異星人との邂逅
「それにしても、見れば見る程地球にそっくりだな、若干違う部分もあるが」
探査に行けと言われたから来たものの、この星は地球とそっくりだ。大気の成分も、若干未知の成分が含まれている点を除けば地球そのもの。しかもその未知の成分も人類には無害であることが証明済み。だが似ていない部分もある。例えば、見た事のない木の実が生えていたりする。例を挙げるとするなら、緑色になった葡萄の実の部分をミニサイズの林檎にした様な奴なんかを良く見かける。食べられるのかは知らん。だがこの調子ならこの星を第二の地球にする事は容易いだろう。
「皆、準備はいいか」
「一番、準備完了」
「二番、準備完了」
「三番、準備完了」
こいつらは俺の隊の隊員達だ。全員先祖の国籍はバラバラ、故に顔立ちは様々だし生い立ちも様々だ。そして人数だが、隊員は俺含め全員で四人だけで、名前は一番から王睿、アダム・テイラー、クリシュナ・アナンダ。俺は一応上司なのに時々敬語を使ってこない事がある所は欠点だが、基本的には優秀な奴らだ。
「よし、それじゃあ各自に課せられた任務を遂行しようか。皆、任務の内容は覚えているな」
「「勿論」」
「じゃあ各自出発しようか。任務が終わりしだい各自で艦に戻るんだぞ」
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「出発してから暫く経ったものの、今の所成果無しか」
俺に課せられた任務は現地人との接触と現地人の声のサンプルの採取だ。だが今の所現地人は見つからない。まあそれはそれで人類にとっては好都合なんだがな。人類はもう疲弊仕切っている。上の奴らは安住の地を手に入れる為には侵略をも辞さないだろう。現地人がいなければ、人類の惑星にしたとしても罪悪感が無くて済むしな。
「それにしても、さっきまで霧なんか無かったのに…」
急に霧が出てきやがった。小型船に乗っているから問題はないのだが、妙な点がある。それは、さっきまで全くと言っていいほど霧が出る様子など無かったからだ。決して湿気が高い訳では無かった。むしろ、砂漠とまではいかないが結構乾いていた位だ。やはり地球に似ているとはいえ違う星だからだろうか…。
「*******!***!**」
「ん?」
今の声?は何だ?明らかに俺の知らない言語だったが…。現地人の可能性が高い。声のサンプルを取りに行くとするか。もし出来るのなら捕獲もしよう。
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「ここら辺の筈なのだが…」
声のした場所を特定し来てみたのだが、見つからない。ちなみに一応襲われても迎撃出来るように重荷にならない程度に船から武器を持って来てはいる。
「**!****!」
「!」
銃を構えたのはいいものの…どっからどう見ても目の前にいるのは人間じゃないか。よく分からんが顔は完全に白人だ。しかも服装は幼い頃読んだ古代の文献に書いてあったキリスト教とかいう宗教の信者が着ていた服装と似ていると来た。しかしここまで似てるとなると不気味だな。異星人に地球の文化があるとは到底信じられないがな。
「***?**」
(何を言ってるのかさっぱりだが、取り敢えずは声のサンプルを取るとするか)
「*****!****」
(よし、サンプルを取る事は出来た。あとはこいつの捕獲か。取り敢えずは麻酔銃で眠らせてみるか)
「****!*****!」
(目の前の奴に銃を向け、撃つ。たったそれだけでいい。目の前のこいつは異星人だ。容赦をする必要は無い。少しだけ眠ってろ。)
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「やっぱりお前らの方が早く任務を終わらせてたか…毎回思うけどお前ら任務終わらせるの早いよな」
信者風の宇宙人を捕獲し、船員に声のサンプルとあの異星人を引き渡して探査隊の部屋に戻ると案の定部下の方が早く任務を終わらせていた。こいつらは任務を完了するのが早すぎる。
「隊長が遅いだけだと思います」
こいつは王睿、素人的な言い方で名前を呼ぶならワン・ルイとなる。部下の中でも一番任務を終わらせるのが早く、一番優秀な奴だ。それに、ちゃんと敬語を欠かさない律儀な奴でもある。
「そうか?まあいい。それで、皆の成果を聞かせて貰おう。まずは一番である睿からだな。確かお前の任務は大気に含まれる未知の気体を採取してくる事だったよな。未知の気体の存在理由について何か分かったのか?」
「それがですね。成分分析をしてもらったのですが依然無害という事しか分からないそうです」
「そうか。では次、二番のアダム。お前の任務は土と未知の木の実の採取だよな。どうだった?」
「土に関しては地球の土の成分とほぼ一緒という結果で、木の実につては、新種のような感じで決して不思議な物ではないらしいよ」
「ほぼ、とは?」
「その言葉の通りでしょ。少し地球の土とは違うのが入ってたってだけ。毒では無いから許容範囲内らしいよ」
なるほど。ここも一応異星だからな。土の成分が少し違った所で、何ら不思議ではないか。
「よし、では最後だな。三番のクリシュナ。お前の任務は文明があるかどうかの調査だったな。文明、または文明の痕跡はあったのか?」
「一応文明はあった。だが、あまり発達しているとは言い難い」
「例えば、どんな?」
「文献で見た煉瓦のような物で建てられた建物があった。他には馬のような生命体に乗っている個体も発見した。一応村のようなコミュニティーはあるらしい」
「よく分かった。皆ご苦労だったな。今日はもう休んでおけ」
「「了解」」
さてと、あとは俺のだけだな。あと少しで異星人の生体検査とあいつらの言葉の解読が終わるだろう。
「巽仁様、あの異星人の生体検査と言葉の解読が終わりました」
「何?で、結果は?」
「異星人の生体検査の結果としては、まず、基本的には我々人間と同じです。」
「基本的には?」
「そう、基本的にはです。人間でいう所の心臓の部分が結晶のような形になっているのです。その結晶のような心臓で血液の循環をしているのです。」
「なんだそれは。興味深いな…」
「次に異星人の言語ですが、解読が終了したのでその解読情報をあなた方軍人が耳に付けている翻訳機にダウンロードすれば、この星の異星人が何を言っているのか理解出来るようになり、喋った言葉が任意で異星人の言語に自動変換されるでしょう。これでこの星の異星人と会話が出来るようになります」
「おし、じゃあ早速なんだが、俺が捕まえてきた異星人と対面させてくれないか?」
「別に危険な生物では無いのでいいのですが、どうしてですか?」
「単純な興味だよ。どんな文明があってどんな進化を辿ってきたのか、直接異星人に聞いた方がいいだろう?」
「それはそうですね。では、付いてきて下さい。」
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俺が連れてこられたのは面会室だ。通常は罪を犯した人と親族が話し合う場所なのだが、今回は特別だ。
「じゃあ早速話を聞かせて貰うとするかな。異星人」
感想宜しくお願いします。