名前
「戻ったぞ~」
「早かったですね」
とりあえず買ってきたのは2人分の食糧・少女の服・自分の武器だ
「って馬上槍じゃないですか。よくそんなに軽々持ち運べますね」
「ん?ああ、多分鎧のおかげじゃないかな?」
確かに借りた剣よりは重く感じるが余裕で持てる
生前の物干し竿のほうがよっぽど重く感じる
「鎧ですか・・・その鎧は聖遺物かマジックアイテムなんでしょうか?」
そこらへんどうなん?
「聖遺物ではあるけど物質的なものではないよ。君の鎧は君自身の魂に定着してるんだ。つまり鎧=肉体だね」
ふむ
「自身の魔力で作られた鎧という事ですか。魔力を収束、物質化して武器を作るというのは聞いたことはありますがその規模は初めて見ました」
会話をしていて今更ながらいくつか疑問に気が付いた
「少女は大丈夫なのか?今まで喋ってるのを見たことがないが」
泣き声は聴いてはいるんだが
「緊張から解放されたのかぐっすり眠っているよ。君に感謝していた」
「そうか~怖がってなくてよかった」
なんせ初対面に眼前で人間の頭を破裂させてるし
「あとだな・・・彼女はしばらく君に声を聴かれたくないそうだ。なのでしばらくはそのことを察してほしい」
「どゆこと?」
「過酷な環境のせいか、それとも泣き叫びすぎたせいか喉の炎症が酷くて声が酷いんだ。君に聴かれたくないらしい」
乙女心と言う奴か
-多分恋心じゃない?-
は?
「テウルネス、僕たちはちょっと水浴びをしてくるけどいいかい?」
「ああ、構わない。もうすぐ日が暮れる。私は火を起こしておくよ」
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「恋心ってどういうことだ?」
そういった直後に自身の鎧が消失し裸になってしまう
「水面で自分の体を確認するといいよ」
若干嫌な予感を感じながら水面を覗き込む
「やだ・・・・何この美少女」
「完全に気が付いてなかったんだね、あと美少女みたいになってるけど付いてるものはちゃんと付いてるんだね」
「おおう・・・」
股間には息子がちゃんと付いていた生前よりちっちゃいが
「君の肉体はたぶん15歳くらいじゃないかな?まぁ確実に23位の趣味だね。彼女ショタコンだし」
「転生したらショタ戦士になってしまったってか・・・・なぜお前も脱いでる?」
振り向くとクインリイも服を脱いでいた
「なぜって僕もすっきりしたいからね。大丈夫だよ。天使は無性だからKENZEN」
「俺の息子が反応しちゃうからやめなさい」
「いいよ~君の欲望ならなんだって受け入れる準備は出来てるさ。後ろの二人も期待してるし」
まて
「綺麗・・・」
「(コクコク)」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺の悲鳴と共に2人は逃げて行った
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二人の食事が終わり気まずい空気が流れている
・・・なんてこともなく
「お二人ともとても綺麗な御肢体でした。心が癒されます」
「(コクコク)」
二人にとっては眼福だった模様
「出来ればもう一度じっくり間近で見せていただきたいものですが・・・」
「キミって結構スケベだねぇ・・・」
クインリイの言葉に対して
「戦士とは常に生死を賭けた毎日です。できる場所で日頃の欲望を発散させねば鬱屈してしまうものでして」
否定はしなかった。いっそ清々しいスケベ女戦士である
少女の教育にはとてもよろしくないが
「じゃあ提案!今後余裕ある時は僕と君は裸で過ご・・・」
「絶対にノゥ!!」
「ではお二人ほど上等なものではありませんが私も服を」
「やめて!絶対にやめて!」
「(脱ぎ脱ぎ)」
「君も脱がないで人数の問題じゃないから!」
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「今更になって気が付いたんですが」
「なに?」
「貴方の名前を知りませんでした」
ほんと今更だな
そういえば名乗ってなかったか
「あぁ、名前ね。俺の名前は・・・・」
あれ?
「名前は・・・」
ここにきて気が付いた
自分の名前がわからない
生前の記憶はある
何処の国で生まれ、育って、どんな出来事があって、どんな人生を歩んでいたのか
なのに名前だけが思い出せない
自分の名前だけではない
親、友人、親戚、ペット
名前{だけ}が思い出せない
-・・・・・-
「ここに来る前の記憶が混乱してるみたいだね」
「なんと、記憶喪失なのですか?」
「(オロオロ)」
どうやらそうらしい
「ん~・・・じゃあ仮の名前ってことで今ここで考えちゃおうよ」
「そうですね、いつまでも戦士様と言うのも・・・いえ!敬語を使うのが嫌なわけではなく・・・いっそ貴方と呼び続けるのも・・・良いですね。ア・ナ・タって呼び方も夫婦のようで」
「それは僕が認めない」
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「では鎧からもじって命名{メイル}で」
「賛成」
「(コクコク)」
「まぁいいけどさ」
なんか女の子っぽい名前だな
-見た目にあってると思うけど?-
中身40代のオッサンなんだが?
-いっそ美女として第2に人生を謳歌するのも悪くないんじゃない?-
肉体もちゃんと男だからな?一応
-それもそれで僕としてはたまらない!-
駄目だこいつ
「では次だ」
「次?」
「少女の名前だ。彼女は生まれてから名前を付けられていないそうだ」
ひっでぇ話だな
-そう思うなら君が付けてあげないとね-
「じゃあ次はメイルが命名してあげなよ」
「それは良いな、君もそれがいいだろう?」
「(コクコク)」
俺だけで考えるのか
「ん~・・・・ん~~・・・じゃあ安直だが髪の色が白金色だから{プラチナ}で」
「本当に安直だね」
悪かったな
「白金とはなんですか?」
ぬ?
-あ、あ~この世界ではまだ白金は知られていないのか-
知られていない?発見すらされていないのか?
-うん、多分-
「俺の記憶にある金属の一つだよ」
「なるほど・・・どうだ?気に入ったか?」
「(コクコク)」
こうして俺の名前は{メイル}となりエルフの少女の名前は{プラチナ}となった