6月20日(日) 【6】 三女・凛 「言葉をつくして ~戦いの間~」
何だかこわいイメージのあった魔物の国だけれど、意外にもかんげいムードね。
道中のあれこれで、私たちが――
真実の愛を手にした伝説の恋人たち――
なんて、かんちがいされているからかしら。
ほら、トカゲ族の赤ちゃんも、こっちを見て笑っているわよ。
赤ちゃんは、どんな種族もおんなじで、可愛いわね♪
でも、わすれてはいけないわ。
ここは、魔界――。
どんなに平和そうに見えても――
妖精界と、週に一度は、はげしい戦いをくり広げているんだから!
戦いの種類は――
水泳や徒競走、ボードゲームに早おしクイズ等々――
それぞれの種族が平等に活やくできるよう、たくさん用意されているらしいけれど。
どれも真けん勝負であることに変わりはないわ!
のんきに見えても、みんなやる気に満ち満ちているのよ……!
そんな、妖精族と魔物族の、大事な勝負に――
人間族代表として参加することになった私たち。
不安だけれど、泣き言は言っていられないわよね!
妖精さんも魔物さんも、急にやってきた私たちに、こんなによくしてくれているんだもの。
その気持ちにこたえなきゃ!
今日の勝負は、スピーチ大会。
参加者が一番好きなものについて、そのすばらしさをしょうかいするんですって。
しょうかいするものは、本当に一番好きなものでなければいけなくて――
ウソをついたら、このタリスマンが青くなるそうよ。
ま、こんなところでウソをつく必要なんかないわよね。
私の好きなものは――
アイス♪
そのおいしさについて、しっかりお話ししてくるわ♪
え、なんで――
タリスマンが青くなるの?
じ、じゃあ――
ペンギン!
あのフォルムの愛らしさとたくましさ、子育ての時のいじらしさ、いくらでも語ってあげるんだから♪
あれ、これもダメ――
また、青くなった。
だったら、やっぱり――。
……あんた、ちょっととなりに来てよ。
そして、私の手をにぎってて。
こっちは見ないで!
……私は、世界で一番大好きな――
家族のすばらしさについて、話します!
よかった――
タリスマンが、あたたかいピンクになったわ♪
まず、父さん……父は――
優しくて、家族を大事にしてくれて――。
……言いたいことが、まとまらないわね。
順番に、私が赤ちゃんのときのお話から始めようかしら。
あれは、私が生まれた日のこと。
私は写真でしか知らないけれど、父は、私をだいて、幸せそうに笑っていて――。
言葉が止まらないわね――。
このスピーチに、時間せいげんはあるのかしら?