その7
いい感じのところね。
空国の王宮には、大きな庭園が2つある。
2つある庭園のうち一般的によく知っているのが、王宮正面に位置する南の庭園。
この庭は、来客の目に止まる場所の為、季節の草花が主に植えられており、庭師たちにより美しく華やかに造られている。
もうひとつは、西の庭園。こちらは、王族専用。
現在は、王妃であるリィル叔母様の好きな花が色とりどり植えられており、基本的に王族の招待がないと入れない場所となっている。
ちなみに、先日アリスがリィル叔母様に呼ばれてお茶を飲んでいた場所である。
今アリスがいるのは、その西の庭園の奥、王宮の裏側。
そこは西の庭園とは違い、人の手がほとんど加えられていないままの状態で自然に草木が生い茂っている。この場所は、主に幼い王族達の遊び場として使われていて王族専用の庭からしか出入りできない為、この森も西の庭園の一部として一般には認知されている。
せっかくなので一人でゆっくりできる場所にはないかとリィル叔母様に聞いたところ、叔母様の子どもの王子たちは、全寮制の学院に通っている為、誰も出入りしないとここを勧められた。趣味の仕事を取り上げられ、妃候補の姫君たちのお茶会にもレオナルド王子にも興味がないなで暇なのだ。
「風が気持ちいいわ。滞在している間はここに生えている薬草を研究して過ごすことにしようかしら。」
・・・・仕事のしすぎで、妹に怒られ召喚されたのに一切懲りていない。
「そこで何をしている!」
草木を眺めながら、のんびりお茶を飲んでいたアリスに鋭い声がかけられた。