4月24日(日) 巴 「初めての場所」
……行ってきたわよ。
クラスメイトの可奈絵……さんの、お家に。
私も忙しいのだから、遊んでいるヒマなんて、本当はないけれど……
あんまりしつこく誘われたから、断れなかったわ……。
可奈絵……さんは、何というか、感情表現が非常に激しい人よ……。
私が話すことを、いちいちすごく面白がって聞いてくれるの……。
今日、お家に行ったときも、私を見るなり――
「わ、わ、わー! すっごくカワイイ服ー! 着たい、着たい、巴ちゃんごと着たい~!」
って、抱きついてきて――
しばらく玄関から動けなかったわ……。
……もう。
ああいうことは、パパだけにしか許していないのに――
困った人だわ。
いつも愛や優結の襲撃を受けているパパの気持ちが、少し分かったような気がするわ……。
――って、その玄関での出来事は、パパにも見られていたのよね……。
はずかしい……。
でも――
可奈絵……さんの、お家まで、送ってくれてありがと……パパ♡
やっぱり、1人で行くのは不安だったし――
着くまでずっと手をつないでてくれて、うれしかったわ♡
だって可奈絵……さんって、学校でもあんなにアグレッシヴなんだもの。
お家に行ったら、どんなことをされるかって、少し怖かったのよ。
……このことは、みんなには内緒にしててね、パパ。
翔子姉さんや美貴姉さんに知られたら、「巴の弱点発見~♪」って、イジられそうだもの……。
ただ、実際は――
怖くなんてなかったし、思っていたよりは――
楽しかったわ。
可奈絵……さんはね、私の着ている服も、気に入ったようなの。
美貴姉さんの見立ては、さすがだったということね……。
私には、あんまり分からないけれど。
だって、いつもはしない格好だったし――
似合わないと、思っていたの。
でもパパが――
「すごく似合ってるし、可愛いよ。こんな子が遊びに来てくれたら、絶対うれしくなるね」って、言ってくれたら――
大丈夫かなって、思えちゃった♡
けれど、いくら何でも、最初に美貴姉さんが選んだコーデだけは、断固、断ったわ。
美貴姉さんったら、やたらとリボンとか、よく分からないマスコットのアクセサリーとか、付けたがるんだもの……。
「ゼッタイ、カワイイのに……」って言うけれど――
だんだん、カワイイって何なのか、分からなくなってくるわ……。
……その服も、お家に着いた数分後――
玄関から上がる前に、しわくちゃになっちゃったけれどね。
それで、向こうのお家で何をしたかと言うと――
普通のことよ、多分。
お話ししたり、ゲームをしたり、本を見せてもらったり……。
そうそう、可奈絵……さんって、私の知らない、面白そうな絵本や漫画を持っていたりするのよ。
何冊か貸してもらったわ♪
あとは――
「巴ちゃんって、いろんなキネン日、しってるんでしょ? きょうはなんの日? お友だちのキネン日? おしえて、おしえて~♡」って、せがまれたわ……。
記念日のお話は、パパとの話題作りのために、調べているだけなのに……
と思ったけれど、仕方がないから、教えてあげたわ……。
今日は『植物学の日』だったから、そこから好きな植物の話になって――
私は、ラフレシアやハエトリグサが好きだとか――
可奈絵……さんは、ヒマワリやユリが好きだとか――
そういうことも、話したわ。
少し、外にも行ったわね。
せっかく天気がいいからって、近くの公園とか、商店街のあたりを歩いたけれど――
特に何もせずに、帰ってきたわ。
その間……ずっと手をつないでいたの。
友だちって、そういうものなのかしら……?
何だか、時間があっという間に経っちゃって――
パパがお迎えに来てくれたときは、「もう終わり?」って思ったわ……。
可奈絵……さんは、「いかないで~っ!」って泣き出して――
どうしようかと思ったけれど。
また遊ぶ約束をしたら……
やっと笑ってくれたわ♪
今度は、私のお家に来たいとも、言っていたわね……。
休日は、パパとイチャイチャして過ごすのが一番好きだし――
パパと結婚する方法を見つけるっていう使命もあるから、忙しいけれど――
たまには遊びに行っても、いいかなって、思ったわ……。
でも――
これは浮気じゃないのよ!?
私の本命は、ずっとパパだけだから――
それは忘れないでね……♡




