井戸ミちゃん
夏のホラー2025参加作品。
ガチホラーのつもりで書いたけども。
ママなんか大っきらい!
お部屋の片付けなんてしなくても、別に困らないじゃん!
…そりゃあ、床が散らかってて歩きづらいけど、アタシの部屋なんだから良いじゃない!
それに、テストの結果なんて別に、見せたって成績上がるワケじゃないでしょ!?
もうホント、いちいちうるさいのよ! あんなママ、いらないんだけど!
親ガチャ大失敗! もうやだー!
―――ってウチを出て、プンプン怒りながら歩いてたら、変なトコ来ちゃった…。
…ん? 工事中? の、ビル?
………あれ、何だろ。…あ! 何かホラー映画とかで見たことある! えーと…、そう! 井戸! ホンモノ初めて見た!
…? 井戸のそばに、誰かいる。…女の子? 同い年かなぁ。
「………こんにちは」
なんか、話しかけられた。
…フン、暗そーな子。いちおう話しかけてあげよっと。
「アンタ、何してんの?」
「……………」
「返事くらい、しなさいよ!」
「…あなたも、あいさつくらい出来ないの?」
えー、ウザぁい。めんどくさ。
「あー、ハイハイ、コンニチハ! …で? 何やってんの?」
「別に。あなたこそ、どーしてこんなところに?」
! よくぞ聞いてくれました!
「ねぇ、聞いてよ! あのね、アタシのママがね―――」
◇ ◇ ◇
あー、いっぱい話したらスッキリ。
「…ふーん、そーなんだ。あなたはママがキライなのね」
だから、そーだって言ってんじゃん!
「そーよ! ホント親ガチャ大失敗! …あ、ところでアンタ、名前は?」
「イドミよ」
ププッ。変な名前ー。
「ふぅん、アタシはまりなよ」
「そう…。ねぇ、まりな。親を交換出来るなら、したい? うるさいこと言わない親と、交換」
え!? そんなコト出来るの!?
「ホント!? するする!」
「フフ、こっちよ」
ヤッター! うるさくない親と交換♪ …って、何よ、イドミの足跡、なんかビチャビチャなんだけど。
…あ! 分かった! アイツ、おもらししちゃったから、恥ずかしくてこんな人のいないトコに隠れてたのね! ククク、きったなーい!
………って、あれ?
だんだん暗くなって………、やだ、ここ、ドコ?
―――ぴちょ…ん。
…ん? 水…? え、待って。水が…、足下まで…、え、ええ!? だんだん深く…、ヒザ…、腰…、や、やだ! ちょっと! ねぇ、イドミ! どこ行ったの!?
…? 上? 声?
◇ ◇ ◇
「ホントにもう、心配かけて、この子は!」
「ごめんなさい、ママ! これからはちゃんと、お部屋のお片付けもする! テストもちゃんと見せるから!」
「………まりな、やっと分かってくれたのね」
………え? まり、な? アタシ、ココなんだけど!?
「ママ! 今までごめんね! アタシ、良い子になる!」
「ええ…、ええ…、さあ、帰りましょう、まりな」
………! ちょ、ちょっと! ママ! この、バカママぁ! 自分の子供のコトも分かんないの!? ソイツ誰よ! ホンット最低! アタシはココよ! アタシ、アタ………!
◇ ◇ ◇
「なあ、この井戸も崩しちまっていいんだろ?」
「ああ、掘削して杭を打ったら、コンクリ流して基礎固めだ」
………ユルサナイ………
「? 何か聞こえた?」
「気のせいだろ。土地主が一応祠も建てるっつってたし、何かいても祟られねぇだろ」
◇ ◇ ◇
―――数年後。
「? まりな、どうしたの? あなたが行きたがってた新しいショッピングモール、ここでしょ?」
…本物の『まりな』は、きっとこの奥の祠の下にいるのよね。
新しい『井戸巫』。
…フフ、頑張って!
「…何でもない、オープンセール、楽しみー!」
………ユルサナイ、ユルサナイ、ユル………
………うん。ガチホラー、ムリ(´Д⊂ヽ
なんかモヤモヤ。ちぇ。