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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

かけがえのない存在 ~雪逸花紅羅~

作者: 雪逸花紅羅

初めまして!雪逸花紅羅と申します。

これから物語を書いていきたいと思います。

至らぬ点は多々あると思いますが、どうか温かい目でご容赦ください。

宜しくお願い致します!

まずは自己紹介代わりの物語をご覧ください!

雪国の逸話に登場する、幻の紅い花を探し求める物語です。

修羅の道となっておりますので十分ご注意ください!


白い雪が降り積もる。


「嗚呼。寒いな」


呟いてみた。誰一人いない。

風の音しかしない。動物さえいない。いるのは俺だけ。

思い出す、何故ここにいるのか。


―古い伝承があった。昔々の誰も覚えていない悲しき伝承が・・・。

昔々あるところに一人の少年がいました。

雪の降る村に生まれた少年は、とても幸せでした。

皆は少年に優しくしてくれて、少年も皆に感謝していました。


しかし少年は、ふと思いました。幸せが怖いと。

少年は幸せな日々に満足していませんでした。

皆の優しさも欲しい物も手に入れたのに少年の心は満たされません。


少年には過去があったのです。辛く苦しい過去でした。

何も悪いことはしていないのに少年は牢屋に閉じ込められていました。

そして三年間、牢獄から抜け出すことは出来ないと言われたのです。


少年は悲しくて、毎日のように涙を流していました。

脱走を試みたこともありましたが・・・・

その度に看守に連れ戻されてしまいました。

少年は生きている感覚が欲しくて腕を傷つけました。


『僕が悪い、牢獄なんて大嫌いだ』


優しい少年は皆を傷つけることだけはしませんでした。

皆が好きだったからです。皆を信じていたからです。

何時かは皆も分かってくれると少年は信じていました。

雫が牢獄に落ちる程に。

少年は逃げること、攻撃すること、優しくすることしか知りませんでした。

 

三年の月日が経ち、少年は牢獄を出ることが出来ました。

明るい光、賑わう人々、全てが新しく思えました。

少年は雪の降る村へと向かいました。

村人は少年を温かく迎え入れ、優しく接してくれました。

少年は牢獄を出られたことへの感謝、村人達に出会えたことに感謝しました。


少年は仕事を始めました。薪を割る仕事です。

初めは慣れない仕事に苦戦しましたが、続ける内に少年の腕は上達していきました。

優しい人々、自由な生活。少年は毎日が楽しくて仕方ありませんでした。


ある日、少年は気付きました。

自分が確実におかしくなっていることに。

幸せな生活には感謝していましたが、どこか物足りませんでした。

次第に少年は狂気と心の葛藤に悩まされるようになりました。

自分が分からなくなり、感情が暴走することもありました。

そして、ようやく気付いたのです。



『僕は今の生活に満足していない。

僕には、あまりにも幸せすぎる。僕は幸せに慣れていない。

だからこんなに悩む必要がある。

僕は皆が大好きだけど、人付き合いが苦手なんだ。

僕は人を不幸に導いてしまう。何故なら僕が不幸になりたいから。

戦いに酔ってしまった。何故か達成感があった。

それに病み付きになって・・・どんどん泥沼に入っていく。

皆には幸せになって欲しい。

でも、僕は駄目なんだ。幸せだと皆を傷つけてしまう。』



少年は村を出た、誰にも知られず独りで雪を歩いた。

道などなく、目的地もない。ひたすら歩き続けた。

誰もいない、動物さえいない。遂に少年は倒れてしまった。

唯、寒かった。少年は孤独には耐えられなかったのだ。

一輪の花が咲いていた・・・雪のように白く、一点の汚れもない花。

何を思ったのか少年は腕を切り、その雫を花に垂らした。

白い花が紅く染まる。



『これで大丈夫。君が死ぬことはない。

僕が魔法をかけたからね。君は僕より綺麗で美しい。

だから君に僕より長生きしてほしい。

この〝ち〟は君を守ってくれる。だって、こんなにも温かく優しいのだから』



少年は息絶えた。雪の中で眠るように、紅い花を守るように―

 


