その13
本日、2度目の更新です。何話が微妙な修正をしましたが、話の内容は変わっていません。
「いやぁ、姫様は乗馬がお得意なのですね。あの黒耀を懐かせた事といい、見事な腕前でした。」
「そうかしら?ありがとう。」
木陰に到着し黒耀から降り、撫ででいるアリスに護衛としてついてきたランディが声をかける。
その間に他の騎士達が敷物が広げて休憩の準備を整える。
「殿下、準備ができました。」
アリスを見ていたレオナルドに騎士が声をかける。
「ああ。ご苦労。 姫、このようなところで申し訳ないが、こちらにお座り下さい。」
「お茶の準備までしてきて下さったのですね。ありがとうございます。」
レオナルドに勧められて向かい側に腰を下ろしたアリスにお茶が渡される。ピクニックにでも来たような軽食とお菓子がそこには広げられていた。
「・・・料理長が準備していたので持ってきただけです。」
「そうですか。では、あとでお礼を伝えてもらわなくては。こちらの料理人の方は、本当に腕がよい方ですね。美味しい食事に感謝しておりますわ。」
「・・・そうですか。」
「ええ。」
・・・・ほらっ!!やっぱり王子と二人で食事なんてこうなるじゃない!!何話せばいいのよ!仕事の話はダメだし、沈黙が気まずいわ~。
「そういえば、殿下。フィルライト様とレティシア様は、ご健勝でしょうか?3年前にお会いしたきり手紙でしかやり取りがなく今回、空国に参りましたのでお会いできると楽しみにしていたのですが、学院に入られたとの事で王宮にいらっしゃらなく残念に思っておりました。」
「っ!? 弟達と親交があったのですか?」
「ええ。王妃様とは通信鏡を通して折々に連絡をとっていたものですから、フィルライト様とレティシア様とも親しくさせていただいております。3年前に王妃様が里帰りされた時にご一緒に蓮国にいらっしゃいましたきり機会がなくお会いできておりませんが。」
「そうでした。3年前の義母上の帰郷の際に共に蓮国に行ったと報告をうけていましたが、その頃は仕事で城を離れていたものですからすぐに思い出せず申し訳ない。二人とも元気です。学院に入ってからは私も頻繁には会っていませんが、長期休みで城に帰ってきた時に学院での様子を楽しそうに話していました。・・・時々、問題を起こしているようですが。」
「ふふふ、そうですか。私に届く手紙にも学院での様子が楽しそうに書かれていましたが、お元気そうで何よりです。ふふふっ。」
それからフィルライトとレティシアの話を中心に話が弾んでゆく。珍しくレオナルドが無表情ながら楽しそうな雰囲気を醸し出している。
「ああっ。すっかり話しこんでしまいましたわ。日が暮れてしまう前にそろそろ城へ戻りませんか?」
「・・・そうだな。そろそろ戻ろう。」
レオナルドは客人である姫様には丁寧な言葉遣いをしていたが、アリスがお気づかいなくと言ったので一応客人用にはしているが、だいぶ素に近い話し方になっていた。
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「殿下。本日は、大変楽しい時間をありがとうございました。またの機会を楽しみにしております。」
城に戻り馬舎に黒耀を返してからレオナルドに微笑みながら感謝の意を伝える。
最初は、予想通り沈黙が続きどうしようと思ったが話してみると以外と楽しかったのだ。怜悧な美貌でほとんど無表情に近いがなんとなく楽しいのか、困っているのか表情が出ているのに気づいたのだ。・・怒っているときは眉間に皺がより温度が下がるのですぐ分かる。
女嫌いとか聞いたけど、これならすぐにいいお嫁さん見つかるわね。よかったね、リィル叔母様。
いくらレオナルドの印象が当初より良くなっても、アリスは自分が妃になる気は皆無だった。レオナルド本人は関係なく、王太子妃ひいては王妃になるのが嫌なのだ。
「・・・ああ。今度また。」
アリスの心の呟きを知らずに、次回の約束をしてレオナルドが執務室へと帰っていく。