リーダー
「各師団のトップに向かわせるなんて、その間の国防は大丈夫なんですかねえ?」
ステラ・ミレイ・ブレイヴェニア17世直々に名を受けた5人、シオン、フレッド・スクラー、カリナ・フキ、リクム・カンナ、ダイガン・キャリン・ブラスティで、魔物の森に行く道すがら、デスクラッシュが言った。
「それだけ今がレフコストネールドラゴンを倒す好機だということだろうよ。」
と、シオンは答えた。
「なあ?今の、あんたの武器が喋ったのかい?」
ダイガンがシオンに声をかけた。
「あっ…こ、これは…。」
「噂にゃ聞いてたが本当に喋る武器を使うんだな。」
「知っているのか。」
「ああ、グレイ村の魔導具は心を持つ特別なもの、魔道具が持つ者を選ぶってのは有名な話だ。」
「そうなのか。」
「シオンさん、コミュ障だから友達いなくてそういうの知らないんでしょ?」
「うっうるさい!」
「俺は実物を見るのは初めてだが…なんつーか、その、思っていたより…。」
ダイガンがしばし考え込み、口に出した言葉はシオンが伝えようとした言葉と図らずも同じものだった。
「性格が悪い!」
「はあ〜?こんな優しい武器を捕まえて何つー言種ですか?シオンさん!」
即座にデスクラッシュが抗議の声を上げた。
シオンとダイガンは顔を見合わせ、フッと笑った。
ダイガンがいて良かったとシオンは思った。獣人だし年齢も親子ほど違うが、人見知りなシオンにも気さくに話しかけてくれる。
「デスクラッシュもこれくらい優しかったら良かったのに…。」
シオンは小声で呟いたが、耳ざといデスクラッシュは聴き逃さなかった。
「おやおや?私に頭を下げて復讐を手伝えと言ったのはあなたですよ?」
「復讐?」
カリナが訝しんだ。
「レスコストネールドラゴンは私を残して村を全滅させたんだ…。」
「へー!それで一人で復讐を?結構骨があるじゃん!」
そう言ったのはリクムだ。明るくて気の強そうな少女。
「おい、見ろ。」
先頭を歩いていたフレッドがみんなの注意を引いた。
目の前には巨大な壁が威圧するように鎮座していた。
「いよいよ、国を出るぞ。」
フレッドがいう通り、この堅牢な壁は、インペリアルエルダーブレイヴェニアを外界から守る壁であり、ここを出るということはインペリアルエルダーブレイヴェニアから出るということだった。
外界と通じる門には門番がいてシオン達な姿を見ると一礼し、その重厚な門をゆっくりと押し開いた。
門の向こうは一面緑だった。魔物の森と呼ばれる深い森。ここから海までは約10日を擁する。
「闇雲に歩いたところで着くもんも着かねえだろ?誰かリーダーを決めてまとめた方がいいんじゃないか?」
そう言ったのはダイガンだった。
「獣にしては頭が回るじゃない。」
カリナが嫌味ったらしくダイガンにいった。
「何だ?下に見てる獣人に出し抜かれて悔しいのか?エルフ様よ?」
ダイガンもおとなしく引き下がるタイプではない。
何千年も折り合いが悪いエルフ族と獣人のカリナとダイガンはよると触るとこの調子だ。
お互いが武器に手をかけたその時にフレッドが2人の間に割って入った。
「喧嘩してる場合じゃないだろ!ほら!もう、2人とも握手だ!握手!はい!もうこれで仲直りだ。いいな!」
そう言うと2人の手を強引に握手させた。
「あ、なんかうちのママみたい…。」
リクムがボソッと呟いた。
「ママ?」
シオンが聞き返した。
「うん。うち、女3人姉妹でさー、姉ちゃん達いっつも喧嘩してたんだけど、ママ、今のフレッドと同じこと言って止めてたよ。」
リクムが楽しげな声で応えた。
「えっ…」
それを聞いたフレッドは目を丸くした。
「確かに俺は歳の離れた6人だから母親代わりに弟妹の面倒を見ることもあったが…流石に君のママと同じと言われるのは、国随一の剣術部隊の指揮官としては、ちょっと喜んでいいのかどうか…。」
フレッドは困惑した表情で頭を掻いた。
「何言ってんの?超褒めてんのに!うちのママは国一番のママなんだから!」
「あっ、そっそうなのか…。それは、とても嬉しいよ。ありがとう。」
リクムに気圧されてフレッドは微笑んで礼を述べた。
その様を見て、シオンにある考えが浮かんだ。
「ねえ、さっきのリーダーの話だけど…。」
シオンは思い切って声に出してみた。
「フレッドがいいんじゃないの?」
シオンの言葉に皆暫し頭を巡らせ、それから頷いた。
「確かに…。」
「そうねえ。」
「うちもママみたいな人に言われる方が話聞きやすい!」
フレッドはリクムの言葉に顔を赤くした。
「えあっ?!そこなの?…う、まあ、それが一番いいならそれでもいいけど…。」
「じゃあよろしくね!フレッドママ!」




