[ソロアサシン] 戦術の鬼才について語ってみた
※こちらの作品は 高鳥瑞穂様の『「そんなの、ムリです!」~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~』の二次創作になりますm(__)m
思いついたネタを書き殴ってみたので、敬称・設定諸々が無茶苦茶になっているのでご了承ください。
33-4.前衛の部 準決勝第一試合 トシアキ視点 想定になります。
「さあお待たせしました!続いては前衛の部 準決勝第一試合、セリス選手対浜田徹選手の試合が始まります!」
隣の席から大会も半分を過ぎたのに、元気一杯な佐々木さんの解説が聞こえてくる。
疲労もそこそこ貯まってくるが、想定以上の盛り上がりを見せる公式大会の熱気を受け、背中を押されるように力も湧いて来る。
「さあ両選手ともに入場……しましたが、この構成は?」
会場の中に現れた二人の姿に、佐々木さんも一瞬悩んでいる。
「セリス選手はいつもの構成に毒武器である宵闇の短剣を、それに対して浜田選手は盾に状態異常対策の物を選択、という事はアクセサリーでも対策装備を選んできているかもしれませんね」
「おおお!第一試合では見た目と性能の差異を活かした奇襲を仕掛け、第二試合では予想を裏切り真正面からのガチンコ勝負を制した、びっくり箱の呼び名に恥じないセリス選手に対して山を張ってきたと!?」
「そのようですね、このEFOの中でもオンリーワンに近い状態異常を混じえた戦法、そんな彼女の代名詞を持ち出すならばココだと考えたのでしょう」
「それはまた大胆な!? ……果たしてセリス選手は何を用意してきたのか?浜田選手は読み勝てたのか?気になる一戦も間もなくスタートです!!」
軽快に盛り上げてくれる佐々木さんのセリフと共に、画面の中に大きく数字が映り込む。
「さあ始まりました! お互いに初動のスキルを発動し、お互いに距離を詰めるべく駆け出して」
「ジャンプブースト、からのポイズンレイン!」
「おおお! 前回大会でセリス選手の名を世に知らしめたあのコンボです!!」
華麗に空へと舞い上がり、産廃と名高いスキルを公式大会のこんな場面で持ち出してくる度胸に内心で舌を巻く。
「……しかし浜田選手も盾を使って技を相殺! かわしきれなかった毒も対策装備で打ち消しました!」
「これは状態異常・毒対策の装備でメタって来ているという事でいいのでしょうか?」
「恐らくそうでしょう、牽制用に便利なファストシュートを出して来ない事からも、かなり構成を寄せてきている可能性がありますね」
「……さて開幕の一当てを済ましてから、距離と時間を稼ぐセリス選手、そして次の一手を警戒しながら追いかける浜田選手!」
「明らかに何かを狙っている様子ですが……っと、ここでセリス選手が止まって」
ふと逃げの姿勢を止めた彼女が、わざと浜田選手の前へと躍り出て……。
斬りかかる彼を華麗に飛び越し、再度降り注ぐ毒の雨。
そして当たった事により発生する毒ダメージのエフェクトと……
「再度のポイズンレインコンボから、セリス選手は逃げ出したああああ!?」
「…………ああー」
思わず漏れた本音と、慌てながらもほぼ同じタイミングで彼女の真意に気づいた佐々木さんと目が合い、一瞬お互いに黙り込んでしまう。
傍から見れば軽快な追いかけっこが続くゲーム画面と、黙ってしまった解説席という異常な状況に、公式配信に付いて来るコメント欄も少し荒れた。
「……大変失礼いたしました。トシアキさん、セリス選手の先程の一連の流れというのは」
「……はい、高い位置から毒の範囲散布を行う事で避け難い毒の付与を狙い、浜田選手が凌ぎきれなくなるまで徹底した逃げ撃ちを重ね、当てた毒でじわじわとHPを削る持久戦狙いになると思います」
こちらの解説に驚く声や浜田選手の読みを称賛する声、どこまでやれるのか、どうやって耐えきるのか……といった様々な反応がコメント欄へ流れてくる。
「ただこの試合に限って言えば、もっとえげつない状況になっています」
「……と言いますと?」
ゲーム画面にちょうど映った冷静な表情の彼女と、どこか苦し気に追い掛け回す彼の姿が一番分かりやすい答えだろう。
「この広大で入り組んだマップタイプだと、逃げようと思えばいくらでもやりようがあり、追う側が圧倒的に不利な状況なのに、少しでも気を抜くとどんどん毒をばら撒き続ける事で彼女が一方的に削ってきます」
「うっわあ……」
「アサシン特有の高い敏捷性に、イカサマダイスによる保証された完全無敵、避けタンクとして名高い彼女の腕前に加え、通常ではありえない継戦能力を誇る特異体質も完備」
「……浜田選手泣いちゃいませんか?」
「それでは画面をご覧ください!」
追いかける事2分ほどだろうか。
やっとの事で攻撃射程に捕らえた浜田選手の一撃を、完全無敵の一回分と引き換えに彼女も一撃をねじ込んで、即座に大ジャンプからの別経路へと滑り込み姿をくらます。
「おおおお……浜田選手も流石のセンスでセリス選手を追い込むも、セリス選手は悠々と凌ぎきったあああ!! これには思わず浜田選手の足も止まります!?」
「うーん、これはひどい……」
プロである彼だからこそ諦めるような姿勢はおくびにも出さないが、制限時間以内にあと何回もこれ程の駆け引きを繰り広げないといけないとか、普通に発狂しても許されるレベルだろう。
「ちなみにですねえ」
「……はい」
「この戦法の最もえげつない要素が一つありまして」
