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4F 瘴気とスキル

本日2つ目の投稿です


7/21 蠱毒に関する記述の修正と追加、魔幼蟲のスキルに関する記述の追加と修正、誤字の修正を行いました

 メインコアルームに帰ってきてからは特にやる事もなく、ヒロトは食事をして寝ることにした。


 ダンジョンコアはDPを消費して様々なアイテムを呼び出すことができるようになっている。

 もともとは冒険者をダンジョンに(おび)き寄せるためにダンジョン内に設置する宝箱の中身を創る能力なのだが、召喚可能アイテムリストには食事も用意されていた。

 ヒロトはDPを節約するために一番安い1DPの食事を召喚してみたら、出てきたのは乾パンだった。さらに1DPで500mlペットボトルの水を出して、ひもじい思いをしながら食事を済ませた。


 絶対に食事のグレードを上げてやるとヒロトは決意し、地面に横たわり目を瞑るのだった。










 翌日、ヒロトは地面で寝たせいで痛む体をほぐしながら魔幼蟲の様子を見に来た。


「おお、やってるやってる。やっぱ蟲といえば蠱毒の術だよな。同族の屍を越えてゆけーってな」


 なぜヒロトが蟲で連想するのが蠱毒の術なのかは、なんとなく名前がかっこいいからというくだらない理由からである。ちなみに魔幼蟲一種類だけでは蠱毒とは言えず、所詮はヒロトのニワカ知識なのであった。

 ヒロトが適当なことを言っている間にも魔幼蟲は【ダンジョンマスター】の命令を守り、共喰いを続けている。

 ヒロトは魔幼蟲のプールを観察しているとあることに気づく。


「ん?なんか部屋に黒い(もや)のようなものが漂ってるな。昨日見た時は無かったはずだぞ。何だこれ?」


 ダンジョンコアの情報を漁り出すヒロト。


「んーと、黒いモヤ、黒いモヤ……、あったあった。へー、これが【瘴気】ってやつか。

 マジで呪いが発生するとか異世界やべぇな」


 異世界に来てまず蠱毒モドキをやろうとするヒロトの方がヤバいのは言うまでもない。


【瘴気】というのはヒロトの言う通り呪いの力であり、負の感情や『死』が溜まることで発生する。

 墓地や戦場跡など、『死』が多く集まる場所は【瘴気】が発生しやすい。

 ダンジョンも例外ではなく、冒険者や魔物の『死』が積み重なり古いダンジョンほど【瘴気】がより濃くなっている。

【瘴気】に触れていると肉体と精神を蝕んでいくので、ダンジョンを探索する冒険者には【瘴気】対策は必須となっているのだ。


 そして多くの『死』が積み重なって発生する【瘴気】が半日もしないうちに目に見えるようになる濃度まで発生したのは、もちろんこのヒロト式蠱毒の術が原因である。

【源泉】から毎秒10匹のペースで生成される魔幼蟲と共喰いの命令により、ここではすでに100万匹をゆうに超える量の魔幼蟲が死んでいる。魔幼蟲一匹一匹はたいしたことがなくてもこれだけの量を集めれば【瘴気】が凄まじいことになるのは当然なのであった。



 ヒロトが【瘴気】などといういかにもファンタジーな現象に目を輝かせてそれを眺めていると、突然ダンジョンコアの無機質な声が響いてきた。


『条件【瘴気の発生】を達成しました。スキル【瘴気完全耐性】を取得しました』



「おっ、ボーナスではDPだけでなくスキルも手に入るのか。【ダンジョンマスター】が自分のダンジョンで発生した【瘴気】で自滅したらダメだもんな。救済処置って感じだな」



