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さらば正社員の日々

スマホで書いたので、常より誤字脱字が多いかもしれません...。

給料が出ない。


そもそも、給料とは何か。

多くの人は、労働の対価だと言うだろう。そう、労働があって、給料がある。労働という、果てのない洞窟に挑めるよは、給料という光があればこそなのだ。


フィギュア、ゲーム、マンガ、アニメ関連グッズ。給料を何に使うかはその人次第だが、それがなければ何もできないという点はすべての人に共通しているのではないだろうか。


使い道が偏りすぎているだろ、などという意見は無視するとして。

これはあくまでおれの場合であって、あくまで一例である。


彼女とのデート費用?ん?何を言ってるのか分からないな。


知っているかい、次元を超えた超遠距離恋愛という純愛においては、デート費などという俗世的な出費は勘定されないんだ。覚えておきたまえ。


彼女くらいたくさんあるわ。液晶画面の先にな。


そのことを考えると、なぜ転移先が二次元ではなくこんなところなのか、まったく残念でならない。

どうせなら、好きな二次元の世界で、きゃっきゃうふふ的な展開に巻き込まれたかった。


「もう、マサトったら♪」とか。「もう、マサトのエッチ!」的な展開に巻き込まれつつ、チェリーなのにやってることはチェリーじゃない的な、いつでも卒業できるのだけれど、それでもおれはあえて卒業しないんだぜ的な、もうラノベタイトルかっていうくらい冗長的な、めくるめくきゃっきゃうふふ生活を味わいたかった。


現実には、男だらけの盗賊団に所属しているけども。男だらけっていうか、こっちに来てからというもの、未だに女性を目にしてさえいないけども。


某哲学者ではないけれど、神は死んだと言ってやりたい。むしろ死んでないなら覚悟しとけと言いたい。

あの時の幼女が神だとすれば、次会った時には、泣くまでprprしてやるわ。泣いてもprprするけども。


まあ、給料が出ないという言葉を聞いた瞬間、そんな益体もないことを考えてしまうくらいは、おれの頭は真っ白になってしまったというわけだ。


「え、出ないって...。給料はないってことですか!?」


嘘であってほしい、そんな気持ちを込めて、おれはリーダーへと問いかける。


「出ないって言ってるだろう。というか、盗賊に給料なんて出ると思うか?」とは、我らがリーダーのお言葉。


確かに。単純だけどすごい説得力がある。

毎月給料を貰って、家族を養う。子供と外食に行って、「よーし、給料日だから、パパ奮発しちゃうぞ!」なんて言ってる盗賊。子供達が寝静まった後、家計簿をつける妻と、「住宅ローンはあとどれくらいだ?...ああ、あの子たちの学資ローンもあったな...。」なんて言ってる盗賊。


うん、かなり違和感があるな。受診拒否するマザーテレサくらいの違和感がある。


「じゃ、じゃあ、他の団員たちはどうやって生活しているのですか?」


「そりゃお前、住む場所には困らねぇし、食い物だって配られる。襲撃が上手くいけば小遣いくらいはあるが、今回は失敗しちまったしなあ。まあ、1人で盗賊やるよりは、おれらみたいにまとまってた方がやりやすいからな。」


そう言われてはたと気づいた。なるほど、つまり盗賊団の団員って、正社員というか請負契約をうけた個人事業主に近い感じなのか。


元の世界でもそういう人たちもいたよな。アニメのイラストレーターさんとかそんな感じだった気がする。

そうか、そういう雇用契約もあるよな...。


いやいや、ちょっと待て。

なんとかなく納得しそうになったけど、おれが目指している正社員ってそうじゃない。


一言で言えば、サラリーマンだ。そう、サラリーを貰うマンなのだ。給料を貰う男なのだ。


この厳しいご時世、自らの腕一本で生き抜くなんておれには無理だ。契約をとりつつ、成果物を作りつつ、売上やら経費が云々なんて絶対できない。

後ろを誰かに支えていてほしい。というか誰かに雇っていてもらいたい。そして給料を貰いたい。


よくよく考えてみれば、盗賊団が会社なんてどうかしてた。野盗の集まりじゃないか。

つい先ほどまで、会社があって社長がいて社員がいる、とか表現してた自分を殴ってやりたい。世の過大広告たちもびっくりだよ。


自らもその野盗の一員であることなどすっかり忘れつつ、おれの中に、この盗賊団たちに対する怒りがこみ上げてきた。


「...給料が貰えないなんて、聞いてない...!」


「あん?どうしたマサト?なぁにブツブツ言ってやがる。さっさとアジトに戻らないと、団から追い出されちまうぜ。」


「...こんな職場、こっちから願い下げじゃぁぁぁあああ!」


そう叫びつつ、おれは目の前の剃り込みヘアー氏ことリーダーに殴りかかった。


あの時、すみれちゃんに告白した後、真実を知って幼馴染の山本に殴りかかったときよりも、素早く。

もはや目の前の野郎に対する恐怖など感じていない。

地を踏みしめる馬の蹄のような力強さで、おれは拳を振り上げる。


おれに突然殴りかかられ、戸惑ってしまったのだろうか。その場に立ち尽くしたまま、何の動きも見せないリーダーの顎へと、おれの拳が突き刺さる。


どんっ。


そんな音が聞こえたような気がする。


いつの間にか瞑っていた目を開けると、おれの目には、仰向けに地面に倒れ、体を痙攣させるリーダー氏の姿が。


「あ...やっちゃった...。」


怒りに我を忘れていたおれは、自分がしでかしたことを悟り、血の気が引くのを感じる。


やばい。これが他の団員にバレたらやばい。

幸いにして、他の団員たちは既にアジトに向かっているようで、この場には自分とリーダー以外の人間はいない。


これはもう、逃げるしかない。

おれがその結論に達するまでに、2秒とかからなかった。


おれは、リーダー氏が倒れているすぐ横の地面に文字を書いた後、先ほど商人たちが逃げていった方へと走り出す。


きっとあの方角には街があるはずだ。そこで別の仕事を見つけてやる。


ちなみに、地面に何を書いていたのかといえば、退職願である。

盗賊団といえど、職場は職場。会社を辞めるのなら、退職願くらい出さないとね。

次はもっといい職場を、正社員としての待遇を勝ち取ってやる。


そんなことを考えながら、おれは街道を走り続けるのだった。


給料って大事!

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