6月16日(日) 【5】 三女・凛 「太陽の近くで」
すごい水しぶきを上げながら、もどってきたわね。
ビニールボートに、あんなスピードが出るなんて!
もう、びしょびしょじゃない。
……体をふいたら、ついてきて。
いい場所を教えるから。
ホテルの最上階からつながる、おかへの道――
そのてっぺんよ!
島中が見わたせるでしょう♪
ここなら、あんたがどこにいたって、すぐに見つけられるわ。
かくれることなんて、できないんだから♪
もちろん――
ボートの上で、巴としていたことだって、お見通しよ。
あんなに顔と顔を近付けて――
何をしていたの?
……言わなくても、いいけれど。
え、ほっぺたを引っぱり合っていた?
何しているのよ!?
巴のほっぺは、よくのびるものね……。
それで、あんたのほっぺ、少し赤くなっているのね♪
ちゅ。
ふふ、少しだけ熱いわ♪
それに、巴の味もするかも♡
ねえ、私、考えていたの。
この旅行で、あんたを一番いやせるのは、どんなことかって。
とにかく、ゆっくりしてほしいから――
私たちがあまり関わらずに、そっとしておくほうがいいのかも、とも思ったわ。
でも、巴たちと、あんたの顔を見ていると――
やっぱり、自分がしたいことをするのが、いいのかも。
私、人前では、自分のしたいことって、あんまりできないけれど。
こんな、おかの上なら、ぎゃくにだれにも気付かれないと思うし、開放的になれる気がするわ。
だから、パパ。
少しの間、だきしめてみる。
パパは……何?
そうやって、ただだきしめられて、ぼーっとしているつもり?
だきしめ返してみたり、してもいいと思うな。
いつも、きれいってほめてくれる、私のかみだって、ここにあるわよ。
海水とアセで、少しぬれているけれど♪
そこに、パラソルとビーチチェアもあるわ。
太陽だけに見守られながら――
少しだけ、ふたりでいましょう……♡




