2月14日(水) 【4】 風紀委員の凛 「あなたが解いて広がる世界」
ちょっと、あなた。
最近、翔子さんだけでなく、理沙さんとも仲が良いようね。
って、聞いてる?
あなたよ、あーなーた!
もう、私が話しかけているのに、ぼんやりするなんて。
相変わらずね。
それで、言いかけていた件だけれど。
最近、三人で何しているの?
珍しい取り合わせだから、気になるでしょう?
……友だちになるのに、珍しいも何もない?
うっ、それはそうね……!
でも、心配なのよ。
理沙さんは、とてもおとなしくて、真面目で、素敵な人。
それが、あなたのような――
のほほんとしていて、つかみどころがなくて――
それでいて不思議と気になってしまうような怪しい人と、突然仲良くなっていたら。
何があったのかと思ってしまうでしょう?
……そんな風に思っていたなんて意外?
どういう意味よ??
不思議と気になってしまうって、どういうことかって?
あ、それは――
忘れて!
私があなたをいつもに気にかけているなんて――
自分の気持ちがよくわからなくて、つい口うるさく言ってしまうなんて――
そんなこと、あるわけないんだから!
それで、三人はいつも何を――
って、夏休みにプールに行く!?
そんな、水着になって三人で楽しく遊ぶなんて。
そんな、そんな――
え、私も来ないかって?
いいの!?
あ……おほん。
そうね、ついていったほうがいいかも♪
日頃から怪しいと思っていたあなたの行動を、間近で観察できるいい機会だわ♪
それで、みんな水着はもう買ったの?
あら、準備は万端なのね。
じゃあ、浮き輪は?
ビーチボールは?
……水着を買うなら、ついていってあげるですって!?
別に、そんなこと頼んではいないけれど――
ありがとう。
どんなものを買えばいいかわからないから、アドバイスをお願いするわ――。
-
もうすぐ夏休みが終わるわね。
この夏は、あなたたちとプールへ行ったり、海へ行ったり、山へ行ったり、バーベキューをしたり――
今までで一番楽しい夏だったわ。
見て、すっかり日焼けしちゃった♡
理沙さんはもちろん、翔子さんも、あなたも――
特に怪しいことをしているわけではないことがわかったし。
私も安心して、監視を解けるわ。
でも、もしよかったら――
これからもときどき、誘ってもらえたら嬉しいかも――。
私からは誘わないのかって?
いいの、誘っても!?
あ……おほん。
それでは、明日――
駅横のコロッケ屋さんの前で、ふたりで会わない?
急だって?
いいでしょ。
私のこんなわがままに付き合ってくれるは、あなただけなんだから――♡
そういえば――
あなたはもう会った?
一年生にアイドルの女の子がいるのよ。
美貴さんっていって、すっごく可愛いわ♪
チャンネルの動画、全部見ちゃった♡
知らない?
意外ね、あんたのことだから、こういうのに目がないと思っていたわ。
だったら、明日、動画を見せてあげる。
いっしょに見ましょ♪
-
とうとうバレンタインデーね。
浮ついた空気を引き締めるべき私が、この日をこんな気持ちで待つときが来るなんて。
あなたと出会うまで、想像もできなかったわ。
もう、あなたを見張るとか、目の届くところから逃したくないとか、そんなことは言わないわ。
ただ、その日が来たら――
私に会いに来てほしいの。
自分の気持ちを抑えて、真面目に、慎ましく生きようと努めていた私を、こんな風に変えてしまったこと――
責任取ってもらうから。