 予想外のスキル習得もありついニヤけてしまうヒロトは朝食をとるためにメインコアルームに帰ってきた。

 食事を呼び出すためにダンジョンコアを操作するとDPが増えていることに気づいた。


「そういえば毎日DPが手に入るんだったな。DPが500増えてる。ダンジョンがRANK1だとこんなものか」


 DPは増えはしたがまだ余裕があるわけではないのでヒロトは今日も乾パンと水で朝食を済ませた。


「今日はスキルについていろいろ試してみようかな。ダンジョンが開放された後のことを考えると俺もなにかしらできるようになっていた方がいいよな」


 そう言ってヒロトはダンジョンコアを操作し、取得可能スキルリストを表示させる。


「スキルもいっぱいあるなー。【剣術】とか欲しいけど俺のステータス後衛向きなんだよなぁ。取るなら【火魔法】とか魔法系かな」


 自分の戦闘スタイルを考えながらリストを眺めること数分。

 ヒロトはまず【鑑定】を取得することにした。


「異世界に転移したらまず【鑑定】を取得するのが基本だよな!【鑑定】を300DPで取得……っと」


『スキル【鑑定Lv1】を取得しました』


 ダンジョンコアの声が響いてきた。


「ではではさっそく【鑑定】を使ってみましょうか!ワクワクするなぁ!」


 期待に満ちた目でヒロトはダンジョンコアを対象に【鑑定】を発動させた。

 するとヒロトの目の前に半透明のウィンドウが出現し、説明文が書かれていた。




 ダンジョンコア

 ダンジョンの核。




「あ……あれ?説明短くない?もしかしなくても【鑑定Lv1】のせいか?

 なんだよもっと詳しいのを期待してたのに!」


 悔しくて地団駄を踏みながらヒロトは考える。


「たくさんスキルを使ってレベルを上げればいいんだろ……?ちょうど魔幼蟲がいっぱいいるからあいつら【鑑定】しよ……」


 先ほどのショックを引きずりながらヒロトは魔幼蟲のいる部屋に転移する。


「待ってろよ俺TUEEEEEEライフ!【鑑定】育てて異世界満喫してやるよ!」


 切り替えの早いヒロトはさっそく魔幼蟲(・・・)を【鑑定】した。



 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲

 魔幼蟲…………


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!?」


 大量に魔幼蟲の情報が流れ込んできてヒロトの頭は激痛に襲われた。

 一匹一匹に【鑑定】を使えばこんな事にはならなかったのだが、ヒロトは数百万匹もの魔幼蟲の群れ(・・・・・・)に向かって使ってしまった。


『スキル【鑑定Lv1】が【鑑定Lv2】にレベルアップしました』


『スキル【精神攻撃耐性Lv1】を取得しました』


『スキル【苦痛耐性Lv1】を取得しました』


 しかも幸か不幸か【鑑定】のレベルは上がり、さらに新しいスキルを手に入れてしまった。

 ヒロトは脂汗を流しながらいまだガンガンと痛む頭に顔を(しか)めながら育ったスキルについて考える。


「ダンジョンコアのインストールの時は平気だったから大丈夫だと思って油断していたがこんな罠があったなんて……。やられたぜ……」


 ヒロトが勝手に自爆しただけである。


「しかも【苦痛耐性Lv1】はともかく【精神攻撃耐性Lv1】ってなんだよ。あれは攻撃だったのかよ!?」


【鑑定】が自分に対する攻撃スキルだった事に戦慄するヒロト。

 そして今度は痛い思いをしないように適当に近くにいた魔幼蟲を一匹つまみ上げ、【鑑定】を発動させた。



 魔幼蟲 【魔蟲Lv.3】

 スキル

【耐久上昇Lv1】【力上昇Lv1】【瘴気耐性Lv2】【生存闘争Lv4】




他の魔幼蟲も【鑑定】してみたが、多少の差はあれどだいたい最初に【鑑定】した個体と似たステータスだった。


「おおー、なんか強くなってる。【瘴気耐性】や能力上昇系は名前通りだろうとわかるが【生存闘争】ってなんだ?」


 魔幼蟲の説明文を見ながら疑問に思った瞬間新たなウィンドウが出現した。



【生存闘争Lv4】

 過酷な環境に長く置かれる事で発現するスキル。

 スキルの取得・成長がしやすくなる。



「説明文の単語にも【鑑定】できるのか、これは嬉しい発見だ。しかし【生存闘争】強いな。単純に成長にボーナスがかかるだけだがこれが有ると無いとじゃ同じ期間育てた時の差が大きいだろうな。準備期間はあと29日なんだ、ダンジョン対抗バトルにはもってこいの良いスキルが見つかったぜ」


 頭はまだ痛いが魔幼蟲の育成が(はかど)りそうなことにヒロトはほくそ笑むのだった。

【鑑定】

対象の物の情報を見ることができる。

どれだけ詳細に見れるかはスキルのレベルによる。



【苦痛耐性】

痛みを我慢しやすくなり、感じる痛みを緩和する。



【精神攻撃耐性】

精神に干渉する魔法やスキルへの耐性をつける。



【耐久上昇】

ステータスのVITに補正をかける。



【力上昇】

ステータスのSTRに補正をかける。



【生存闘争】

 過酷な環境に長く置かれる事で発現するスキル。

 スキルの取得・成長がしやすくなる。

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