馬車を助けに初戦闘
馬車が出発したのは昼過ぎだったが、次の町へは夕方頃には着くらしい。
俺は荷台のなかで冒険者の二人と話し込んでいた。
「俺も冒険者を目指そうと思ってさ、ちょっと聞きたいんだけど。」
「おっ、ならオレたちが先輩ってことだな!何でもきいてくれよ。」
「じゃあ遠慮なく…まずギルドってどんな感じなんだ?」
「どんな感じって…なんだ?全部説明した方がいいか?」
「できればお願いしたいな。」
「ねぇ、ソーマってどこからきたの?」
「いや、まあ遠いところから来ててさ、あんまその辺の事情を知らないんだ。」
「ふーん。まあ教えてあげるわ。」
アートリスのギルドに関わらずギルドの仕組みはどこも同じだそうだ。
王都か首都に本部を置き、それぞれの町に支店があるらしい。
ギルドの冒険者にはそれぞれランクがあり、A,B,C.D.E.F、G、Hなんかまであるそうだ。またギルドから特別実力を認められているものにはSランクというものあるらしい。
なんかを多いけど…細かい実力で分けるには必要なんだとか。
パーティーを組んだときはランクの平均で決められるそうだ。
ちなみにこの二人はDランクだ。
ランクを上げるには依頼をクリアしてポイントが貯まると試験なんかをするらしい。その際には上位のランクの人が試験官を務める。
「まあ簡単に言えばこんなところだな。」
「大体わかったよ。ありがとう。」
「ちなみになんの武器でいくんだ?それに属性はなんだ?」
…はっ!そういやこっちに来てからどんな能力があるとか確認してなかったー。
「まあ…片手剣かな。属性はまだしらべて無いんだわ。」
この前買ったこの剣も使ったこと無いけど。
「なら今度ギルドでしらべてもらえば?」
「そうだな。それでダンとエリーの武器と属性は?」
「両手剣だ。火属性と土属性持ちだが、俺は基本的には剣の実力でここまで上がってきたと思ってるけどな。」
「私はレイピアよ、どちらかと言えば魔法主体だけどね。適性は水と風属性でね、私たちに二人みたいに属性二つ持ちは結構珍しいんだから。それに必死に特訓もしたのよ?」
属性は、基本的に一つなんだよな?
この二人実はすごいのか…まだDランクなのは年齢的にだよな。
きっと、これから実力を伸ばすにちがいない。
《ヒヒーン》
馬車が急停止をする。すると
「前にいる馬車が魔物に襲われている!!」
その声を聞き、冒険者の二人がすぐに外へ出る。
「おい!あの馬車護衛用じゃないか?」
「もしかして用人でも乗ってるのかしら!?」
俺も慌てて降り、そちらを見てみる。
確かに豪華な作りだな…
ってそれより早く助けないと!
俺は冒険者の二人と一緒に走っていた。
「ソーマも来たのか、戦闘したことあんのか?」
「まあ、きっと大丈夫だ。」
いや、全く大丈夫ではない。
まず、剣も振ったことないよー…
馬車に近づくと戦況がよく分かる、
ゴブリン?のような集団が30ほどだろうか10人ほどの騎士が応戦しているみたいだ。
「不味いな、ゴブリンメイジもいるぞ」
騎士たちは一人で複数を相手にし、飛んでくる魔法によってかなり押されている。
もしかして後ろの馬車を守るために魔法を受けているのか!
次々に倒れていく騎士たち、そして俺たちは現場へ到着する。
「加勢にきたっ!」
「それは助かる!コブリンの相手を頼む!」
ダンとエリーはすぐにゴブリンの相手をする。
『GYAGYA!』
「ちっ!ウラッ!」
ダンは二匹同時に飛んできたゴブリンの短剣を受け弾き、腹に切り込む。
一方のエリーは複数のゴブリンメイジの攻撃を身軽に交わしながら魔法を唱えている。
「GUGYA!」「GYAOS!」「GYAA!」
「ふっ、はっ、そいっ!エアーカッター!」
流石高ランクだな、余裕そうだ。
すると、こちらにもゴブリンが流れてくる。
俺は急いで剣を抜く。
「GyaO!」
ゴブリンが俺の首を狙って飛んだところすかさず切り返す。
さらに左右からゴブリンが挟み込んでくる。
俺は引き付けてからゴブリンが飛び込む瞬間をまつ。
いまだっ!
俺は素早く前に飛びながらすぐに振り向く。
ゴブリンたちはとんだ勢いでお互いにぶつかる。
そこで俺はすかさず剣を振り抜く。
ゴブリン二匹の首を一気に跳ねた。
ふう、運動神経が良くて助かった…と思っていたのもつかの間、
「GYAGYA!」
背後からゴブリンメイジの詠唱が聞こえたのだ。
不味いこの距離じゃ避けられない。
どう対抗すれば…いや待てよ、魔法の使い方がわかる!
