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COMATOSE  作者: awa
28/36

DREAMING

 普通に話をし、普通に別れ、ライアンは家に帰った。

 ベッドに寝転ぶ。まだ、夕方の五時にもなっていない。だが外はもう薄暗い。

 けっきょく、なんだったのだろう。自分が冷静過ぎるほど冷静だったということもあるが、今となっては、夢をみていたような気がしている。おかしな夢。長い夢。突然現れ、あっさり去った。おかしな夢。長い夢。

 というか、明日はどうすればいいのだろう。もう行かなくていい気がする。どうでもいい。眠いし、気分転換ももう、必要がなくなった。

 代わりにレオでも連れていけばいい気がする。もしくはマシューだ。おそらく拒否される。レオは喜ぶ。彼はジェニーが大好きだ。

 それよりも、レナだ。けっきょく微妙な感じで逆ギレして、そのまま放置している。エリカのことは、報告するほどの内容ではない。そのうち学校で会えば、レナの態度しだいで適当に説明すればいいだけのことだ。細かいことを話すつもりはない。

 ふと、ジャックが言っていた言葉を思い出した。レイシーが引っ越すと決まった時、なにが起きているのかがわからなかったと彼は言っていた。荷造りを手伝っていてもそれは変わらず、荷物がトラックに積み込まれるのを見て、やっと実感したと言っていた。

 こんな感じだったのか。いや、違うか。ジャックにとってのレイシーと、自分にとってのエリカとでは、意味が、存在が違いすぎる。はじまりが突然の電話だという意味で言えば、似たようなものだが。

 冷静だったぶんのツケなのか、今頃になって、疲れと眠気がライアンを襲った。

 


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 子供が、ふたりいる。

 砂場で、遊んでいる。

 あ、キスした。

 なにやってんだよ。

 ガキにまで見せつけられんのかよ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ライアンはふと、目を開けた。自分がベッドの上にいることはすぐにわかった。眠っていた。テーブルの上で携帯電話が鳴っている。うるさい。

 真っ暗な部屋の中身体を起こし、ランプを頼りにテーブルの上の携帯電話を手に取った。時刻は夜の八時になろうとしている。着信はレナからだった。空腹なうえに眠い。再びベッドに寝転ぶと、電話に応じた。

 「なに」

 「──エリカから、メールがきて」

 「そ」

 「転校、やめるって」

 「うん」

 「なにが、どうなってるの?」

 自分にもよくわからない。「それ、今?」喋るのが面倒だ。

 「──寝てたの?」

 「うん。今起きた。お前の電話で──」彼はあくびをした。「すげえ眠い」横を向く。

 「ごめん」

 レナはやはり変だ。「いや。起こしてくれてよかった。夜、眠れなくなるし」

 「何時から寝てたの?」

 「んー、五時くらい」

 「──もう、遅いと思う」

 笑える。「だな。だから、明日、無理」

 「え」

 「朝まで眠れなくて、やっと寝て、昼過ぎまで寝るから」彼は自分でなにを言っているのかわかっていない。

 「──じゃあ、今から、会える?」

 「は? なんで」

 「渡したいものがあるの」

 「──学校、はじまってからで、よくね?」

 「できれば、今日。今から」

 とんでもないわがままだ。今会いたいのは、レナではない。それでももう、断るのすら面倒だ。「そっち、行けばいい?」

 「私がそっちに行くけど」

 「いや、いい。送るのが面倒になる。タクシー使ってやる。眠いし面倒だから」

 「夕飯は?」

 「家にあるもん、なんか適当に持っていく」あるのかは知らない。「ボードウォークでいいか?」

 「うん。お菓子、食べる?」

 眠い。「また、ウィスキー?」

 「違う。もう食べない。せめて、二十歳になるまで」

 「あれは、法律違反にはならねえけど」

 「うん。でも、なんか、あれ食べたあとで正気だって言っても、信じてもらえないし」

 よく、わからない。本当に眠い。まだ寝れそうだ。「んじゃ、オレの目が覚めるようなこと、なんか言って」

 「──あんたのことが、好き」

 オレを、好き。

 ライアンは笑った。「いい感じ。ちょっと眠気、覚めた。七十パーセントの眠気のうち、三十パーセントくらいは覚めた。今からタクシー呼んで、行く」

 「──ん」

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