俺は伝説の花を探している。

悲しく、儚い紅い花を。一目だけでも花を見たい。

その花は枯れず、萎れず雪の中に今も咲き続けているらしい。

風の噂では健常者がその花を口にすれば不老不死となり、

病人が花を口にすれば全ての病が治るそうだ。


ただし、手に入れるのは至難の業。

その昔、名のある封印師が花びらを一枚手に入れたそうだが

・・・嘘か本当か分からない。


花があるのかも分からない。でも俺は賭けたい。冒険したい。

あの少年が命を賭して守った花はどんな花なのか、

命を懸ける程の価値があったのか。どうしても知りたい。

俺は雪の中を何日も歩いた。そして見つけた、伝説の花を。



「これが伝承に登場した花。限られた者しか触れることの出来ない花・・・」



俺は手を伸ばした。あと少しで花に触れることが出来る。

その時だ、少年の霊が現れた。



「何の為に僕の花を奪う?僕が命を賭して守り続けるこの花を・・・」

「俺は知りたい。何故、花に命を賭けた?人を恨まなかった?

俺が花を手に入れたいのは、お前のことを知りたいからだ」


「僕が花に命を賭けたのは、かけがえのない命に思えたから。

その儚い命を人間のようだと思ったから。

僕が死んでも、目にも留らない花を守りたかった。

だから、それに見合う魔力を捧げた。


僕は看守の悪口を言ったよ。でも心の底から恨んではいなかった。

それは、信じていたから。何時かは僕のことを知ってくれると思った。

僕が人を恨んでいないのは全ての人が悪いわけではないと知っていたから。


君の問いに僕は答えたよ。次は君が僕の問いに答える番だ。

君はどうして僕のことを知りたいの?僕のことを知って如何する?」



「俺はお前のことを救いたかった。可哀想だと思った。

お前は罪を犯していない。ならば疑いを晴らすべきだ」



「君は似ている。僕を救ってくれた封印師に。全てを君に話そう。

君は噂を聞いてここへ来たんだね?僕の流した噂を聞いて・・・」



「お前が噂を流したのか!?」



「そう。僕が流した噂は風に乗って広まり、ついには封印師に届いた。

皆がここへ来た理由を訊けば揃って「花を取りに来た」と言う。

僕が命を捧げた花を盗りに来たと。でも封印師は違っていた。

「助けに来たぜ」と言ってくれたんだ。皆が花を狙う中、僕を見てくれた。

僕は封印師を美しい人だと思った。だから花びらを一枚あげた。

この花には何の効果もない。ただ枯れないというだけの花。


僕には、この花しかないんだ。雪の中の白い花。

よくよく注意して見なければ気付かない。

気にも留められない、この花を皆の記憶に残したかった。

存在するかも分からない命を感じてほしかった。

僕は最後に誰かの役に立ちたかったのかもしれない。

これで全てだ。君の知りたかったことは知ることが出来たかな?」



「分かった。この花は普通の花だと言いたいんだな?どこにでもある花だと」

「その通りだよ」


「確かにそれは正しいかもしれない。

しかし俺には、そう思うことが出来ない。

その花はお前の心なんじゃないのか?

だから、お前が心を許した者にだけ花の一部を捧げた。

お前自身の人生を花に重ねているのでは?」



「そう。君は凄いね。でも、僕の思いは本当さ。

存在が如何に薄くても工夫次第で記憶に残る。

僕のようにね・・・さぁ、話はここまでにしておこう。

もうじき日が暮れる。目を閉じて・・・。ありがとう。達者でね」


気が付くと俺は家に戻っていた。温かい。

何故かポケットに膨らみがある。

ポケットに入っていたのはビンだった。

小さなビンの中には花びらが入っていた。

古き伝承は本当だった。少年は存在したのだ。

少年の名を訊いておけば良かったと悔やんだが、仕方ない。


「お前の心は今も生きているんだな?」


花びらが少し輝いたような気がした。


最後までお付き合い頂きありがとうございました。

如何でしたか?少しでも面白いと思って頂けたのならば幸いです。

この物語に正しい結末は存在しないように思えます。

少年は確実に存在しますし、青年もまた、その証を持っています。

しかし少年の霊が如何なってしまったのか、

青年が今後その出来事をどのように捉えていくのか・・・

その判断は皆様にお願いしたいと思っています。

この物語はきっとハッピーエンドでもバッドエンドでもないのかもしれません。

もし、宜しければ貴方がこの結末を完成させてください。

※ちなみに‟ち„と強調しているのは地と血の二つの意味がある為です。

また、機会がありましたら宜しくお願い致します!

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