7月1日(月) 長女・理沙 「雨を聞いている」
雨の日。
放課後の図書室。
百合奈さんたちは用事で少し外していて、私だけが受付でお留守番――。
いつもよりもっと静かな時間。
聞えるのは、遠くの席でだれかが、ときどきページをめくる音。
そして。
ざあざあ、ざあざあ――。
窓の外で落ちている、雨つぶの声だけ。
そうしていると、何だかぼーっとしてきて。
ついつい、ここにいないだれかのことを――。
大切な人のことを考えてしまいます。
毎日同じお家でねて、起きて、暮らしているのに。
日によっては、ほんの少ししか会えない――
お父さん。
今ごろは、お仕事しながら、私と同じ雨音を聞いているのかな。
それとも休けいしているのかな。
お外で働いているのなら――
この天気だと大変だろうな。
いつも、私とはなれたところで、がんばっているお父さん――。
お帰りになるまで、私には――
こうして、お父さんを想うことしか、できることがありません。
想って、考えて、頭の中で言葉を並べて。
そんな時間ばかり、長くなっていく気がします。
もし、これから雨がどんどん強くなって――
それなのに、お父さんが、かさをどこかへ忘れてしまったら。
どうしましょう――。
そんなときは、すぐに私を呼んで。
お父さん用の大きなかさを持って、かけつけます――!
どしゃぶりのかべに囲まれた、かさの下は――
ふたりだけの世界。
お父さんのうでの中みたい……♡
ざあざあ。
ざあざあ――。
激しい雨の中でなら。
私の胸にたまった気持ちと言葉――
大きな声でさけんだって。
だれにも聞こえないかしら――?