その10
第一王子の執務室には、息苦しくなるような重い空気が漂っていた。
暗雲の発生源は誰に問わなくとも一目瞭然である。部屋の主のレオナルドだった。
「まぁまぁ。落ち着いて下さい、殿下。あと2人で終わりじゃないですか。」
「黙れ。」
ランディが和ませるように声をかけたが一刀両断された。
陛下の命令から5日。レオナルドは、仕事をどうにか調整して姫君たちとの交流をしてきたがそろそろ忍耐も限界を突破しようとしていた。
姫達の希望通り1人ずつ時間を作って会っているのだが、皆、レオナルドが苦手とする姫達ばかりであったのだ。・・・・基本的に深窓の御姫様・女性らしい典型的な貴族の令嬢が嫌いであるから仕方がないといえば仕方がないのかもしれない・・・。
~~~レオナルドのこれまでの4日間~~~~
1日目 空国公爵家令嬢とのお茶会・・・王子に憧れていましたと熱弁される。
第五階層の姫との夕食・・・ご趣味は?何がお好きですか?とひたすら質問責めに遭う。
2日目 第二階層黒国の姫との庭園散策・・・西の庭園にも自由に出入りしたいと強請られる。
第三階層柊国の姫とのお茶会・・・人見知りの為、王子の顔をまともに見れず。
3日目 空国公爵家令嬢との遠乗り・・・一人で馬に乗れないと相乗りを希望される。令嬢はドレス着用。
第二階層青国の姫との夕食・・・ご趣味は?何がお好きですか?とひたすら質問責めに遭う。1日目とほぼ同じ質問。
4日目 空国侯爵令嬢とのお茶会・・・公爵令嬢達から嫌がらせをされていると訴えられる。
第四階層霧国の姫との夕食・・・王子に憧れていましたと熱弁され、いかに自分が王妃に相応しいか語られる。
・・・・さすがに可哀想かもしれない。がんばれ、レオナルド!!
「今日の予定はどうなっている?」
レオナルドは、苛立つ心を抑えながらジルに問いかける。
「昼から第三階層蓮国の姫と遠乗り、夕食は第四階層風国の姫と会食です。これで一巡しますので、本日だけ我慢なさって下さい。」
「わかっている。昼から第三階層蓮国の姫と遠乗りだな。ちっ、馬にもろくに乗れぬくせに遠乗りに行きたいなどどよく言えるものだ。」
吐き捨てるように呟き馬舎へと向かった。