8月14日(月) 次女・翔子 「ヒミツ基地のとー坊」
今年の夏もやってきた、とーちゃんとかーちゃんの実家。
来るたびに、新しい場所へ行けるようになって楽しいな♪
まだまだボクらの知らない場所がありそう♪
今日のタンケンは、お山!
木にかくれた道もあって、調べがいがありそうだよ。
とーちゃんが昔使ってたヒミツ基地って、あっち?
緑のトンネルの先って聞いたケド――
ホントだ、木と木の間に、小さなぬけ道がある!
ねぇ、とーちゃん、先に行ってるよー!
ここが、とーちゃんが子どものころのヒミツ基地――。
古いソファにラジカセ、ダンボールの仕切り、えい画のポスター。
思ったよりキレイだね。
今も使ってるみたい。
大きな木の枝で、雨も防げそうだケド、陽ざしは当たるし、目の前には小川もあって、いいながめ♪
何なら、とまれそうだね♪
とーちゃんおそいな、もどってみようかな?
ん、あれは――
男の子だ。
どこかで見たような気もするケド、だれだろう?
こんにちは!
このへんの子?
ボクより一つ下くらいかな?
おどろいた顔して、どーしたの?
何でここを知ってるかって?
それはね、とーちゃんが教えてくれたんだよ♪
キミも遊びに来たの?
よかったら、いっしょに遊ぼっか♪
あれ、どうしたんだろ、ボク――。
この子を見てると、何だかお顔がアツくなってくるよ!
クラスの男子にも女子にも、こんなキモチになったコトないのに。
今まであるとしたら、それはとーちゃんくらい――
あ、もしかして!
ねぇ、キミ、ちょっと服をめくって見せて?
わあ、やっぱり――!
ほくろの場所が、おんなじだぁ♡
キミのコト、今から、とーちゃ――
ううん、とー坊ってよんでいい?
それとも、名前を教えてくれたら――
とー坊でいいの?
やった、それじゃよろしくね、とー坊♪
仲よしのハグしよ♡
アセかいてるって?
ボクもだから、へーき♪
いいじゃん、いっしょにもっとアセだくになろ♡
ぎゅ~♡
このサイズでも、やっぱり落ち着くな……。
カワイイ弟ができたみたい♪
わ、とー坊ったら、顔真っ赤!
ごめんね、いきなりこんなにハグして、はずかしかった?
でも、ボクはとー坊ともっと仲良くなりたいから――
イヤじゃなかったら、もっとしたいな♡
せっかく川があるから、魚つりしよっか♪
いや、つりざおがないから、魚とり!
このへんは魚が多いから、こうして石で流れを変えてやれば――
ほら、どんどん集まってくるよ!
このやり方、とーちゃんに教えてもらったんだ♪
とーちゃんは、色んなコト知ってて、ボク大好きなんだよ♡
お魚たち、もう少し集めたら、にがしてあげよっか。
ぴちぴちしてて、元気だなーっ!
わあっ、と、しりもちついちゃった。
パンツまでびしょびしょだよ~!
ま、いい天気だから、ヒミツ基地にほしてたら、すぐかわくよね♪
とー坊の服もぬれちゃってるし、ぬいだら?
ボクらの他にはだれもいないから、大じょうぶだよ♪
ボクだってホントは、男子の前でこんなかっこうしないケド――
とー坊は特別なんだ♪
そーだ!
もしかして、今日って――
この山の下で、夏祭りがあるよね!?
やっぱり!
いっしょに行こーよ!
持って来たリュックの中に、浴衣も入れてあるんだ。
いっしょに夜店を回ろ♪
あ、とー坊は時間、大じょうぶ?
今日は平気?
ボクも大じょうぶ!
こういう場合は、時間の流れがフツーとちがって、後から何とかなるものなんだって、巴が言ってた♪
巴っていうのは、ボクの妹で、物知りで可愛いんだよ♪
他にも、ボクには姉妹がたくさんいるんだ。
理沙姉はとってもたよれるカワイイ姉ちゃん。
凛はキモチがすぐに顔に出るカワイイ妹。
美貴はアイドルみたいカワイイ妹で――
華弥はお姫さまみたいにカワイイ妹。
愛はしっかり者のカワイイ妹で――
優結は食いしんぼうなカワイイ妹♪
みんな、ボクといっしょで、とーちゃんが大好きなんだ♡
とー坊も、いつかきっとみんなに会えるよ。
よし、おきがえ完りょう!
どう?
さっきより、とー坊のお姉さんらしくなったかな?
もう、ちゃんと見てよ~!
そして、可愛かったら、可愛いって言って!!
あはは、ありがと~。
何だか言わせたみたいになっちゃったね!
じゃ、行こっか!
うーん、気になる景品がいっぱい……!
ついつい妹たちがほしがるものをさがしちゃうな~。
これは、昔のアニメのシール……!
愛が最近はまってるんだよね。
え、昔じゃなくて、今やってる?
そっか、そうだったね!
あんまりたくさんは持って帰れないカモしれないケド、シールくらいならいけるかな?
輪投げにちょうせん!
えーい、あれっ!
いつもは絶対ミスらないのに~!
次はとー坊の番!
すごい、一発だ!
このシール、くれるの?
ありがと!
大切にするね♡
あ、そろそろ時間だ。
あっちの河原に行こ!
キレイな花火――。
こうしてふたりきりで見上げていると、何だかフシギ。
年の近い男の子に、こんな気分になるなんて、ボクはフツーないからね。
ねぇ、とー坊って、好きな人いる?
近くに住んでる沙織さん?
眼鏡をかけてて、おとなしくて、優しい子なんだ。
おさななじみだケド、最近はあんまり話せていないんだね。
いつかその子と、また仲良くなれたらいいね――。
ボクのかーちゃんも、小さいころ、その沙織さんみたいな性格だったらしいよ。
好きな男の子に、全然話しかけられなかったんだって。
でも、今はその男の子――とーちゃんと、とっても仲よし♡
ボクの好きな人?
うん、いるよ。
ボクよりずっと年上だケド――
とー坊にとっても似てるんだ。
今、自分じゃないのかあって、がっかりしなかった?
してない?
それはそれで、ボクがくやしいよ~!
でも、とー坊には沙織さんがいるもんね!
そろそろヒミツ基地にもどろっかな!
とー坊も行くの?
じゃあ、いっしょに帰ろう♪
……もう、着いちゃったね。
送ってくれてありがとう。
今日はここでさよならだケド――
きっとまた会えるよ。
とー坊が大人になったとき――
ボクがゼッタイ、会いに行くからね!
ホントは、キスでもして、お別れしたいケド。
今は、おでこでガマン――♡
ボクはもう一度、緑のトンネルを通って帰るよ。
それじゃあ、また明日――。
わ、とーちゃん!
おっきくなってる!
いや、こっちの話。
ヒミツ基地ってすごいね!
楽しいコトがたくさんあったよ♪
五分くらいで何があったのかって?
それは、ひと夏の恋――
かな。
なんてね~!
とーちゃんは、昔ここで何かなかった?
とっても素敵なお姉さんに会ったとか☆
今の顔、何か思い出したよね!?
言わなくていいよ!
これは、とー坊とボクのヒミツ――♡