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ひよこものがたり

作者: 伊邪耶ゼロ

 とあるくにののうかに、いっぴきのひよこがいたのです。

 ひよこはたくさんのきょうだいたちにかこまれて、たのしくすごしていました。

 ぴよぴよ、ぴよぴよ。

 ところがきょうだいたちとそのひよこは、みためもいろもちがいます。

 ひよこたちをかっていたのうかのおじさんは、きっとほかのとりのたまごがまぎれこんだのだろうといいました。

 ぴよ。

 ひよこはおじさんのことばをきいてなんだかかなしくなり、なきました。

 そしてたびにでることにしたのです。


 こうえんにいったひよこは、ないているおんなのことであいました。

 ぴよ、ぴよ。

 ひよこがおんなのこのそばにいきたずねると、かだんのおはながぜんぶちぎられてしまったのだといいます。

 ぴよぴよぴよ。

 ひよこはまかせてくださいといって、ねこたちのあいだでうわさになっているもりのまじょにあいにいきました。

 まじょはひよこをみるとかわいいかわいいとおおよろこびして、ふしぎなたねをくれました。

 ひよこがこうえんのかだんにたねをまくと、あっというまにうつくしいおはなたちがさきます。

 ぴよっ。

 ひよこはまんぞくしてたびをつづけました。


 ひよこはみちのすみっこでうずくまり、くるしんでいるおとこのひとにあいました。

 ぴよ、ぴよ。

 ひよこがしんぱいしてたずねると、おとこのひとはおなかがいたいのがなおらないといいました。

 ぴよぴよぴよ。

 ひよこはまかせてくださいといって、またもりのまじょにあいにいきました。

 まじょはひよこをみるとかわいいかわいいとおおよろこびして、ふしぎなくすりをくれました。

 ひよこがおとこのひとにくすりをわたすとすぐにのみこみ、いたいのがなおったとおおよろこびしたのです。

 ぴよっ。

 ひよこはまんぞくしてたびをつづけました。

 

