ASSISTANCE
シャワーを終えたあと。ベッドの上に転がっている携帯電話の着信ランプが光っているのを見たライアンは、ギャヴィンからの不在着信が入っていると予想した。確認すると思ったとおり、彼からだった。その前に新着メールを確認する。マリーから二件届いていた。
《アニタ、平気だって。タイラーも行けるって言ってる。時間決まったらまた教えて》
もうひとつ。
《今、ギャヴィンから電話があった。なにしたの? どうなってるの? お願いだから、変なことしないでってば!》
ライアンは鼻で笑った。返事をせずにギャヴィンに電話する。
彼は怒っていた。「おい老け顔」
「老けてねえっつの」
「お前、先にマリー誘ってんじゃんか。電話したら、普通にデイ・ピークの海だよね、とか言われたし。めっちゃ笑われたし。なんなの? なにがしたいの?」
ライアンは笑った。「いや、なんか、電話するきっかけとか欲しいかなと思って」そしておもしろい。
「うるさいよ。よけいなお世話だよ。放っとけアホ。怒るよマジで」
「もう怒ってんじゃん」まだ笑っている。「会話の内容、録音してねえの?」
「するかアホ! マジでムカつく」
聞きたかった。そしてマリーに言っておけばよかったと後悔した。「けどおもしろかっただろ?」
「いや、そりゃおもしろかったけど。おもしろすぎて思わず笑った自分に一番、ムカついてるんだけど!」
「だろ。いいじゃん、楽しけりゃ。それとも、やめとく? オレにムカついて、行くのやめとく? ひとり家でくだらねえ特番でも観てる?」
「は? なに言ってんの? お前がやめればいいんじゃね? そしたらこっち、誰かもう一人呼んで、レナと引き合わせるし。そしたらこっち、カップルばっかりになるし」
ライアンの口元が引きつる。「わかった。じゃあお前はキャンセルだな。マリーにそう言っとく。残念だよチビ。あいつは楽しみにしてたのに。心配するな。オレが相手──」
「ああもう!」ギャヴィンは天を仰ぐ勢いで言った。「わかったって。お前と話しだしたら止まんないからイヤ。マジ疲れる」
「けどなんだかんだで笑ってるっていう。とりあえず、マリーが驚いてるから。暇ならもう一回、電話してやって。メールでもいいけど。んで、アニタとタイラーも行けるって言ってるらしいから、ジャックに電話して、ジェニーが平気なら決まり。適当に時間とか決めて、メールするから。それともマリーからのほうが嬉しいか?」
「そりゃ、マ──どっちでもいいわ。じゃな」
“マ”。そのあとに“どっちでも”。答えはすでに出ている。
「はいよ」
電話を終えた。彼らを観察するのも、ライアンの小さな楽しみになっている。次にジャックに電話をかけなければいけない。もうそろそろ休ませてほしい。
ジャックのテンションは普通だった。「ん」
「ジェニーに訊いた?」
「うん。大丈夫だって。そっちは?」
そっちというのは、どこのことだ。「全員行ける。あとは時間と待ち合わせ場所だけ」
「ああ、レナに訊いたのか。お前のことだからメールが面倒で電話か。電話したのか。すごいな。進歩だな」
ライアンの口元はまた引きつった。「うるさいよ。お前がしろっつったんじゃん」
ジャックが笑う。「そうだけど。待ち合わせ、どこ?」
「お前らの好きな図書館でいいんじゃね? わかりやすいし。どうせ通り道だし」
「ああ、わかった。時間は? 昼前か昼過ぎか」
「どっちでも。っつーか細かいことはジェニーとお前が決めて。オレ、これから電話するから」
「誰に?」
レナに。「なんでいちいち報告しなきゃいけねえんだ」
彼はまた笑った。「まあ、いいけど。じゃ、またメールか電話する」
再び電話を終えた。まだ一月の三日だというのに、いきなり電話をしすぎている気がする。いつものことではあるが、また金が飛ぶ。
ベッドヘッドにある固定電話の子機を手に取ると、携帯電話に登録しているレナの携帯電話の番号を見ながら子機のボタンを押し、ライアンはレナに電話をかけた。
二コール目で、呼び出し音が途切れる。




