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社会神

作者: ぬずち



「はじめまして」


そう僕は挨拶した。なぜなら相手は初めて会う人間だから。

僕はこの時、ああまた驚いた顔が見れた、と喜んでいた。

そうして次に僕はこう言葉を続けた。


「僕は神です。あなたは死にました」


これを言うともっと驚いた顔が見れるんだ。僕は人間の驚いた顔が大好きだ。だって、無防備な顔が見れるのだから。



「詳しく説明をいたしますと、あなたは死にました。死因は……まあなんでも良いでしょう」


なんでも良くないよね!?と驚く顔も僕は大好きだ。


「冗談ですよ、死因は溺死。その時の映像がありますけど見ますか?あ、見ない、了解でーす」


せっかく映像部が作ったのに見ないやつ多いんだよなぁー。


「あ、あと、走馬灯。あれは死ぬ前に見るものですけど、見ます?」


走馬灯くらいなら…と答えたのでタブレットを渡した。あの世でだって現代化は進んでますよ、ええ。


6分52秒くらいのスライドショーの走馬灯は十分すぎるほどクライアントの涙を誘った。

そうして死んだと理解したクライアントは自分はどうすればいいのかを聞いてきた。

もちろん僕はマニュアル通りにこう答えた。


「あなたの魂を再び現世へ送るためにまずはその魂の罪の重さを図ります。ここではなんですので、審判の部屋へ」


審判の部屋、有り体に言えば閻魔大王様の部屋だ。

四半世紀ごとに閻魔大王は変わるが、今回の閻魔大王様はいつもとわけが違う。なにせ顔つきが怖い上に厳しいお叱りが付いて来る。

さて、今回のクライアントの魂の価値はいかほどか。



審判の部屋から出てきたクライアントに話しかける。少しぐったりしているが、まぁわけは聞かないでおくのがここのルールだ。


「あ、終わりました?判決見せてくださいね」


手に持っていた紙をひらりと取るとその結果に驚いた。


「わぁすごい!貴方、ほとんど天国行き決定ですよ!」


えへへと照れるクライアントに良かったですね!と言葉をかける。

そうだ、天国行きの便のチケットに引き換えに行かなくては。




「それではお別れです、また来世で会いましょう」


天国行きの便に乗るクライアントを見送ると先ほどとは打って変わった真剣な表情で僕は最初の部屋へ戻った。

さて、クライアントが天国に着く前に情報をまとめて送らなければ。


こうして僕の1日の仕事が終わる。

死者の魂の輪廻転生の手助けをする会社に勤めている神、いわゆる社会神のお話でした!

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