2月14日(金) 【1】 長女・理沙 「胸のおくに宿った未来」
ハッピーバレンタイン♡
お父さん♡♡
はい――
愛をこめた手作りチョコです♡
どうか受け取って――
食べてください。
私の想いといっしょに――♡
そして、今回のチョコには――
お父さんの願いがかなう、おまじないをかけています。
巴ちゃんがアンティークショップで手に入れたという古文書に書かれていたのですが――
効き目があるといいな。
お父さん、何か願ってみてください♪
急に言われると難しいかしら。
あら、チョコがかがやきだしました!
どんどん大きくなる光に包まれると、ここは――
結婚式場……!?
あちらでキスを交わしている、タキシードとウェディングドレスのふたりは、もしかして――
ううん、まちがいなく――
数年後の、お父さんと私ですね……!
……それにしても。
ふたりのキス、長すぎないかしら。
みんなの前で、あんなに熱いキスをするなんて。
未来の私は、どうなっているのかしら……!
でも、こんなに幸せなキスなんだもの――
ずっと見ていたいな――♡
と、思ったら。
今度は……お家の中ですね。
今と少しレイアウトが変わったリビングのソファ。
その上でだきあう――
お父さんと私……!
ふたりは、まるで恋人――
いえ、きっと、さっきの結婚式の後の夜だから――
新婚さんなんですね!
だから、こんなにも情熱的……♡
でも、さっきから、私ったら――
自分の胸に、お父さんをうずめすぎじゃないですか!?
いえ、謝らないでください、お父さん。
あれはどう見ても、私がしているんです……!
お母さんがよく、私たち娘を、あの大きくてやわらかな――
包まれるとほっとする胸に、だきしめてくれるけれど。
大人になった私も、同じことをするんですね……。
相手は、娘じゃなくて、お父さんですけれど♡
ああすると自分もほっとするから――
愛しい人を一番近くに感じられるからかもしれません。
あら、今度は、私がお父さんの手を引いて、立ち上がりました。
向かう先は――
私のお部屋……!
とても幸せそうな――
期待に満ちた目をうるませています……。
そして、ドアを閉じて――
え――
残念。
この先は見せてもらえないんですね。
でも、きっと――
これまでの日々で、一番幸せな気持ちになっていると思います♡
ほら、一晩経って――
お部屋から出てきました。
私ったら――
さっきよりずっとお肌もつやつやで、鼻歌を歌いながら、スキップなんてしています!
そして、お父さんのほうは――
少し、おつかれのようですね。
一体、お父さんに何をしてもらったのかしら。
……未来の私は、とっても甘えんぼうみたい!
それから、少し時が過ぎて……?
おぎゃあ、おんぎゃあ――
元気な赤ちゃんの声!
なんて可愛いのかしら……♡
さあ、お顔を見せて♡
ああ、これが――
私の赤ちゃん……!
お父さんと、私の赤ちゃん♡♡
前にも会ったことがあるような気がしますが――
よく思い出せないわ。
まだ未来が定まっていないからかしら。
愛しい赤ちゃん――
今すぐだきしめて、おっぱいをあげたいわ♡
でも、それをするのは未来の私。
だから、少しだけ待ってて。
絶対、絶対に、会いに行くからね……♡
夢のような未来の景色。
いつまでも見ていたいけれど――
そろそろおしまいのようですね。
“今”にもどるときが来たみたいです。
こんなに素敵なことが起きるなんて――
お父さんはチョコに何を願ったんですか?
まさか、私と――!
……私たちに幸せになってほしいと願った??
私の幸せは、お父さんと……結ばれること。
だから、あんな未来が見えたんですね。
あれを、チョコが見せた未来で終わらせたくありません。
絶対、絶対に、あの未来に会いに行きます。
だから、ふたりで見た未来が本当になるよう――
これからもよろしくお願いします♡