4月25日(土) 【2】 凛 「最悪」
……最悪。
まさか、書く日記を間違えるなんて。
最近、当番が回って来なかったから、油断していたわ。
昨日の日記のことは忘れて。
出来れば、そのページは塗りつぶして、なかったことにしてちょうだい。
……と思ったけれど、美貴が大騒ぎしたせいで、家中に広まってしまっているわね。
今更なかったことにはできないだろうし、少し説明させてもらうわ。
念のために言っておくけれど、日記で書いてる“あいつ”って、あんたのことじゃないからね!
美貴が勝手に勘違いしているだけよ。
私があんたのために髪を手入れするとか、料理を勉強するなんて、あり得ないんだから!
“あいつ”っていうのは、その……
私の、彼氏よ!
私にも彼氏くらいいたって、おかしくないでしょ?
もう10代だし!
彼はね、私よりずっと年上で、すごくかっこいいのよ。
優しいし、頼りになるし、理想のコイビトだわ。
だからあんたとは、ぜんっぜん、関係ないの!
前にあんたがくれた、縁結びのお守り。
あれのご利益かしらね。
おかげで最高の彼氏が出来たわ。
どう?
少しは寂しいのかしら?
昨日は彼とちょっとケンカして、弱気なことを書いてしまったけれど。
本当はとっても仲良しなんだから!
2人の仲は順調なのよ。
でも、家族の日記にそんなことを書いてしまったのは、失敗だったわ。
そのことは、謝らないといけないわね。
ごめんなさい。
彼との日々は、別の日記に書いているの。
人に見せるようなものじゃないから、私の部屋に隠しているわ。
もし探そうなんてしたら……
末代まで、呪うわよ。




