兄妹
もうすぐ時刻は、深夜に突入する。
しかしルカは相棒で補佐係のシスターカナコとともに、いまだ教会の指導室の執務机にいた。
上等なオーク材で作られた机の上には、秋と桐子には渡していない〈レザークラフト〉幹部の詳細な資料が散らばっている。
「まずったな……やっぱ上からの命令とはいえ、彼女には参加させたくない」
と、シスターカナコが淹れてくれた緑茶に手を伸ばす余裕もなく、ただ固く指を組んでいた。
「しかしルカ。彼女の実力は、新人とはいえ秋くんをパートナーとして迎え入れたいまなら、絶対に戦力に加えるべきですよ」
シスターカナコの、あくまで冷静に分析しているその頭脳と度胸は、ルカも感服する。
自分にも半端な優しさや甘えを切り捨てる、そんな胆力と指導力があればと、考えてもいまは仕方ないと思うが。
「そうは言ってもよ……これは、酷すぎるぜ。まさか」
〈レザークラフト〉幹部の、そのうちのひとり。
写真を見ればまだ若い青年だ。
一見すれば女性にも見えるほど、線が細くて綺麗な顔立ち。繊細そうなその瞳は、青にも似た灰色。外国の血が混じっているのか、髪は多少の白毛が混じっているものの、元は透き通った蜂蜜色。
ルカは深いため息とともに、その幹部の名を目で追った。
「実の兄貴と妹を、対立させるなんて」