その6
______だんっ。
「何をしている!次の者、前へ!」
「は、はいっ!!」
_________がっ!!どさっ!!
「近衛騎士団員が、これくらい受け身を取れなくてどうする!!次!!」
王によって決められた妃候補の姫君が召喚されてからストレスが溜まり続けたレオナルドは、ついにキレ、先程から騎士を相手に剣の稽古をしてストレスを発散していた。
「うわぁ。殿下の機嫌は、相変わらず最悪のようだな。」
先程から剣の稽古と言ってレオナルド王子が近衛騎士相手に剣を奮っている姿を遠くで眺めながらランディは隣に立っているジルに囁いた。ランディは、近衛第一騎士団副隊長でレオナルド王子の側近だ。
「ええっ。稽古とは名ばかりの新人にとっては、拷問に近いですよ。妃候補を問答無用で陛下に決められてからずっとあの調子です。というより悪化してますね。連日、妃候補の姫君方からの様々なお誘いが来ますから。しかもそのお誘いを片っ端から断ってるのに懲りずに手紙が大量に届きますからね。最近では偶然を装った待ち伏せをされたりしてもう最悪ですよ。」
ランディの囁きに、同じくレオナルド王子の側近で政務補佐を務める、ジルライトが答えた。
「うへっ。只でさえ殿下、その手の女、嫌いなのにそれはキレるわ。」
執務室に戻ったレオナルドは、運動をして気分転換をになったのか順調に案件を処理していく。まあ、あれだけ暴れればスッキリもするだろう。
「可哀想に殿下の相手をしていた近衛の連中ボロボロですよ。妃候補の姫君のお誘いにストレスが溜まるのは分かりますが手加減してくださいよ。それに、妃候補の姫さま方は美人揃いなんでしょう?誰かお好みの方はいらっしゃらないんですか?」
ランディが笑いながら言う。
「はっ、煩わしいだけだ。」
レオナルドは、書類に目を通しながら答える。
それにしても、わざわざ各階層から召喚など陛下も余計なことを。王位を継ぐまでに結婚しなければならないのは分かっているが、ドレスと宝石と噂話しか興味がない女など側におきたくないから今まで逃げていたのだ。本当に面倒なことだ。