その4
いい天気だなあ。アリスは、中庭でお茶を飲みながら空を眺めた。
「はぁ。何でこんなところに。」
実験室から召喚陣で呼ばれた場所は、一階層主国の空国だった。私がいた場所は三階層にある漣国。階層毎に空間が異なる為、普通ならば両国の間に国交はほぼないはずだった。・・・普通ならば。
ではなぜ私がここにいるのか。それは、目の前の御方に聞いていただきたい。
「ため息などついて、どうかしたの?アリス。」
召喚した犯人が、穏やかに問いかける。
「いえ、何でもありません。リィル叔母様。」
「でしたら、こんなにいい天気なのだから暗い顔をしてはだめ。せっかく美人に産んであげたのにもったいないわ。」
あなたに、産んでもらった記憶はございません。叔母様。
床が光ったと思ったら急に上に引っ張られる感覚がし、視界が反転して気づいたら落下していたのだ。腰を強打し呆然としている所に、満面の笑みを浮かべたリィル叔母様に朗らかに話しかけられた。
サリィがね、あなたが実験室にばかり籠ってると愚痴を言っていたから有給休暇に私の国に招待したの。
てっ!!叔母様、いくら身内とはいえ本人の了承も得ずに召喚するのは、犯罪です。有給休暇とか勝手に申請しないで下さい。
いくら気乗りしないからといって、サリィとの約束を忘れていたのは全面的に私が悪かった。けど、何もリィル叔母様と結託して別階層に強制的に召喚して休ませることないと思います。誰に似たのか、普段は、温和なのに怒るとホント怖い。
「アリス、聞いてるの?アリス!」
「ええ、なんですか、リィル叔母様。」
召喚された時のことを思い出していて、さっぱり聞いていなかった。
「レオのことよ。どお?私の息子だけあってかっこいいでしょ。アリスがレオのお嫁さんに来てくれるなんて素敵だわ。」
「ちょ、リィル叔母様!私の妃候補は、召喚陣を使う為の名前だけのはずでしょ?他に9人もいるんだからそっちから若いお嫁さんもらってください。」