7月24日(日) 三女・凛 「ソラ色のイルカ」
昨日の優結には、思わず――
笑っちゃった♪
ぬれたタオルを、お風呂から引きずって、部屋まで持っていこうとしていたから――
おどろいて、止めたわ。
どうしたのかと思って、話を聞いてみたら――
お風呂に入りながら、お気に入りのサメのタオルで、遊んでいて――
そのまま、部屋でいっしょに、寝ようとしていたそうよ。
「こんなことしちゃダメよ。お家の中が、ぬれちゃうでしょ?」って言ったら――
「ぬれてないと、さめさん、げんきないもん」ですって。
何だかおかしくなって――
怒れなくなっちゃったわ。
変な遊びを、次々考えつくわね……。
おかげで、ぬれたろう下を、ふかないといけなくなったけれど。
でも、サメのタオルといっしょに寝たかったってことは――
あのびしょびしょのタオルを、ベッドまで持っていくつもりだったのかしら?
本当に、あぶないところだったわ……。
あんたも、お風呂に入れていたなら、もっとしっかり、見ていなさいよ!
愛や華弥の世話もあるから、ばたばたするのは分かるけれど――
そんなときは、私だっているんだから、言いなさいよね!
優結には何とか、「サメさんは、お部屋までは行けないよ」ってことを言い聞かせて、タオルは回収したけれど――
代わりに、イルカのぬいぐるみをあげたわ♪
何でもダメって言うだけじゃ、かわいそうだものね?
あんたは覚えてる?
あのイルカのぬいぐるみは――
あんたが私に、買ってくれたものだったのよ?
私が優結くらいの、としのとき――
家族で水族館に行くのを、楽しみにしていたけれど――
熱が出てしまって、ママと私だけ、残ることになったの。
それで、あんたが、すねてる私のために、おみやげを買ってきてくれるって話になって――
そのときの、おみやげが、イルカのぬいぐるみだった、ってわけ。
私は、ペンギンのぬいぐるみが、ほしかったから――
当てが外れて、さらにすねてたわ……。
ペンギンが売り切れだったから、がんばって、代わりのイルカを探してくれた――
って聞いても、納得できなかったのよ。
けれど、後になってみると――
イルカの子も、お気に入りになったわ♡
別に――
あんたが買ってくれたから、とかじゃないわよ?
ただ、まん丸の目と、空色のボディがかわいいって、思っただけ。
名前は、ソラちゃんっていうの♪
多分、私が初めて、何かに名前をつけたのが――
この子だったと思うわ。
ボディの色そのままの、単純な名前だけれどね。
そんな思い出のソラちゃんも、今は優結たちのベッドの中。
優結も喜んでくれて、うれしいわ♡
私は、もういいの。
ソラちゃんは、大事なぬいぐるみだけれど――
最近は、ベッドには出さずに、部屋のおくに、しまっていたし。
優結たちが遊んでくれるなら、そのほうがいいと思うわ♪
でも――
あーあ。
あんたへの借り――
また一つ思い出しちゃった……。
私って、小さいころから、わがままばかり言っていたのね……。
「小さなうちは仕方ない」って、言われるかもしれないけれど――
それを全部あんたに見られているってことが――
最悪に、はずかしいのよ!
だから、私の昔のことは――
全部わすれて?
そして、私が思い出してほしいことだけ、思い出すの♪
――いいわね?




