑠逢ちゃん。いや、初めましてかな?私はルアナ。そこのミアティスの双子の妹だよ」
「こ、こんにちは」
「こら、ルナ。そこっていうんじゃない」
そう言ってミアティス様がルアナ様の頭をペシッと叩く。そこにルアナ様が叩かれた辺りを押さえてキッとミアティス様を睨みつける。
「ちょっとミィー!痛いじゃないの!何で叩くのよ!」
「それはルナの口が悪いのがいけないんでしょう?それと、バレてるわよ」
ミアティス様が私を指差すと、それに合わせてルアナ様がクルッと私に振り返ると顔がサァーっと青ざめていく。
「…え、えーっと…これは…」
「ほら、早くその変な作り笑顔をやめなさい」
「……あぁーもぅ!折角最初はいい印象にしたかったのにぃ!」
突然口調が変わり、ピシッとしていた姿勢が少し崩れている。
「こ…これは…?」
「安心して、瑠逢。これがルナの本当の姿よ。さて、ルナ、この子はどうすればいい?」
「うーん…人間だとこの力じゃ耐えられないし…あ!良いこと思いついた!」
(…私の次の人生はもう、人外確定かな…)
「私の養子になって、神になれば良いじゃない!」
「え!?」
「あぁ、それ良いわね。じゃあそれにしましょう」
(え、え、人になれなかったら神になるしか選択肢ないの?他の種族っていう選択肢はないの?)
「あ、あの!何で神様なんですか?」
「なんでっていったら…瑠逢ちゃんがかわいかったから?」
(…何故かはぐらかされた気がする…)
「それだけじゃないんだけどね。瑠逢、貴女がもし人間のまま転生して、無事に産まれたら生物兵器として扱われるかもしれないって言ったわよね?」
「う、うん」
「だったら、ルナの養子になって、神として産まれてきた方が利用はしづらいし、その大き過ぎる力は、神の体なら受け入れられるもの」
(やっぱり人として産まれて来るのは無理なのかな…)
すると、私の考えを読んだのか、ルアナ様が手をポンと叩いて口を開く。
「人として生きたいならさ、魂だけ神になれば良いんじゃない?できるよね、ミィー?」
「それはっ!…できるけど…」
(そ、そんな方法もあるんだ…ルアナ様、ありがとうございます)
少し考えてから、諦めたようにミアティス様が溜息をつく。
「…はぁ。分かったわよ。でも、魂を神にするって事は、司るものを決めなきゃいけないわよ?どうするの?」
「司るもの?」
「そう。私は月と夢を、ミィーは太陽と刻を司っているの。」
ミアティス様が太陽、ルアナ様が月。双子だと対のものを司るのかな…
「それなら、私は何を司るんでしょうか…」
「貴女の場合だと……【自然】かしら?」
「自然、ですか…」
自然というと、漠然とした印象しかない。こう、海とか山とか、そう言ったものを。
「いま、フェルナスは自然神がいなくて精霊王に頼りきりなのよ。だから、その負担を少しでも減らしてあげたくて…」
【精霊王】そんな存在もフェルナスにはいるのか…
「だから、お願い!人助けをすると思って」
「よ、よく分かりませんが、分かりました。そ、その。自然ってどこまでが自然なんですか?」
流石に力も分からなくて使うのは怖い。
「んー…基本的には、神自身の定義だけど今回は例外だから、人や、他の生き物が手を加えていないものっていうところかしら…」
「手を加えたもの…?」
「例えば、コンクリートとか、化学物質とかね。素材の一つ一つには干渉できるんだけど、あそこまで色々なものが入っていたり、性質が変わっていると、神の干渉できる領域から出ちゃうのよ」
「へぇー、そうなんですね。」
神様といっても、なんでもできるわけではないらしい。
「それでも、十分便利な力よ。まぁ力の分、管理する領域も増えて大変だけど…貴女なら、大丈夫でしょう」
「あ、すみません。一つだけお願いがあるのですが…」
正直、これだけしてもらった身で、厚かましいとは思っている。それでも―
「…なんでもいいんです。生まれ変わった時に私に弱さと呼べるものが欲しいんです。」
これは、ただの自己満足だ。私自身が、【過去の私】を忘れないための、【未来の私】への戒め。弱くて何もできなかった【私自身】をいつか変えたいという願い。
「…分かったわ。それなら、耐性を下げましょう。言っておくけれど、耐性は自然とつくものよ。それに、つけようと思えばすぐにつけられるわ。…悪く思わないでね」
「ありがとうございます。ミアティスさ…ううん。ミア。ありがとう!」
「!…どういたしまして」
私が呼び方を変えると、ミアは驚いたように一瞬目を丸くすると、次いでどこか懐かしむように、慈しむように、嬉しそうな笑顔を向けてくれる。
(なんだか…胸の辺りがポカポカする…これはなんだろう…)
「あ、そういえば聞きたいんだけど、私がフェルナスに行った時、何処で生まれるの?」
「それなんだけどね、貴女はある国の捨てられた王女の身体に入ってもらうわ」
「…捨てられた王女様?」
意外と重い立場の人じゃないか。
「ええ。その子は、エラリアドって言う国の、第一王女になる筈だった赤ん坊よ。国の事情があって、森に捨てられていたところをルアナが拾ったの。そして、その子の魂に了承を得てその子の存在を消したわ。勿論、貴女の魂を入れることも。だから今、あの赤ん坊はただの女の子。そして、魂のないただの器。そこに入れば、貴女の人生が始まるわ」
「…うん」
王家の血を引く女の子。それはきっと大変で、辛い人生になるだろう。それでも、私は魂になった子の分まで生き続けなければいけないのだ。
「…それじゃあ、もう時間も無いし早速始めるわ」
「うん。お願い、ミア、ルアナ」
「『汝は生まれ変わり、神となる。汝が司るものは【自然】。汝の真名は…」
目の前が暖かい光に包まれ、だんだんと視界がぼやけ、意識が薄れてゆく。でも、最後に聞こえた2人の声だけは、何故か耳にはっきりと残っている。
「「『【自然神】キリア・アルフレア』」」
読んでくださり、ありがとうございました!これからもぼちぼち投稿していくので、是非読んでください!