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舞踏会 1

舞踏会、それは女たちにとってある種の戦の場でもある。

常軌を逸した魔界のようにもなる。

つまり平常なところではない。

闇夜の中でキラキラ揺らめく豪華なシャンデリアの下、

終わりのない音楽が響く中くるくると世界が狂うほどのドレスたちが花開く。

ワインが海のように注がれ金が山のように重なる。

女たち同士では見栄の張り合いと嘲りが交差し、好みの異性が絡むと熱を孕んだ駆け引きが始まる。

他人の華美な衣装や家柄に難癖をつけ、ベッドでは砂城のように簡単に崩れるような睦言を交わす。

一時の休む暇もない。

踊り狂え!酒に溺れてしまえ!

一夜の過ちなんて当たり前。

それは太陽が月を追いやるまで繰り返される。



「ミネラだったか?良い名前じゃないか。

よくやった、王妃様から名付けてもらえれば上出来だ。お前の結婚ネタにつかえるな。

少しでも格は上げていたほうが良い相手に嫁ぎやすくなる。」

戻るとお父様が笑顔で迎えてくれた。

褒めてもらったの初めてだ。

だけど、まったく嬉しくない。


アイール様の冷たい眼差しが私からお父様へうつり、甘い声を紡ぐ。

「あなた、良かったわね。自分の娘がミネラなんて大層な名前を付けて頂いて。」

「なんだ?なんか意味でもあるのか?」

「王妃様の母国語で《愛娘》という意味よ。

多少なりともミネラは王妃様の加護を受けたことになるわ。

良かったわね、ミネラ。」

前では睨まれ、後ろのほうでは二人の姉妹が喧しい。

「勿体無い名前だわ。何が《愛娘》よ。馬鹿みたい。」

「そうよ、まったく逆の意味じゃないの。愛されたことなんかないくせに。」

・・・もう面倒だ。

馬耳東風でこの場を過ごそう、全てを聞き流そう。

聞こえているけれど、聞いていない。



イリアとウテルが私にニッと合図を送る。

一瞬、何だろう、と思っているとすぐに答えはわかった。

ウテルがドレスをひらひらさせて見せたから。

「「ごきげんよう、ブリナー家の皆さま。」」

「これはこれは、イリア嬢とウテル嬢。久しぶりだね。先程のご挨拶はとても立派だったよ。」

「ありがとう、おじさま。お久しぶりです。」

「あら、私は先月お会いしましたわよう。ねぇ?おじさま。」

ウテルがクスクスと笑い、お父様が気まずそうにする。

なんとなく店で会ったか、なんかしたんだなと察した。

「ところでおじさま、ミネラをお借りしても良いかしら?。」

「ミネラと?」

「ええ、先程ねお友達になったのよう。ねっ、ミネラ。」

相槌をうつと二人が優しく私の手を左右握る。

「それでね、一緒に舞踏会に出たいの。ねぇ、良いでしょう?おじさま。」

「ああ、もちろん良いよ。ミネラせっかくだから連れて行ってもらいなさい。」

「はい、お父様。」

「それじゃあ決まりね!帰りは私の馬車で送るから安心して。」

「イリアの家のなら一番安心よう。鬼の国家権守隊副長を侮ろうなんて馬鹿なことしたら100倍返しで返ってくるから誰も襲わないわ。だから、私も今日はイリアの家にお世話になるつもり。」

「鬼って言いすぎよ。ちょっと厳しいだけ。」

ユリアとキリアが面白くなさそうに私達を見るのを感じながら、二人に手を引かれるまま歩む。



ミネラがその場を去った後、

「それじゃ私は先に家に戻るよ。君たちはどうする?」

「えー、お父様、帰ってしまうの?」

「すまないな。用事がちょっとあるんだ。」

「あなたたち、あまりお父様を困らせないの。舞踏会に参加したいのなら私が残ってあげるわよ。」

「「参加したいわ!」」

「それじゃあ、このかわいい娘2人をよろしく頼むよ。変な奴に引っかからないように。」

「安心してちょうだい。私がいるから。」

「そうだな。アイーナ、君に任せれば大丈夫に決まっているさ。」

チュッとアイーナの頬にキスが一つ贈られる。

そしてお父様は去った。

そしてアイーナはそれを確認して静かに言う。

「ユリア、キリア、分かっているわね?」

「もちろん。」

「良い男をつかまえてみせるわ。」

「そうよ、頑張りなさい。今日は滅多に会えない高貴の身分の方もいらっしゃるわ。

じっくり社交界を学んできなさい。きっと役に立つ日がくるのだから。

それじゃあ、そうね・・・夜明け頃に、ここに集合しましょう?」

「お母様は一緒じゃないの?」

「馬鹿ねぇ、男を誘惑するのに母親連れてどうするの。」

「そっか。それじゃお母様はどこへ行かれるの?お友達のところ?」

「・・・そうね、お友達のところよ。何かあれば私を呼びなさい。すぐに行くから。」

「「はい、お母様」」












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