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女神にラブソングを

昨日は更新できずに申し訳ありません。

今日は2話更新の予定ですが、少し遅い時間になるかもしれません。

 王城内の一角。室内だというのに白いモヤに覆われ、水の流れる音が響くこの場所。


そう、浴場だ。私マサトは、この一人で入るには広すぎる文字通りの大浴場で、現在湯に浸かっている真っ最中である。。


 あの後、おれの発言に目を丸くしていた王と宰相らしき人に福利厚生とはなんぞやとの説明をしたところ、条件をまとめるために時間がほしいとのことであった。


 「マサト殿、その件はしっかりと話し合っておくでな。まずは体を休めてはいかがかな?聞けば、詰所に二日も拘留されていたとのこと。そのことは本当に申し訳なかった。湯にでも浸かって、体を癒されるとよかろう。」とはトリミネン王の言。


 それを受けた侍女の方々に案内され、ここ浴場へ連れてこられたというわけだ。


 「ふぅ。やっぱりお風呂って最高だなぁ。」


 冬場だとはいえ、前の職場(盗賊団)は汗臭い男ばかり、そこを飛び出したと思えば今度は牢屋暮らし。お風呂どころか体を拭くことさえまともにできていなかったのだ。


 よくよく考えてみれば、異世界に来てからというもの、本当にろくな目にあってない気がする。


 「あの幼女め...次会ったら絶対ただじゃおかないぞ。」


 「ほぅ、それじゃどうするんだい?」


 「そりゃもう全身をペロペロしてやる...ってアイエエエエ!?!?幼女!?お風呂に幼女!?幼女ナンデ!?!?」 


 「またそれかい。たまには違う反応を見せてくれてもいいんじゃないかなぁ。幼女ぞ?スッポンポンの幼女ぞ?」


 お風呂回ぞ、テンプレぞ、と胸を張る幼女。


 確かにお風呂回と異世界が切っても切れない関係にあることは間違いない。でも今はそれどころではない。


 「お、お前はあの時の幼女じゃないか!なんでこんなところに...ていうかまずは、体を隠せ!」


 「えー、せっかく美幼女の裸を見られるチャンスなんだよ?本当に隠しちゃってもいいのかなぁー?」


 ニヤリと口元を歪め、こちらをからかってくるバー幼女。


 ダメに決まっているだろ。たとえ幼女であろうと女性であることに違いはない。こんなチャンスを逃していては、いつまでたってもDTから抜け出せないではないか。


 「すいませんでしたぁ!そのままでお願いしますぅ!!」


 「うっわ素直すぎてドン引きだよ...。さては君、所謂魔法使い(どうてい)だね?」


 なぜバレた。やはりこいつはただの幼女ではない。


 「ま、そんなことはどうだっていいんだけどね。今日は君に話があって来たのさ。」

 

 「話って...。おれを異世界に送った理由でも聞かせてくれるか?」


 この幼女がおれに話すことなんてそれしかないだろう。


 「君も察しはついているんだろう?我が君をこの世界に送った理由についてさ。あ、そうそう。まずは自己紹介といこう。我はレティア。幼女にして女神、幼女神とは我のことさ!」


 目の前のバー幼女、本人の語るところによれば幼女神レティア様は、その某家庭調理器具(まないた)によく似た胸を思いっきり張りながらそう言った。


 「ただの幼女かと思っていたら、女神だったのか...。おれの名前は中山マサト。こっちでは単にマサトと名乗っている。」


 「ふむふむ、マサトというのだね。それでマサト、君をどうしてこの世界に送り込んだのかというとね。こっちの世界を管理している神、ミティスというんだけど。彼女が、勇者が欲しいからそっちの世界の人間を一人派遣してくれーって頼んできてさ。誰でもよかったんだけど、いちいち探すのは面倒でさぁ。そこに君が名乗り出たってわけさ。いやー、あの時は探す手間が省けて助かったよ。。」


 感謝ぞ、褒めてつかわすぞ、と嬉しそうに話すレティア様。


 これあれだな。勇者の素質を持っているとか、勇者候補に巻き込まれてとかのパターン(テンプレ)じゃないな。誰でもいいってなんだよ。


 だいたいこちとら派遣社員だったんだぞ。二重派遣なんて、女神が許したって法律は許してくれないんだぞ。弁護士を呼べ弁護士を。


 「こらこら、なんて顔をしてるんだい。どうせ元の世界にいたって、良いことなんてなかったろうに。ここは異世界だよ?君の大好きなキャッキャウフフ的展開だってきっとあるさ!現に、こうやって美幼女たる我と混浴できてるじゃないか。ふふふ、思う存分見てくれても良いんだよ?」


 金髪幼女で女神ぞ、テンプレ盛りまくりぞ、とはレティア様の言。


 美幼女との混浴、確かに望むところではある。望むところではあったはずなのだけれど。


 「うーん。。。今ひとつドキドキしないなぁ。金髪美少女枠はレヴィさまがいるから被ってるし、レティア様はロリロリしすぎてるしねぇ。」


 「な!幼女ぞ!?金髪美幼女神ぞ!?」


 「ことわざにもあるじゃん。ロリたるは猶及ばロリが如し、ってね。」


 「過ぎたるは猶及ばざるが如しだよ!なに勝手にことわざを改変してるんだい!」


 異世界勇者はロリに弱いんだぞ、それがテンプレぞ、と地団駄を踏むレティア様。


 かわいい。幼なかわいい。


 「まあそう怒らずに。レティア様も十分かわいいからさ。レヴィさまにはちょっと及ばないけれど。」


 すかさず慰めるおれ。ふふ、これこそモテ男への第一歩なのだ。こういう細かいフォロー、DTはそれができないからDTなのだと床屋で読んだ雑誌にそう書いてあった。


 しかし、それを耳にしたレティア様は、ぴたりと地団駄を踏むのをやめ、柔らかそうな頬をぷくっと膨らませ、その金眼に涙を滲ませながらこちらを睨みつける。


 かわいい。幼なかわいい。


 「ううう....天罰ぞ!」


 そう言って、レティア様が可愛らしいそのお手てを上に向けた瞬間、浴場がまばゆい光に包まれる。


 「きゃっ!!...これはお湯ですの?なぜ突然浴場に...?」


 光が収まり、ようやく眼を開いたおれのすぐ前。綺麗な空色のドレスを身に纏ったレヴィさまが、いきなり湯船へと降ってきた。


 水も滴るいい男、とはよく言うけれど。ザブンとお湯を浴びたレヴィさまは、それはそれは美しい姿だった。先のトリミネン王の言葉でないけれど、おれはこの美しさを言葉にする術を持たなかった。


 そんなことを考えつつ、レヴィさまに見惚れていると、きょろきょろと辺りを見回していたレヴィさまが、とうとうおれの姿に気づいたようだ。


 きょとんとするレヴィさま。マズい。レヴィさまがこの状況を把握し切る前に、なんとかごまかさなければ。


 「れ、レヴィさま!その...あの...良いお湯加減ですね...?」


 ぎこちなく笑いかけてみせるおれ。徐々にその綺麗なお顔を赤くさせていくレヴィさま。


 「きゃ...きゃぁぁあああああ!!!!!!」


 なるほど、こういうときに上手くフォローできない辺りがDTたるゆえんなのだろうな、と。


 城中に響き渡るかのようなレヴィさまの悲鳴を聞きながら、おれはそんなことを考えていた。

テンプレ大好き幼女神様!

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