レオナルド視点~遠乗りその2~
「ええ。王妃様とは通信鏡を通して折々に連絡をとっていたものですから、フィルライト様とレティシア様とも親しくさせていただいております。3年前に王妃様が里帰りされた時にご一緒に蓮国にいらっしゃいましたきり機会がなくお会いできておりませんが。」
何年かに1度、義母上のが三階層に里帰りする。前回の里帰りの時に共に蓮国に行ったと報告をうけていた。3年前は西の地で大規模な魔物の襲撃があり、長期で城を空けていた時だ。城にいたのなら一緒に行けたのにとずいぶん妹に責められたのを思い出した。
「そうでした。3年前の義母上の帰郷の際に共に蓮国に行ったと報告をうけていましたが、その頃は仕事で城を離れていたものですからすぐに思い出せず申し訳ない。二人とも元気です。学院に入ってからは私も頻繁には会っていませんが、長期休みで城に帰ってきた時に学院での様子を楽しそうに話していました。・・・時々、問題を起こしているようですが。」
姫に返答しながら、弟妹達の起こした騒動でここ数年で頭が薄くなった気がする副校長の姿を思い出した。
「ふふふ、そうですか。私に届く手紙にも学院での様子が楽しそうに書かれていましたが、お元気そうで何よりです。ふふふっ。」
姫にも想像できたらしく楽しそうに笑う。先程までの完璧な姫君の微笑みではなくいきいきとした表情に目を奪われる。
それからフィルライトとレティシアの話を中心に話が弾んでゆく。
本当に二人と親しいらしくレティから手紙で学園で起こした騒動についてもほとんど知っていた。それからお互いの国の話や趣味という仕事の話も少し聞いた。
話の中でフィルとレティにはアリスと呼ばれていると聞いて自分だけ姫と呼ぶのがなぜか癪に障り、アリスと呼んでいいかと許可を求めた。戸惑いながらも許可を出しながら敬語も必要ありませんとアリスが言うので素に近いまま話し込んでいた。
「ああっ。すっかり話しこんでしまいましたわ。日が暮れてしまう前にそろそろ城へ戻りませんか?」
「・・・そうだな。そろそろ戻ろう。」
早く帰れるなどど思っていたはずなのに、いつの間にかこんな時間になっていた。アリスからも話題を提供されたが、深く追求したのは概ねレオナルドのほうだった。
________
「殿下。本日は、大変楽しい時間をありがとうございました。またの機会を楽しみにしております。」
城に戻り馬舎に黒耀を返してからアリスがレオナルドに微笑みながら感謝の意を伝える。
「・・・ああ。今度また。」
思いのほか楽しい時間だった。他の姫たちには社交辞令としても次回の約束などしなかったが、アリスとは次回の約束をして執務室へと歩みを進めた。
「今日は楽しそうでしたね、で・ん・か。」
ランディが珍しく女性と楽しげに過ごしたレオナルドをからかう。
「そうだな。」
激怒すると思ったレオナルドは、不敵に微笑みながらランディの言葉を肯定したのであった。