8月25日(木) 三女・凛 「おさない気持ちの行く先は」
華弥と愛は――
お付き合いから、始めるらしいわよ。
結婚は、もう少し大人になってから、考えるんですって。
小さい子って、結婚ごっこが好きよね……。
どうしてなのかしら?
華弥がなやんでいたから、少し話を聞いたのよ。
「愛からプロポーズされたけど、愛もお父さまもすきだから、こまってる」って話をね。
――まったく。
そんなこと、真けんに考えなくていいのに……。
そんな気持ちなんて、どうせ――
大きくなったら、わすれたり、変わったりするものなんだから。
……というか、そうじゃなくちゃいけないし。
でもきっと、華弥や愛にとっては、大事なことなんでしょうね。
おさないときの、そういう気持ちは――
私も、分からなくはないわ。
だから、華弥が愛と話をするとき――
ついていってあげたのよ。
こういう話に、横から入るのって、どうかなとは思ったけれど――
私は二人の姉だし、人生の先ぱいだものね♪
華弥は、「お父さまが好きだから、愛とは結婚できない」とか――
そういうことを言って、ことわっていたわ。
何だかもったいわね?
私から見れば、あんたなんかより愛のほうが――
よっぽど、たよりになると思うのに♪
愛は、何だか、なっとくいかないようで――
「愛のおよめさんになって、かぞくになってよ。ずっといっしょにいようよ」って――
悲しそうな顔をするの。
……こじれそうだったから、間に入らせてもらったわ。
愛も華弥も、私も、ママも……
パパもみんな、もう家族でしょう?
無理に結婚しなくても、ずっといっしょにいられるのよ。
だから、何も心配しなくていいのよ。
――ってね。
愛たちだって、そんなことは、わかっているでしょうけれど――
一度こだわりだしたら、なかなか気持ちがおさまらないようだから――
少し、おせっかい。
よけいなことかも、しれないけれどね。
別に、「そもそも親子や姉妹で結婚なんてできないんだから、考えるだけムダなのよ!」って、きつ~く 言って――
泣かしたりはしていないから、大じょうぶよ?
どこかのだれかさんと、ちがってね!
二人が落ち着いた後――
改めて、今度は華弥が愛に、「おつきあいから、はじめましょ」なんて、言っていたわ。
そんなこと、どこで覚えたのかしらね?
ま、この家のかんきょうなら――
どこで覚えてもおかしくない、か。
愛もうれしそうに、「うん!」って返事をしたけれど――
その後、華弥は、ここぞとばかりに、今まで言いたかったことを、色々言い出したの。
ちゃんとお野菜も食べなさい、とか――
お姉さんなのは自分だから、もっとたよって――
とかね。
愛も、言い返したりして――
しばらく、やり合っていたわ。
ああいうのを、チワゲンカって言うのかしら?
後で様子を見に行ったら、二人で手をつないで、アニメを見ていたから――
仲直りは、あっという間に、すんだみたいよ。
そういう、じょうきょうだから――
あんたも今夜は、わかい二人のジャマはせず――
たまには一人さびしく、すごしたらどう?
もし、どうしても、だれかにかまってほしいなら――
話相手くらいには、なってあげるわ♪