 ひよこがまたこうえんをとおりかかると、おんなのこがさいたおはなをみてきれいきれいとおおよろこびしています。

 ぴよぴよ、ぴよぴよ。

 ひよこもなんだかうれしくなり、いっしょによろこびました。

 そこに、わるいおとこのこがあらわれておはなをむしろうとしたのです。

 おんなのこはやめてといいましたが、おとこのこはやめてくれません。

 ぴよ。

 ひよこがこまっていると、おとこのひとがやってきてわるいおとこのこをきびしくしかりました。

 おとこのこははんせいして、もうおはなをちぎったりはしませんとやくそくしました。

 ぴよっ。

 ひよこはまんぞくしてたびをつづけました。


 おしろにはいったひよこは、つまらなそうなかおでしょくじをするおうさまとであいました。

 ぴよ、ぴよ。

 ひよこがおうさまのそばにいきたずねると、えらいひとはしょくじはしずかにひとりでたべるものなのだといいます。

 おうさまのおとうさんもおじいさんも、しきたりでずっとそうやってきたのだとおうさまはつまらなそうなかおでいいました。

 ぴよぴよぴよ。

 ひよこはまかせてくださいといって、またもりのまじょにあいにいきました。

 まじょはひよこをみるとかわいいかわいいとおおよろこびして、ふしぎなふえをくれました。

 ひよこにはふえはふけないので、いちばでしょくじのざいりょうをかいにきたしんせつなおばさんにふいてもらいました。

 ぴーよー。

 ふえのおとがするといきなりめのまえにおうさまがあらわれました。

 おばさんのこどものひとり、わるいおとこのこがおうさまのひげをひっぱりましたが、おうさまはおこりませんでした。

 おうさまにそんなことをするものはおしろにはいないので、ひさびさのことにおうさまはゆかいにおもいました。

 せっかくだからとおばさんはこどもたちといっしょにおうさまにも、ごうかではないけれどあたたかいしょくじをごちそうしました。

 しょくじのあいだもこどもたちはおおさわぎをしましたが、おうさまはおこりませんでした。

 おうさまはこんなにあたたかくたのしいしょくじをしたのはいついらいだろうと、とてもかんげきしました。

 ぴよっ。

 ひよこはまんぞくしてたびをつづけました。


 よるになるとあたりはまっくらになり、ひよこはきゅうにこころぼそくなりました。

 ぴよ。

 ひよこはなきました。

 そこにいるのはだれだと、ひよこはやみのなかでひかるめにたずねられます。

 ぴよ、ぴよ。

 ひよこがじぶんはひよこですとなのると、ひかるめはあんしんしたようです。

 ひかるめは、これからおみせにぬすみにはいろうとしているどろぼうだとなのりました。

 どろぼうはほんとうはこんなことはしたくないけど、びょうきのかぞくがいるからしかたがないのだといいます。

 ぴよぴよぴよ。

 ひよこはまかせてくださいといって、またもりのまじょにあいにいきました。

 まじょはひよこをみるとかわいいかわいいとおおよろこびして、いちまいのかみきれをくれました。

 ひよこがかみきれをくわえてどろぼうのところにもどると、これがあればびょうきのかぞくをなおせるというのでひよこはどろぼうにかみきれをあげました。

 どろぼうはもうわるいことはやめるといって、さっていきました。

 ぴよっ。

 ひよこはまんぞくしてたびをつづけました。


 あさになりひよこがおしろのちかくをとおると、おひめさまがつまらなそうなかおをしてもんのむこうでたっていました。

 ぴよ、ぴよ。

 ひよこがおひめさまのそばにいきたずねると、おひめさまはおしろのそとにでてみたいのだといいます。

 おひめさまはとなりのくにのおうじさまとけっこんするまでは、おしろでおとなしくしてなければいけないのだといいました。

 おしろのまわりにはへいたいがたくさんいて、おひめさまをとおしてくれません。

 ぴよ。

 ひよこがこまっていると、どろぼうがやってきておしろからまちへのぬけみちをおしえてくれました。

 おひめさまはこうえんでおんなのこといっしょにおはなをみたり、いちばでみたことのないたべものをわけてもらったりしてたのしいときをすごしました。

 もうすきなときにいつでもまちへいけると、おひめさまはおおよろこびしたのです。

 ぴよっ。

 ひよこはまんぞくしてたびをつづけました。


 ひよこのいるくににわるいびょうきがはやりました。

 たくさんのひとがびょうきでくるしみ、なにもできなくなりました。

 そこにとなりのくにのへいたいたちがせめてきたのです。

 となりのくにのへいたいたちは、おうさまをつかまえてしまおうとおしろにせめました。

 でもおしろのなかにおうさまとおひめさまのすがたはありませんでした。

 おひめさまがぬけみちをつかって、ふたりはまちへにげていたのです。

 となりのくにとはけっこんのやくそくもあったのに、なぜきゅうにせめてきたのかおうさまにはわかりません。

 おうさまがあたまをかかえていると、ひよこがとおりかかりました。

 ぴよ、ぴよ。

 ひよこがたずねるとおうさまは、となりのくにのおうじさまとはなすことができたらいいのにといいました。

 ぴよぴよぴよ。

 ひよこはまかせてくださいといって、となりのくにのおうじさまにあいにいきました。