「ファイア!」
ゴブリンが魔法を発動するよりも早く出すことができた。
やった、俺も魔法使えたー。とか思っていると。
ザンッ
どうやら最後の一匹が片付いたみたいだなぁ。
俺たちと騎士は一旦馬車の付近に集まる。
どうやら残った騎士は半分の5人のようだ。
「本当にありがとう。」
「いやいや困った時はお互い様だろ。」
「ええ、そうね。」
「それにしてもソーマちゃんと戦えてるじゃねーか。」
「それに魔法も使ってなかったかしら!?」
…しかもかなりの発動速度ね。
「え、うん、使えたっぽいわ。」
「こりゃ将来有望だな、まあ歳上だけど」
いきなり魔法を使えるようになったぞ?
ゴブリンでも倒したからか?
練習すらしてないんだがな…
すると、馬車の中から美少女が降りてくる。
出てきたのはドレスを着たお姫様のような姿であった。
「第二王女様、この度は守りきれず申し訳ありません。」
「確かに犠牲は出てしまったけれど、生きているものもいるのだから…」
「はい…」
「そちらの3人が助けてくださったのですね。」
「はい、その通りでございます。」
「私はフローラ・ルナマリアと申します。今回は助力をいただき有難うございます。」
ルナマリアってあの国のお姫様かよ…
「いやいやいいってこと「馬鹿っ、敬語使いなさいよ」
「いえ、いいのですよ。それとお名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
「俺…いや私はダン・トルンです。」
「私はエリー・セキュアと申します。」
「ソーマ・イシカワです。」
「ダンさん、エリーさん、ソーマさん本当にありがとうございます。後にお礼を差し上げたいと思いますので。」
果たして追い出された身である俺にもそんなものあるのだろうかね。
《ドドドン、ドゴォン》
急に地響きが起こる。
『なんだ!?』
「GUOOOooooo!」
まさか他にもまだいたってのか!
奥から出てきたのは先程のゴブリンの5倍の体調はあるであろう個体であった。
「騎士の人たち、姫様をつれて離れろ!俺たちが時間を稼ぐ、あれはソロCランク相当のゴブリンキングだろう…」
「しかしそれでは…」
「いいから避難してて、戦闘の巻き添えになるかもしれないし。ソーマもよ!」
「あ、ああわかったよ」
俺と騎士たちは急いで離れる。
後ろからは壮絶な音が聞こえてくる。
《ガキンッ、キンッ、ギイィン》《ブウゥン》《ドォン》
「うわぁぁっ!」「きゃぁぁ!」
振り替えると二人が吹き飛ばされているところだった。
え、嘘だろ。これこっち来てんじゃん?
ゴブリンキングは一目散にこちらへ向かってくる。というより姫に向かって来ているようだ。
「姫には触らせなぅぐぅああっ」
護衛の人はあっけなくやられてしまう。
他の護衛は周りを警戒していたからか少し離れている。
今にも襲いかかろうとするゴブリンキング。
「きゃぁぁ!」
今届くのは俺しかいない。
だが魔法は…いや打ち方が分かる!
俺はありったけの魔力をイメージして、
「うぉぉぉぉ!、ファイア、ファイア、ファイア‥」
ゴブリンキングの顔面にぶちこんでいく。
「GUOOOooooo」
効いてるかはわかんないけど嫌がってるな。
俺はとにかく打ち続ける。
すると、ゴブリンキングは睨みを利かせてこちらに足をむけ、ゆっくりと近づいてくる。
「姫様は早く逃げてっ!」
「はっ、はい!」
くそっ、このままじゃ今度は俺がやられるっ!
何か打開できる策はないのかっ!
せめてもっと時間稼ぎでもしないと!
俺は頭の中で魔法をイメージし、魔力を練る。
よしっ、これならいける!
俺はゴブリンキングを引き付ける。
そして上に剣を振りかぶった瞬間を捉える。
「くらえっ、ファイアアロー!」
隙のある顔に火の矢を打ち込んだ。
矢は見事に相手の目を捉える。
「GUGYAAAaaa!」
ゴブリンキングは目を抑え膝をつき、怒りの形相を浮かべる。
だがすぐに起き上がろうとしたところで、
「うぉぉぉぉっ!」
ゴブリンキングの後ろからオーラを纏ったダンが魔力を纏わせた剣を構えて走り込んでくる。
「フレイムスラァッシュ!」
ダンは力強く切りつけゴブリンキングの踵を焼き切る。
すると、ゴブリンキングは再び体勢を崩し膝をつく。
そしてその後ろから凄まじい魔力を練りながら近づいてくるエリー。
「ダン、ソーマ避けて、特大の打つから。」
「エアリアルインパクト!!」
レイピアの先から放たれる魔法。なんという威力なんだろう。
あのゴブリンキングの腹を貫通する。
腹に穴の空いたゴブリンキングはやがて死んだ。