「これ以上にあるんですか!?」
思わず席から身を乗り出す佐々木さんと、勢いが更に加速するコメント欄を見て、こぼれそうになる声をなんとか飲み込む。
「やられる側に取ってみたら、これ以上ないほど嫌らしい駆け引きなのですが」
「……ですよねえ、あの浜田選手が一方的に追い詰められるなんて、開始前では誰も予想していなかったはずです」
「……ただ仕掛ける側からすると、いつでも投げ捨てられるんですよ」
「…………はい?」
ぽかんとした表情と、荒れ狂っている弾幕を見ると、この戦法の発案者の性格の悪さには感心しきりだ。
「追いかけても追いかけても追い詰められない、そんな状況下で体力も集中力も使い切って来る頃合いで、ふと身を潜めて不用意に近づいて来た相手に対して、無敵状態を押し付けながらドカンと一発大技を捻じ込んで」
「…………うっわあ」
左の掌に右の拳をパシンとぶつけてみると、容易に想像できたのか反応が全体的に鈍る。
「……そこからは相手に追撃を仕掛けるも良し、何事も無かったかのように鬼ごっこを再開するも良し」
「……うえええええ」
思わずと言った形で机に向かって突っ伏す佐々木さんも、様々な反応で荒れ狂っているコメント欄も、ようやく浜田選手の現状を認識してくれたようだ。
「個人的な感想になるのですが、思いついた事を言ってみてもいいですかね?」
「……ぜひぜひ」
画面上で繰り広げられる鬼ごっこを見ながら、ふつふつと抑えられなくなってきた本音を放り込んでみたくなってきた。
「『何故彼女がプロゲーマーじゃないんだ!?』って、どこか憤慨している自分と」
「……ああー、これ程の立ち回りをこなすなら、それはもう人気者にもなりますよねえ」
想像してみて何処かすんなりとイメージできたのか、唸るような返事に静かに頷く。
「『ライバルチームの参謀として、彼女が嬉々として殴りかかって来ない現状にこそ感謝すべきなのでは?』って、ずっと首を捻っている自分が居てですねえ」
「ぶっwwwちょっとwwww」
今日一の反応が貰えたし、勝ったって事で良いだろう。
「プロとしては後者では無いと胸を張りたい所なんですけどねえ」
コメント欄の弾幕が治まるのを待ちつつ、自然とこぼれた苦笑混じりでおどけてみせる。
「……プロとして培ってきた、貴方の勘が本当に正しいと思いますよ」
「ありがとうございます」
ようやく立ち直った佐々木さんから、真っ直ぐな感想を貰えて少し落ち着いた。
試合時間もそこそこ進み、唐突に突き付けられた『なんとか場を持たせなきゃいけない30分間』という難題も、言いたい放題喋って来たおかげでなんとか凌げそうだ。
「……さてリスナーの皆さんに問題です!」
「……おっと?」
ふとした思い付きを放り込んでみると、突然の奇行に探るような視線を送る佐々木さんと、ざわついているコメント欄。
「貴方が浜田選手の立場だったとして、どうやってこの状態のセリス選手に対抗すべきだったでしょうか?」
「公平性をかなぐり捨てた問題が出てきましたねw」
笑われてしまうのも当然だが、有用そうなモノならこの際気にするべくも無いだろう。
「確かにセリス選手にとっては失礼な話になりますが、一人の天才によって確立された戦法が、今まさに目の前で実力派のプロゲーマーを翻弄しています」
「……ええ、その通りですね」
「ならばいずれ、同じような状況で第二第三の毒アサ使いが殴りこんでくる可能性m」
「コワイコワイコワイwww」
10秒で一息に食い千切りに来るか、30分間一方的にネチネチと削りに来るか。
放送する側からしても、そんな極端な存在がこれ以上予定を狂わせるような未来はごめんこうむる。
「3割位は冗談としても、こうして見出せられた戦法があるのなら、少なくともどうするべきかを考察するのがPvPの世界であり、プロとしての習性だったりします」
「確率が酷い……確かに、研究不足・準備不足では大変な目に遭いますからね」
「複数人から文句を言われそうですが、勝負の世界には『勝った方が偉い』という明確な基準があり、時にはこれまでの常識を飛び越えた戦法を放り込んで一方的に殴りにくる猛者だって居ます」
セリスさんとか、ボンレスハムさんとか、ジンとか、セリスさんとか……。
「そういう訳で、今まさに目の前で繰り広げられている戦闘を題材に、何に気をつけ、何を狙うべきなのか……といった所から検討してみよう、といった話です」
「……うーん?」
「現在進行中の試合も、もう少しセリス選手の無敵を剥がさない事には進展も無いですからね、彼女ほど洗練された戦い方というのも再現出来ないにせよ、色々と学びながら考えてみようかと」
「…………トシアキさん、なんか都合の良い方向に誘導しようとしていませんか?」
「さて、何のことやら」
うちのジンもそうだがこれから一層盛り上がるPvPの環境の中で、こんなイレギュラーな戦法ばかりが目立ってもらって良いはずが無い。
かなり無理筋だろうとも、多くの人の目に触れる形で方向性が示せるのなら、対抗策の一助にもなるだろうし打てる手は打つべきだろう。
……そんな思いを伏せつつも、この話を切り口に試合の展開を交えながら、この大会では珍しい腰を据えた話し合いは殊の外順調に続いていった。
本編を読みながらなんとなく思いついて書きたくなったネタ_(:3 」∠)_
何故かアネシア(観客)視点より書きやすかった
『またセリスか……』って言われ続ける世界も、色々と怖いけど見てみたかったりw




