4月24日(金) 凛 「夢の中では」
今朝もまた、あいつに髪をほめられた。
「髪、いつもさらさらでキレイだね」って。
今週だけで、もう5回目。
他に言う事はないの?
私のいいところは髪だけ? って思う。
でも、ほめられるとやっぱり嬉しい。
あいつには、絶対そんなこと言わないけれど。
だから今日も、手入れは完ペキ。
お風呂から上がったら、すぐに髪を乾かして、しっかりと、とかすの。
美貴みたいに髪型をアレンジするのもいいけれど。
私があいつにアピールするには、素のままが一番だと思う。
目標は、ママや理沙姉さんみたいな髪。
2人ともキレイなストレートで、つい見とれてしまう。
あいつももっと、2人の髪もほめてあげればいいのに。
最近は理沙姉さんを見習って、少しずつ料理も勉強している。
もしいつか、私が一人で、おいしい料理を作れるようになって。
それを食べたあいつが、少しでも喜んでくれたら。
とても幸せな気持ちになれると思う。
私には、そんなことくらいしか、できない。
もし私が考えていることを、全部知られてしまったら。
この日記に書いていることを、全部読まれてしまったら。
きっとすごく迷惑をかけるし、悲しませてしまう。
嫌われるかもしれない。
二度と会えなくなるかもしれない。
そしたらもう、生きていけない。
そうならないように、もっと、強くならないと。
だけど……もう少しだけ、好きでいさせて。
今日もないしょのお守りに、こっそりおまじないをする。
どうせ、効くわけなんてないから。
どうせ、叶うわけなんて、ない、から。
……何だか、ちょっと弱気になってしまった。
おまじないを始めてから、少しは強くなれたと思っていたのに。
こんな日は、あいつの写真を見つめて寝よう。
枕の下に入れて寝たら、いい夢が見られるかも。
夢の中でくらいは……
結ばれたって、いいよね?




