12月17日(土) 三女・凛 「スペシャル・デイ」
今日は何の日か覚えてる?
もちろん、デート……?
ええ、そうとも言うわね。
もう決まっていることだから、早く行くわよ!
何よ、言いたいことがあるなら言いなさいよ。
おしゃれがにあってる?
な、何言っているの!?
おしゃれなんてしていないわ、いつもどおりよ♪
あんたこそ、気合いが入っているんじゃない?
先週の華弥とのデートと同じ服で♪
よく覚えている?
当たり前じゃない♪
あんたが、華弥に失礼な服を着て行かないか、しっかり見ていたもの。
何申しわけなさそうにしているの?
同じ服だから?
そんなこと――
それは、あんたが私を、華弥と同じように思ってくれているってことでしょ。
私は、あんたの服が何だって気にしないわ。
ジャージでもいいくらいよ♪
父娘ってそういうものでしょう。
いっそ半そで短パンなんてどうかしら♪
それは寒い?
そうね、翔子姉さんじゃあるまいし♪
それで、どこに行く?
行きたいところはあるかしら?
もし、特になかったら、街を歩いてみましょう。
たぶん、あんたがまだ見ていないイルミネーションもあるのよ。
それから――
手。
つなぎましょう。
でも、道はばがせまいところでは無理につながず、たて一列になって歩くこと!
ふんっ、あんたの先をこしてやったわ♪
私と手をつなぐかどうか、まよっていたでしょう?
そうやって気を使うあんたのために――
私から言い出すって決めていたのよ。
まよわず手をつなぐつもりだった?
ふぅん……強気なのね!
――こんなおしゃれなカフェ、入っていいの?
親子で来ているお客さんなんて、いないみたいだけれど。
気にすることじゃない?
そうかもしれないけれど――
まるで、デートみたいじゃない!
最初からそのつもり?
それは私だって……そうだけれど。
あんたって、娘相手でもちゃんとデートできるのね。
理沙姉さんや華弥が、先週あんなに喜んでいたワケがよくわかったわ。
もし、いつか彼氏ができたら――
こんな感じなのかなって、思えるもの。
……いちおう、あんたがそうだったわね。
父親なのに彼氏なんて、ヘンな感じ。
私が望んだことだけれど。
あんたがどこまで本気で受け取っているかわからないけれど――
少しは信じてもいいのかもしれないわね……。
ずいぶん暗くなってしまったわ。
冬ってやっぱり早いわね。
でも、イルミネーションにはちょうどいいの♪
ほら、こっち。
小さなスペースで、人もあまりいないけれど。
きれいでしょう♪
この、つつましくも、あざやかな、赤く光るハートのオブジェ。
ネットで地図を調べて見つけたのよ。
ねぇ、少しだけ――
ほっぺをかしてくれない?
もう、かがんで、って意味!
……もう少し。
そう、そのまま動かないで――
ちゅ。
……ふぅ、できた。
今日は、付き合ってくれてありがとう。
あんたがよければ、また来ましょう。
え、お返し!?
……わ。
ありがと。
あ、目をつぶるのわすれた。
あんたの顔、まともに見ちゃったじゃない……!
ゼッタイ、ユメに出るわ……。
お家へ帰る前に。
せっかくだから、みんなをよびましょう。
私たちを見守ってくれているはずだから。
お~い、出てきて~!
ハートの前で、記念さつえいをするわよ――♡




