第九話 非日常 目の前の風景
投稿です。
今、俺の目の前に広がるのは、巨大な植物たちに呑み込まれた都市。
「ここが花の都?」
修学旅行で来ていた街。
「……そうだ」
遺跡のようなビル群、広がる静けさ。
「なにも動いていない」
「トリ……お前にはそう見えるのか……トリよ、あれから何年経ったと思う?」
俺の右にはドワーフ姿のオトネ。
左には異形の……白鳥さん。
生き残ったのは5人だけだ。
後のメンバー3人は、俺と満岡、それと鈴木さん……。
でも、満岡と鈴木さんはもう旅には出れないだろう。
そう、故郷へ帰る旅。
俺は球磨本に帰らなければいけない、確かめたい、故郷の皆がどうなったのか、俺の家族、母さんがどうなったのか。一美さんやチビちゃん達が……。
あの時、何が起きたのだろう?
思い出したのは出発前、そう前日だ。
前日、俺は病院にいた。
ピッ、ピッ、と規則正しく聞こえてくる電子音
とても微かな音だ。
ベッドには沢山のコードに繋がれた女の人。
そう、俺の母親。
もう5年も意識が戻らない。
コフー、コフー、と呼吸音、母の自発的な呼吸ではない、機械の音だ。
原因は交通事故だ。
オヤジはその事故で死んだ。
本当は修学旅行、あまり気が進まないのだ。
母さんを一人置いて行くには……だけど……。
多分、母さんは行きなさい、と言うだろうな。
友達は大事にしなさいとも。
痩せ細った母の指、俺の時間は5年前から進んでいない。
止まったままだ。
ああ、あの事故がなければ、これが日常でなければ。
次回、第十話 日常 友人の存在 です。
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