6月19日(日) 【2】 三女・凛 「当たり前のこと」
今日は、父親への感謝の気持ちを伝える日、だけれど――
そんなの、必要なのかしら?
だって、感謝の気持ちなんて――
わざわざ言わなくても、わかってるでしょ?
あまりにも当たり前のことを、言うなんて――
何だかバカバカしいって思わない?
――どうしても、言わなきゃ、ダメなの……?
はぁ……。
「せっかくの機会だから、素直な気持ちを伝えほうが、絶対いいよ」って――
姉さんたちも、妹たちも、みんなして、しつこく言うから――
一応、言っておくわ。
……ありがとう。
別に、こんな日に言わなくたって――
あんたに感謝していないわけが、ないじゃない。
大体、家族なんだし――
理由なんかもいらないわ。
ママや、娘たちにとって――
私にとって――
あんたは、そういう存在なのよ……?
ううん――
本当は――
家族とか、感謝とか――
それ以外の気持ちも、色々あるけれど。
それは――
絶っっっ対に、言わないわ!
あら、もしかして――
聞きたいの?
本当に?
だったら――
カクゴは、あるんでしょうね?
私のヒミツを知ろうというのだもの――
相当なカクゴがなくてはダメよ?
……うん、やっぱりダメね。
今のあんたに、受け止められるようには、思えないもの♪
ヒミツはヒミツのままにしておくのが――
きっと一番いいのよ♡
あと、それから――
プレゼントのアルバムの編集、私も手伝ったわ。
全員参加だから、仕方がないわよね。
あんたにハジをかかせるために――
とっておきの、はずかしい写真を、たくさん用意してあげたわ♡
たとえば――
ビニールプールで遊んでいる優結たちに、水をかけてあげようとして――
自分がずぶぬれに、なっている写真とか。
遊園地で、私がもらった風船が、木に引っかかったのを、取ろうとして――
しりもちをついた、写真とか。
あのときは、大ケガをしたんじゃないかって――
ものすごく心配したものだわ。
でも、私が泣いていた――
というのは、みんなのカン違いよ?
結局、何ともなかったわけだし。
こうして写真で見ても――
あんたって本当に、いつも家族のことばっかりね……。
何だか、あきれるわ……。
それと――
写真のことで、もう一つ、話があるの。
本当に、どうでもいいことだけれど――
私の部屋にかざっている写真を、少し変えてみたわ。
私は部屋に、家族とか友だちの写真を、かざっているけれど――
実は、あんたのは、一まいもなくて――
写っているところは、わざと、かくしている――
ってこと。
あんたも、知っているわよね……?
あれは別に――
あんたがイヤで、かくしていたわけじゃないから!
それだけは――
信じていて。
かくしていた理由は……
言えないけれど。
とにかく、その写真のかざり方を――
あんたが写っているのも、かざるように――
変えてみたの!
私にとっては、一大決心だったのよ……?
理由は……
やっぱり、言えないけれど。
気持ちが変わったから、とかじゃなくて――
むしろ気持ちは、いっしょのままで、大きくなっているかもしれないけれど――
それでも大丈夫かなって、思えるようになったの。
ああ――
意味がわからなければ、別にいいわ!
要、する、に――
私だって、色々成長しているってことよ!
だから――
いつまでも子どもあつかいは、やめてよね!
わかったら、今日一日は、何もしないで――
私たちに全部、まかせておきなさい♪
今日は、あんたの――
パパのための日、なんだから……♡




