↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
90/90

おまけ5 眠れない夜は

些細なことに嫉妬するダリウスと、ただイチャイチャする二人を書きたかっただけの話


◇◇◇


月が煌々と光る夜、静まり返った寝室で、ダリウスは頬杖をついてベッドに横たわり、窓の外をぼんやりと見つめていた。


特務騎士団時代は、戦地で魔獣に急襲される恐れがあるため、ぐっすりと眠ることも少なかったのだ。その習慣が身についてしまったせいか、いまだに眠りは浅い方だった。


一人で眠っていた以前は、目が覚めてから過去を思い出し、苦悩する夜を送っていたのだが、いまは違う。


ダリウスは隣で眠る妻に目を向けると、ふと口元を緩めた。


気持ちよさそうに眠る彼女の寝顔を見ていれば、穏やかな気持ちになれる。こんな自分に、そんな人生が訪れようとは思ってもみないことだった。


リリスにそっと手を伸ばして、顔にかかった髪をのけてやったあと、まだ、しばらく眠れそうにないダリウスは、水を飲もうとベッドから起きあがろうとしたのだが──。


「ん……」


そう声を漏らしたリリスの目が、ゆっくりと開いた。どうやら起こしてしまったようだ。「ダリウス?」と、寝ぼけた様子の瞳と目が合った。


「悪い、起こしたか」


ダリウスの問いかけに、リリスは「いいえ」と返すと、同じようにベッドから起き上がる。大きなあくびを一つして、両手を上に伸ばす。ふと見れば、ダリウスが水を飲もうとしていたのが分かり、リリスは「私ももらっても?」と尋ねた。


ダリウスはグラスに水を注いでやり、それをリリスに手渡した。目が冴えてしまったのか、もうリリスに寝ぼけた様子はなく、「ありがとうございます」といつもの笑みが返ってくる。


ベッドへと戻ってきたダリウスは、リリスにしっかりと布団を掛け直してやる。


「まだ起きるには早い。ゆっくり寝てていいぞ」


そう言ったダリウス本人は、まだ寝るつもりがないのか、枕を背に腰掛けたままである。リリスは、くいとダリウスの服の裾を引っ張ると「眠れませんか?」と、そう尋ねた。


「……クセみたいなもんだから気にするな」


返された言葉に、リリスも体を起こしてダリウスを見つめる。


「眠れないのなら、私がお手伝いしてあげましょうか」


思いかげない提案に首を傾げたダリウスだったが、それから「こもり歌でも歌ってくれるのか」と、おかしそうに笑う。


「それで、あなたが眠れるのなら喜んで」


クスクスと笑ってそういったリリスに、「ガキじゃねぇんだぞ」と返すダリウス。


「そういえば、さっきクロードと、ルーナがどちらがお酒に強いかという対決をしている夢を見ました」

「なんだ、それは」

「現実の二人は、そんなにお酒に強いわけでもないのにね」

「どちらかというと弱い方だろ。この間も、酒に酔って泣き上戸になってたぞ」

「夢の中のクロードも泣いてましたよ。そしたら、いつの間にか子どもみたいな姿になってしまって。抱きしめてあげたら、ようやく泣きやんでくれました」


リリスの言葉に、ダリウスは「ほお」とつまらなさそうな返事を返す。


「泣き止ませるためにクロードを、抱きしめてやったと」

「ゆ、夢の中の話ですからね?」


リリスがまずかったかしら、と思ったときにはすでに時遅し。なにやら不穏な空気を感じて、「さ、さあ、もう寝ましょうか」と笑いかけたのだが──。


「そういえば、さっき俺が眠れるように手伝ってくれると言ったな」

「い、言いましたけど……」


不敵な笑みを浮かべ、何やら楽しそうな様子のダリウスに、思わず後ずさるリリス。


「何逃げてんだ」

「い、いえ、別に」


なんだか本能的に危険を感じて、などとは言えなかった。すると、次の瞬間。


「きゃあ!」


グッと手を引かれたかと思うと、視界がぐるりと反転。気づけば、目の前には天井を背にこちらを見下ろすダリウスの姿があり、リリスは自分が押し倒されているのだと理解した。


「案外、俺は心が狭い男らしい」

「あ、あの……っ」


逃さないと言わんばかりの目に、ドキリと音を立てる胸。この距離で見るダリウスの目は心臓に悪い。真っ直ぐに向けられる目に、いまだに慣れなくて、リリスは頬を染め視線をふいと逸らした。


「リリス」


だが、すぐにダリウスの手によって正面を向かされて、ニヤリと笑う意地悪そうな顔と対面した。


「よく眠れる、とっておきの方法を知ってるんだが」

「そ、それは、どのような──」


「方法ですか」と続けようとしたリリスの言葉は、ダリウスの唇によって封じられた。


「んん……っ」


噛み付くような、呼吸すら奪われそうなキス。


リリスが苦しそうにしていると、リリスの両手をダリウスがギュッと握りしめる。固く結ばれた二人の両手。ダリウスが、そっと離れると、涙目になり呼吸を乱れさせながら、頬を赤らめるリリスが自分を見つめていた。


「試してみるか」


と、意地悪く笑うダリウス。リリスは「もう」と言いながらも、ダリウスの首にそっと手を回して笑みを返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。