 ひよこがねこにのせてもらってとなりのくにのおしろにいくと、おうじさまはとてもこうかいしていました。

 ぴよ、ぴよ。

 ひよこがおうじさまのそばにいきたずねると、わるいまほうつかいからいうことをきかないとおまえのくにをほろぼすとおどされているといいました。

 ひよこはおしろのてっぺんのとうにすむわるいまほうつかいのところにいき、わるいことをやめるようにいいました。

 ひよこにめいれいされてあたまにきたまほうつかいは、おしろのにわにこうえんよりもおおきいみみずをよびだしてしまいました。

 みみずをあばれさせてこのくにをほろぼしてやるのだと、わるいまほうつかいはわらいます。

 ぴよぴよぴよ。

 ひよこはそんなことはさせませんと、ゆうかんにもみみずめがけておしろからまっさかさまにとびおりました。

 それをこっそりとみていたまじょは、ひよこにまほうをかけました。

 まじょはそのまほうをつかうと、もうにどとまほうがつかえなくなるとしっていましたが、ひよこのためにまよいませんでした。

 ぴよぴよ。

 こつんとひよこのくちばしがあたっただけで、みみずはあっけなくしんでしまいました。

 それをみたまほうつかいは、かんかんにおこってみみずよりもおおきなりゅうにへんしんしました。

 まじょはもうまほうがつかえないので、ねこにたのんでひよこをにがそうとしました。

 ぴよぴよぴよ。

 ひよこはにげませんといい、りゅうとたたかうといったのです。

 ゆうかんなひよこは、りゅうにまるのみされてしまいました。


 もりでくらすまじょはどうぶつがすきで、ねこやことりをかわいがっていました。

 でもにんげんはあまりすきではありませんでした。

 ほかのひととちがうからと、まじょはちいさいころにのけものにされて、もりでひとりでくらしてきたのです。

 かわいいひよこのために、まじょはわるいびょうきをなおすくすりをつくってびょうきのひとびとをなおしました。

 ひとびとはまじょにかんしゃしましたが、まじょはひよこのためにやったのだといい、もりにかえりました。

 おうさまはへいたいたちや、まちのひとにいいました。

 ちいさなひよこのように、ゆうきをもってりゅうとたたかおうといったのです。

 おうさまのくにのへいたいも、となりのくにのへいたいも、まちのおとこのひとも、おばさんも、どろぼうも、こどもも、ねこも、みんながさんせいしました。

 みんなはひよこのしるしのはたをつくり、こころをひとつにしてとなりのくにのりゅうをたおしにいきました。


 りゅうはやってきたひとびとをみて、にんげんなどなんにんいてもこわくはないとわらいました。

 へいたいたちは、りゅうのからだにくさりやあみをなげてみうごきできなくしました。

 ぎゃあ。

 おとこのひとは、りゅうのめにすなをなげました。

 ぎゃっ。

 おばさんは、にえたぎったあつくてからいしるをりゅうのくちになげこみました。

 ぎゃおっ

 どろぼうは、りゅうのからだにはえているうろこをもぎとりました。

 ぎゃおうっ。

 おんなのこは、おはなでりゅうのはなのあなをくすぐりました。

 ふぁっ。

 おとこのこは、りゅうのはなげをぶちっとひきぬきました。

 ふぁっくしょーん。

 りゅうはおおきなくしゃみをしたのです。

 ねこは、りゅうがはきだしたちいさなひよこをすばやくつかまえました。

 ぴよっ。

 ひよこはりゅうのおなかのなかでいきていたのです。

 みんなはひよこのぶじなすがたをみて、おおよろこびしました。

 りゅうはひよこいっぴきでそこまでよろこぶにんげんたちにとてもはらをたてて、からだをしばっていたくさりやあみをひきちぎりほえました。

 ぎゃおおおお。

 ひよこもまけじとゆうかんになきました。

 ぴよぴよっ、ぴよぴよっ。

 するとそのこえをきいてそらからおおきなおおきな、おしろよりもおおきなとりがあらわれました。

 ばくり。

 おおきなとりはりゅうをひとくちでたべてしまいました。

 それはひよこのほんとうのおかあさんでした。

 おかあさんはいじわるなからすにたまごをとられてしまって、ずっとひよこをさがしていたのだといいました。

 おかあさんはひよこに、いっしょにとりのくににかえろうといいました。

 ぴよ。

 ひよこはかなしいけれどことわりました。

 おうさまがひよこに、おしろでくらそうといいました。

 ぴよ。

 ひよこはことわりました。

 おじさんがひよこに、きょうだいたちとまたのうかでくらそうといいました。

 ぴよ。

 ひよこはことわりました。

 ねこがひよこに、きままにまちでくらそうといいました。

 ぴよ。

 ひよこはことわりました。

 ひよこはまじょのくらすもりへといきました。

 まじょはひよこをみるとうれしいうれしいとおおよろこびして、ふたりはなかよくくらしました。

 ひよこのいるくにととなりのくには、おうじさまとおひめさまがけっこんしてひとつのくにになりました。

 ひよこのはたをくにのはたにして、ゆうかんなひよこをいつまでもたたえたのです。

 ぴよぴよ。

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