2月14日(火) 【3】 三女・凛 「ナイト・フェスティバル」
カボチャ大明神から飛びおりた先は、小学校の屋上。
あんた、小学校の中なんて、ふだんは来ないでしょう?
案内してあげましょうか♪
こつ、こつ、こつ、こつ――。
カボチャたちも、ようち園のお友だちも、はぐれてしまったみたいね。
静かなろうかに、ふたりの足音だけがひびくわ。
どこに向かっているかって?
さあ、どこかしら。
でも、楽しいところよ♪
特に、あんたのような――
おひとよしのパパにはね♡
気付いた?
外はいつの間にか――
もう夜よ。
そして、私は――
そのけんぞく。
この闇にとけるようなマントと、血のように赤いうらじに、見覚えはない?
そう、私はヴァンパイア。
ジュースより甘いパパの血を求めて、ここまでつれてきたってわけ♡
ライトアップ!
かかかかかっ!
ここは運動場。
そして、まわりには――
たくさんのモンスター♪
ゆかいなホラーステージの始まりよ!
ケルベロスにオオカミ人間、アクマに黒ネコ――
みーんな、パパをねらっているわ♪
にげばなんてないんだから♡
だって、さっきのカボチャたちも、ようち園のおともだちも、モンスターの仲間になっちゃったし――
小学校のお友だちも集まってきているからね!
校しゃのあちこちで灯るのは。
クラスメイトのいすずや、六年生の百合奈さんや、一年生の可奈絵さんたちが――
それぞれの教室で楽しいイベントをしている、しるし。
パパをねらっているのは、私を入れて、九人のモンスターだけだけれど――
みーんな協力者よ♪
にげ切れるかしら?
この小学校から♪
にげる必要はない?
そ、それはそうね……。
だったら、追いかけっこはやめて――
今度こそ案内してあげる。
それぞれの教室では、輪投げやヨーヨーつりに、屋台もあるの!
ゆっくり楽しみましょ♪
ふふっ、楽しい――♪
ねぇ、このバレンタインが終わっても、こうして遊びに行きましょうね。
たくさん遊んだら、のどがかわいちゃった。
パパの血、少し分けてくれない?
少しならいい?
もう、私はヴァンパイアよ。
そんなにすなおに首すじを差し出すなんて――
本当におひとよしね♡
それじゃあ、遠りょなく――
って、みんながこっちを見てる?
ちょっと、これはいけないわ!
さすがにこれだけ大ぜいに見られながらなんて、はずかしい……。
パパ、こっちへ来て!
人目のないところへ行くわよ!
どうして追いかけてくるの――。
……パパをねらってるのは私だけじゃないから?
そうだったわね――!




