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水都異能奇譚  作者: 右川史也
第一章 冬鷹
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第3話

「不甲斐ないとは言わぬ。個々の鍛錬が足らぬとも思わぬ。だが私を討つ為の努力は決定的に欠けていたな」


 佐也加は隊員たちに向かい凛と言い放った。


「まず、後方で詠唱をしていた者たち。この者たちの内、数名は護衛されていなかったな。後方からの遠隔魔術は盾となる者を用意しろ」


〈異能〉は、〈第一(だいいち)異能(いのう)分類(ぶんるい)〉と言われる六つの種類に分ける事ができる。


〈魔術〉〈超能力〉〈操氣術(そうきじゅつ)〉〈異能具(いのうぐ)〉〈借能力(しゃくのうりょく)〉〈特異体質〉――。


〈魔術〉は異能界に()いてポピュラーな異能の一つで、生活のちょっとした事に使う様なものから、街のインフラシステム、戦闘・軍事用のものと実に多種多様なものがある。

 だが簡単なものでも、反対にどんなに複雑な造りをしていても、突き詰めれば、〈コード〉に〈魔素子(まそし)〉を流す事により『現象』が生まれる、という事に変わりはない。


〈コード〉とは〈魔術〉において呪文や手印(しゅいん)、魔法円などの『情報』を指す。


 そして、〈魔素子〉とは〈魔術〉のエネルギーで、多くの場合〈生命子〉――生命力や〈氣〉と呼ばれるものを変換して用いられる。


「〈魔術〉の性質上、多くは『〈コード〉形成』と『〈魔素子〉精製』を行い、『狙い』『放つ』。貴様らがいくら鍛錬を積んだところでこの(ことわり)からは逃れられぬ。対して軍用配備異能具〈ERize(イライズ)-47〉を始めとした〈射氣銃(しゃきじゅう)〉は、(あらかじ)め『弾』となる〈生命子〉を込めておけば『狙い』『撃つ』だけだ。威力・射程・範囲が[A]ランクであろうが、その他の副次的効果が優秀であろうが、判ってしまえば先に攻撃できるのは〈射氣銃〉という事になる。いくら無言詠唱や省略化、高速詠唱に自信があろうとも、術者の位置が分かれば確実に〈魔術〉側が不利なる事を肝に銘じておけ」


 さらには、『盾』役の警護と、遠隔魔術を用いた隊員たちの連携の甘さを指摘する。目の前でその甘さを突かれ倒されたばかりのためか、各員その事を重く受け止めている様子だ。


「さて武本隊員。戦闘中にも関わらずパイルバンカーなる複雑な道具にも運動を阻害する事無く、むしろ威力を増す事ができるように〈氣〉を(まと)わせる貴君(きくん)の〈操氣術〉は実に見事だ。だが、私に軌道を()らされたその瞬間、貴君はその才を抑えるべきだったな。〈氣〉の練りを(あら)くしていれば沢井隊員も貴君の一撃で沈む事はなかったかもしれぬ」


 一回り近く上であろう隊員にも佐也加は平然と言い放つ。

 指摘を受けたベテラン隊員たちも佐也加の言う事が酷く真っ当なのか、ぐうの音もない様子で、真剣に頷き彼女の言葉に聞き入っていた。


「それと、新人の中には咄嗟に操氣術や超能力を使う・(ある)いは使おうとした者が多く見られたな。新人たちに今一度言っておく。軍用配備品の異能具〈パラーレ〉〈ゲイル〉〈金剛(こんごう)〉〈力天甲(りきてんこう)〉は〈魔素子〉で動く。これは操氣術での身体強化の代用のためだ。つまり操氣術に自信がある者は着用する必要はない代物だ」


〈魔素子〉と〈生命子〉――異能界に於いて日常的にも用いられるこの二つのエネルギーは、同時に扱う事が非常に困難とされている。


〈魔術〉は〈魔素子〉――。

〈超能力〉と〈操氣術〉は〈生命子〉――。

 ――と、それぞれ合ったエネルギーが必要とされる。


 故に戦闘に於いて、〈魔術〉を使用している際には、〈操氣術〉での身体強化は望めないと考えるのが基本だ。

 そこで、戦闘時に〈魔術〉を使う者は身体強化系の〈魔術〉や、それに類する〈異能具〉を使用するのが一般的である。

 もちろん帝都北方自警軍では、それらの異能具を隊員全員分用意している。


「〈超能力〉持ちに関しては、〈操氣術〉を鍛えるか、超能力を使わず軍用配備品を活かすか各々決めるが良い。武器に関しては、軍刀〈黒川〉は生命子用と魔素子用のどちらも用意してある。〈ERize-47〉はスイッチ式で切り替える事ができる。迷うようであれば先輩隊員に尋ねるのが良いだろう。もちろん、私に訊いてくれても構わない」


 とは言うが、恐れ多くて誰も訊きに行かないだろう、と冬鷹は思った。

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